韓国の尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領が2024年6月3日午前、ソウル竜山(ヨンサン)大統領室庁舎ブリーフィングルームで浦項(ポハン)の迎日湾(ヨンイルマン)近海に莫大な量の石油とガスが埋蔵している可能性があるという発表をしている様子。[写真 大統領室写真記者団]
尹大統領は当時、予告なく大統領室ブリーフィングルームに降りてきて生中継を通じて「最大140億バレルの石油とガスが東海に埋蔵されている可能性が非常に高いという結果が出て、有数の研究機関と専門家の検証も経た」と話して自信をのぞかせていた。
天然ガスは最大29年、石油は最大4年以上使える量とし、具体的数値にも言及した。尹大統領の会見直後、記者団の質問を受けた安徳根(アン・ドクグン)産業通商資源部長官も「現在の価値で計算すると、最大埋蔵量はサムスン電子時価総額の5倍に達する」と雰囲気を盛り上げた。発表直後、政府高位関係者は「先にシロナガスクジラの報告を受けたが胸が震えた」とし「尹大統領に報告したところ瞳孔が開くのが感じられた」と話した。
通常、石油ボーリング事業のように失敗の可能性が高い事業を大統領が直接発表するのは稀なことだ。だが、当時尹大統領は4・10総選挙敗北以降、反転カードを切実に欲していた状況で、シロナガスクジラが支持率上昇の契機になるだろうという参謀の助言に直接発表を決心した。与党圏の核心関係者は「初期は産業通商資源部などヌルコン(職業公務員)の間では慎重論も提起された」と伝えた。
◇竜山(ヨンサン)「探査ボーリング、失敗の可能性はいつもある」
実際、資源開発当局も当初は慎重な立場だった。石油業界によると、韓国石油公社は昨年2月の時点でシロナガスクジラ・プロジェクトを巡り11兆ウォン(約1兆1480億円)ほどの価値の石油・ガスが得られるだろうと期待した。前年である2023年に物理探査を終え、その年末米国のコンサルティング会社であるアクトジオから検証を受けた後、内部的に判断していた予想値だ。当時、産業通商資源部内では「それすらも過大評価されていて、実際に11兆ウォンほど価値の石油・ガスがあるといっても掘削コストが上回る危険がある」として慎重な雰囲気が支配的だった。
しかし同年6月、尹大統領がプロジェクトを発表する時には「最小35億バレルから最大140億バレル」に増えた。140億バレルは2000兆ウォンほどに達する規模だ。当時石油業界からは「一体どのようにして2000兆ウォンという数字が算出されたのか」とし、驚く反応が聞かれた。これについて資源開発当局は「物理探査資料を総合的に精密分析した結果、予想値が大きく増えた」という立場だ。
もちろん今回の1回目の探査ボーリング失敗がシナリオになかったわけではなかった。最初に明らかにしたボーリング成功率が20%だったため、少なくとも5回はボーリングしてみようというのが政府の計画だった。だが、希望混じりの予測を性急に発表し、事業によって疑問と政治的な論争だけを大きくしたという批判が出ている。
匿名を求めた石油公社関係者は「経済性を確認する探査ボーリングの結果が出てから発表するのが合理的なのに、発表時点が時期尚早の感がある」と評価した。1回目の探査ボーリングの失敗だけで東海石油探査プロジェクト全般が座礁したのではないかという世論が形成された背景だ。
この日、産業通商資源部は「政務的な影響が多く介入」「1回目のボーリングで成功確率は宝くじより小さいが、多くの負担を抱いていた」などの説明をしたが、これは大統領室など政界の責任論を強調するものとみられる。
仁荷(インハ)大学エネルギー資源工学科のカン・チョング招へい教授は「科学とデータに基づいて、騒がず落ち着いてボーリングを進めるべきだったが、あまりにも政治的イシューになったところ状況が難しくなったとみられる。残念だ」と話した。
11兆→4カ月後2000兆ウォン…「尹大統領、東海深海ガス田の報告に瞳孔開いた」(2)
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