仁川・松島に位置したサムスンバイオロジックス生産工場。キム・ギョンロク記者
トランプ米大統領が自国内への生産設備誘致に向け医薬品にも関税を導入すると予告した。集積効果のため仁川(インチョン)の松島(ソンド)を中心に工場を増設してきた韓国のバイオ企業は悩みが大きくなった。ただ関税賦課品目が必須医薬品を中心に設定される可能性が大きいだけに慢性疾患治療剤を主に生産する韓国企業は関税の嵐を避けられるとの見通しも出ている。
◇「製薬産業、米国に取り戻したい」
トランプ米大統領はカナダ、メキシコ、中国に対する関税決定前日の先月31日にホワイトハウスの執務室で記者らと会った。彼は半導体、鉄鋼、石油などに対する部門別の関税賦課方針を明らかにし、医薬品に対しても言及した。トランプ大統領は「製薬産業を米国内に取り戻したい。産業を取り戻す方法は壁を立てること、すなわち関税障壁を作ること。製薬、医薬品などすべての形態の薬品に関税を課すだろう」と話した。
トランプ政権は以前から米国内の薬の価格が過度に高いという認識を示してきた。世界的製薬会社が他の国では価格を低く策定し米国からは不当に利潤を取っているということだ。第1次政権当時にトランプ大統領は米連邦政府調達市場で取引される必須医薬品を自国生産品だけ許容する内容の政策を推進したりもした。米国内供給網を強化し製薬製品価格を経済協力開発機構(OECD)加盟国で最低水準に下げようとする目的だった。
◇米国へ行く世界的企業
医薬品を委託開発生産(CDMO)する世界的企業は最近米国の生産拠点を拡大している。世界的CDMO1位企業のスイスのロンザは昨年4月に米カリフォルニアにあるロッシュのバイオ医薬品工場を12億ドル(約1868億円)で買収した。生産容量基準で世界最大水準と評価される工場で、ロンザは施設整備に向け5億スイスフラン(約849億円)を追加投資することにした。韓国バイオ協会はこれを「米国内での製造能力を拡大し現地受注量を確保するための戦略」と分析した。
CDMO事業を拡大している日本の富士フイルム・ダイオシンス・バイオテクノロジーズも米ノースカロライナに作っている生産設備に約12億ドルを追加投資することにした。CDMO市場6位圏であるスイスのジークフリートは昨年6月に米ウィスコンシンにあるキュリアの原料医薬品生産施設を買収した。
これに対し韓国の代表的な製薬・バイオ企業は米国工場建設に慎重な姿だ。竣工期間と建設費、人材拡充など多様な要素を考慮すると、韓国国内に生産設備を作る方が有利だと判断するためだ。
◇状況見守る松島のバイオ企業
韓国代表CDMO企業で世界4位のサムスンバイオロジックスは、4月に仁川松島第5工場の稼動を控えている。2027年の竣工を目標に第6工場の増設も検討中だ。世界初の抗体基盤バイオ後続品「レムシマ」を出し早くから米国市場に進出しているセルトリオンも松島に生産拠点を置いている。
サムスン証券のソ・グンヒ首席研究員は「米国医薬品に関税が課されても韓国企業に及ぼす影響は限定的とみる。米国内生産を誘導する品目はイブプロフェンなどの解熱剤、ヒドロコルチゾンのようなステロイド剤など必須医薬品にとどまる可能性が高いため」と話した。韓国企業が生産する医薬品は長期慢性疾患治療剤が大多数だ。
不確実性を解消するために米国工場拡充に積極的な企業もある。米シラキューズにあるブリストル・マイヤーズスクイブの工場を買収したロッテバイオロジックスはここで抗体薬品接合体(ADC)CDMO施設を増築している。チャバイオテックの子会社であるマティカバイオテクノロジーも米テキサスに細胞遺伝子治療剤(CGT)のCDMO生産設備を備えたのに続き2番目の工場を追加で作っている。
バイオ業界関係者は「変化する米国政策に対する情報収集が重要な時期のようだ。現地生産設備拡充を通じて突然の衝撃を減らすことができると期待する」と話した。
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