19日、韓国の尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領に対する拘束令状が発付されたことを受け、支持者が西部地方法院(地裁)に進入して暴力事態を起こした。支持者で構成されたデモ隊は警察に対して無差別暴力を加えた。写真は残骸の下敷きになった警察帽。イ・ヨングン記者
ところが西部地裁不法乱入を「自由運動」としながら擁護する人々がいる。イ・ハサン弁護士ら乱入被疑者の弁護人を自任した20人余りはユーチューブ(YouTube)などソーシャルメディアで「正当な国民抵抗権を行使した」と主張する。これに先立ち、サラン(愛)第一教会のチョン・グァンフン牧師が「尹大統領逮捕・拘束令状の発付は不法なので、物理力の行使は正当だ」と主張したことと同じ脈絡だ。イ弁護士は「法治は崩壊したのに、建物だけが立っていて何の用があるか」として裁判所侵入を擁護した。
抵抗権は憲法・法律に明示されてはいないが、法が機能していない時に基本権を保障する最後の手段として認められている概念だ。1997年憲法裁判所は▶国家権力によって憲法存在自体を否認する重大な権利侵害が発生して▶他の合法的救済手段では憲法守護を達成できない時--に抵抗権が認められると規定している。法曹界からは、西部地裁の暴動は抵抗権の要件が揃っていないという批判が出ている。
憲法研究官出身のノ・ヒボム弁護士は「尹大統領が拘束前被疑者審問に参加するなど正常に法的手続きが行われた」とし「裁判所に対する暴力が法治主義を傷つけた」と話した。憲法裁判官出身のある法曹人も「尹大統領の拘束が国家権力によって憲法秩序が崩れたと見るのは難しい」とし「むしろ、憲法秩序を乱したデモ隊のほうに騒擾罪を適用しなければならない」とした。
弁護人は偶発・単純加担者を手当たり次第に不法逮捕・拘束したとも主張した。だが、警察採証資料やユーチューブの動画などからは裁判所施設の破損、放火未遂などの場面が数多く確認された。撮影しかしていないと主張したユーチューバーも裁判所の扉などを破損する様子が動画に残っている。また、暴力事態3~4日前、オンラインコミュニティでは西部地裁を現地調査した後記や高位公職者犯罪捜査処車両ナンバーが共有されるなど事前謀議の情況も明らかになった。警察は裁判所進入直後に一部のデモ隊が監視カメラのサーバーに水をかけたり令状専担判事室が位置した7階にすぐに向かったりする映像も確保した。警察は拘束された被疑者の携帯電話記録などに基づいて主導者のいる計画犯罪だったのではないかと見て調べている。
さらにデモ隊は司法府や捜査機関に向かって卑俗語を使って嘲弄までしている。イ弁護士はユーチューブで「(千処長ら裁判官は)虚栄心が満ちていて、公薦を望む日和見主義者」と話した。全国裁判官代表会議で「憲法秩序の根幹を傷つけた」という立場が出てくると「戯言」という言葉も出てきた。警察を日帝強占期の「巡査」と比喩して蔑む発言も続けた。デモ隊が投げた消火器や奪われた盾で暴力を受けた警察や恐怖に震えた裁判所職員に対する謝罪はなかった。むしろ「李警察庁長官職務代行は辞退すべき」とし、他人への責任転嫁に忙しかった。
あきれるような擁護と虚偽主張が別の西部地裁暴力事態を生みかねないという懸念の声も聞かれる。暴力事態以降、オンラインコミュニティでは「あの場に一緒にいることができなくて残念だ」「殉教者に感謝する」など、事態に同調して被疑者を称賛するコメントが多数共有されている。対象が憲法機関である裁判所ではなくても、他の市民の自由を侵害する暴力を正当化する「自由運動」など、ハナから存在し得ないと彼らに伝えたい。
イ・チャンギュ記者
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