昨年4月に首都砲兵旅団のK9自走砲が江原道鉄原郡の射撃場で開かれた首都軍団合同砲弾射撃訓練で実射訓練をしている。[写真 共同取材団]
関連消息筋によると、韓国政府とベトナム政府は韓国製K9自走砲輸出契約に対する詰めの検討を進めている。消息筋は「輸出量は25台プラスアルファで議論中。30基前後のK9を導入したオーストラリアとノルウェーなど西側諸国と比べても小さくない規模」と伝えた。別の消息筋は「両国間で手続きが順調に進んでいるという前提で、来月にも契約が可能になるものと承知している」と伝えた。
ただ契約を主管している韓国防衛事業庁は「まだ決まったことはない」として慎重な立場だ。業界では輸出金額で見れば約3億ドル(約468億円)に達すると推定している。
最終成功時、ベトナムはトルコ、ポーランド、ノルウェー、ルーマニア、オーストラリアなどに続き11番目のK9購入国になる。K9を欧州など西側ではなく東南アジア地域に輸出するのは今回が初めてだ。韓国はこれまで主にマレーシア、インドネシア、フィリピン、タイなどと防衛産業協力を推進してきた。
◇韓国とベトナム、過去の敵国から防衛産業協力国で
何より1970年代にベトナム戦争で米国の同盟国として参戦した韓国が銃口で狙った当事国であるベトナムと武器システム協力を目前にしているのは意味が格別だとの評価が出ている。防衛産業輸出は国同士の深い信頼関係を土台にするだけでなく、今後の戦略的協力関係を強化するのにも役立つためだ。
また、ベトナムがK9を購入することになれば北大西洋条約機構(NATO)標準である口径155ミリの武器システムを導入することになる。K9は米陸軍の射程距離延長誘導砲弾であるエクスカリバー155ミリ砲弾も互換する。
これと関連し、第2次トランプ政権時代を迎えベトナムの韓国製武器採択が米中間で競争が激化する東アジアの地政学構図に変数として作用するかもカギだ。米国はこの数年間、中国牽制に向け過去の敵国だったベトナムとの協力関係を強化している。
実際にK9導入はベトナムの対中牽制ないしは脱中国の信号弾とみる余地もある。ベトナムは中国と政治・文化・経済的に近いながらも軍事的には緊張関係だ。国境紛争である1979年の中越戦争をはじめ、1988年と2014年にも南シナ海をめぐる紛争が起きており、最近ベトナム国内では反中感情が大きくなる雰囲気もみられる。
ベトナム陸軍の砲兵強化は対中牽制戦略と直結するという見方もある。ベトナムは北東部で中国と、西部でカンボジアやラオスと国境を接している。ベトナムとしては中国との直接的な紛争の可能性を念頭に置くだけでなく、カンボジアとラオスへの中国の影響力拡大を牽制しなければならないという見方があるという。
韓国対外経済研究院(KEIP)は昨年5月の情勢分析で「最近ベトナムの防衛戦略上、国境で陸軍の能力強化の必要性が提起されている。ベトナム当局は新たな主力戦車と改善された砲兵システムなど陸軍の戦闘能力を向上するという目標がある」と指摘した。これに伴い、ベトナムが陸軍近代化の課題に向けたパートナーとして韓国を選んだ形だ。
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