トランプ次期米大統領
トランプ氏が核兵器保有を前提に北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長と対話を再開する場合、交渉は「核凍結」の対価として対北朝鮮制裁を緩和する形になる可能性がある。韓国の立場では核兵器を持つ北朝鮮が韓国を「スルー」して米国と「直接取引」する状況を目撃する可能性もある。
◆国防長官候補「北は核保有国」…国務長官候補「対北朝鮮政策を見直すべき」
論争は14日(現地時間)、ヘグセス国防長官候補が北朝鮮を「核保有国(nuclear power)」と表現したことで拡大した。ヘグセス氏が使用した用語は国際社会が認める5つの核保有国(米・中・ロ・英・仏)を意味する「核兵器国(nuclear weapon state)」とは異なるが、イスラエル・インド・パキスタンのように核兵器を実質的に保有すると認められている国をいう。
15日にはマルコ・ルビオ国務長官候補が加わった。ルビオ氏は「完全で検証可能かつ不可逆的な非核化(CVID)は幻想」という民主党議員の発言に関連し、「今後の米国の立場とは言いがたい」としながらも「さらに広範囲に対北朝鮮政策を真摯に考慮するべきという(全般的な)関心(appetite)がある」と答えた。
ルビオ氏は新しい対北朝鮮政策の方向に関しては「韓国と北朝鮮、日本、そして最終的に米国に対する偶発的戦争リスクを低めるために何をするかを見なければいけない」とし「各自の核兵器を追求するよう刺激せず、危機を防ぐ解決策を見いだすべき」と述べた。対北朝鮮戦略の目標が非核化でなく米国本土に対する核の脅威をなくすことに設定される可能性があるという意味と解釈される。
◆「対北朝鮮戦略の転換という判断は時期尚早」
保守性向のシンクタンク「ヘリテージ財団」のブルース・クリンガー上級研究員は16日、中央日報のインタビューで「ヘグセス氏が使った用語は核保有国をいう言葉だが、まだ米国の対北朝鮮政策の方向が公式に変化すると解釈するのは時期尚早だ」と述べた。
クリンガー氏は「北朝鮮や台湾など敏感なテーマに関する発言は専門用語に慣れていない人たちには難しいだろう」とし「ヘグセス氏は外交的に北朝鮮の核を認めずに、北朝鮮が事実上核兵器を保有しているという点を技術的に表現するべきだった」と話した。元米陸軍少佐で放送の司会者を務めたヘグセス氏の非専門性のために発生した失言の可能性があるという指摘だ。
ただ、クリンガー氏は「トランプ政権が、米国の法律にもある政策的目標であり国連安保理決議案に基づく非核化を放棄する場合、同盟国との関係はもちろん非核化に対する政策的信頼度に深刻な影響を与えるはず」とし「特に独自の核保有を望むインド太平洋国家に対する暗黙的な核保有容認信号になりかねない」と懸念した。
◆「核保有と核保有国認定は別問題」
韓米連合軍司令部作戦参謀を務めたデビッド・マクスウェル・アジア太平洋戦略センター副代表は「北朝鮮が核兵器を保有していても、北朝鮮を核保有国と認めるのは別の問題」と述べた。続いて「ヘグセス氏が公聴会の準備前に韓国問題に関する実質的なブリーフィングを受けたのかどうか疑問だ」とし「(ヘグセス氏のほか)外交と北朝鮮を知るルビオ国務長官、マイク・ウォルツ国家安全保障補佐官、アレックス・ウォン国家安全保障副補佐官らは北朝鮮にいかなる融和策も許容しないと確信したい」と話した。
しかしヘグセス氏が北朝鮮を核保有国と表現したのは質疑応答の過程ではなく、参謀らと検討を経て事前に作成した書面答弁書に登場する。このためにヘグセス氏の発言を単純な専門性不足のためと評価できないという懸念の声が続いている。
◆韓国国情院「トランプ氏、スモールディル推進の可能性」
実際、韓国の国家情報院(国情院)は13日の国会情報委員会で「トランプ氏が金正恩委員長と対話を再開する可能性がある」とし「核凍結と軍縮交渉など『スモールディール』が推進されることも考えられる」と報告した。再選が不可能なトランプ氏が短期間内に非核化を達成するのは難しいと判断する場合、核保有を前提にした交渉を進める可能性があるということだ。
これに先立ち共和党はもちろん民主党も大統領選挙期間に公開した政策綱領で、韓半島政策の目標から「非核化」という表現を削除した。北朝鮮もトランプ氏の就任に先立ち南北を「敵対的な二つの国家」と規定し、米国と直接取引をするという「通米封南」戦略を露骨に表した状態だ。
ヘグセス氏の発言に関連し、バイデン政権のジョン・カービー戦略広報調整官は「我々はこれを(北朝鮮の核保有国地位を)認定(recognition)するところまで行っていない」としながらも「次期安保チームがこれをどう規定するかについては話せない」と述べた。
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