トランプ次期米大統領が国防長官に指名したピート・ヘグセス氏が北朝鮮を「核保有国」と呼んだ。アジアの核心同盟国である韓国と日本については東南アジア諸国連合（ＡＳＥＡＮ）のメンバーだと話した。

トランプ氏が性的暴行と過度な飲酒疑惑、女性差別発言にもかかわらず、陸軍少佐出身の４０代の忠誠派放送アンカーに世界最強の米軍を任せて起きた「アマチュア国防長官」任命にともなう懸念が現実化しかねないとの観測が出ている。

ヘグセス氏は１４日に米上院軍事委員会で開かれた公聴会で、「北朝鮮の核保有国（ｎｕｃｌｅａｒ　ｐｏｗｅｒ）地位、核弾頭を運搬できるミサイル射程距離延長に対する集中、増加するサイバー能力は韓半島（朝鮮半島）とインド太平洋地域、さらには全世界の安定に脅威を与える」と話した。


彼が使った表現は核兵器保有が公認された５カ国（米中ロ英仏）を意味する「核兵器国（ｎｕｃｌｅａｒ　ｗｅａｐｏｎ　ｓｔａｔｅ）」と違い、インド、パキスタン、イスラエルなど公認されていないが実質的に核兵器を確保した国を示す際に使う用語だ。もしヘグセス氏がこれを知っていて使ったとすれば、第２次トランプ政権が北朝鮮の金正恩（キム・ジョンウン）国務委員長が要求してきた「核保有国認定」を受け入れるという意味となる。これを前提に北朝鮮との対話が再開される場合、対話目標は非核化から核凍結または縮小に変更される可能性がある。

ヘグセス氏は核軍縮会談の可能性まで示唆した。彼は「トランプ氏より立派な軍の総司令官はいない。私の唯一で特別な関心事は戦争を防止すること」と述べた。その上で、太平洋で戦略的に最も重要な地域は米軍が集中配備された「（米領）グアム」と答えた。北朝鮮の非核化より米国本土攻撃の可能性を遮断することに目標を置いているという意味と解釈される。

彼の突発発言が出るたびに公聴会場に詰めかけたトランプ氏の支持者は「ＵＳＡ」を連呼した。

韓国外交部は当惑する様相だ。公聴会直後に韓国外交部は「北朝鮮の非核化は韓米と国際社会が一貫して堅持してきた原則で、北朝鮮は絶対に核保有国の地位を持つことはできない」という公式立場を出した。しかしトランプ氏が北朝鮮と直接取引をする場合、韓国が窮地に陥る可能性が大きい。金委員長はすでにトランプ政権発足に備え南北対話断絶を宣言した。トランプ氏と直接談判するという意図だ。

６日後に退任するカービー大統領補佐官はこの日の会見で「非核化に対する政策は変わっていない」としながらも「（朝米対話は）トランプ氏にかかっている問題」として苦しい状況を吐露した。

これに対しヘグセス氏は、韓国に対しては軍事的・外交的な背景知識の不足をみせた。彼は「ＡＳＥＡＮで重要な国をひとつ挙げてほしい」という質問に、「韓国と日本、オーストラリアが潜水艦関連作業をしていると承知している」と答えた。彼が言及した３カ国は東南アジア１０カ国で構成されたＡＳＥＡＮの加盟国ではない。ヘグセス氏は続けて「同盟の国防費支出増大と負担共有は重要で、（同盟）関係は一方的ではない。米国が一方的（に恩恵を提供するもの）でない点を強調し続けるだろう」と話した。

ヘグセス氏はその一方で、「インド太平洋で同盟国と協力し『共産中国』を抑止する」とし、韓国などアジアの同盟国の対中牽制の役割を拡大する意向を表わした。その上で「トランプ氏は『船舶建造が絶対的な最高優先順位になるだろう』と明確に話しており、海外企業を奨励することになるだろう」と強調した。実際にトランプ氏は尹錫悦（ユン・ソクヨル）大統領との電話会談で造船業協力をまず要請した。ただ、造船協力が在韓米軍と韓国の対中牽制の役割を拡大する目的で活用される場合、地上軍中心である在韓米軍の規模と性格自体が変わる恐れがある。

ヘグセス氏はトランプ氏に対しては絶対的忠誠を強調した。さらに同盟であるデンマーク領グリーンランドやカナダに対する武力投入命令に従うのかに対しても「トランプ氏の命令は７７００万票を得た合法的なものである点を強調したい」とした。

民主党はヘグセス氏を引きずり下ろそうと試みてきたが、トランプ氏が共和党議員を圧迫してこれを遮断したという。トランプ氏は公聴会を控え「共和党員は強くなれ」というメッセージを出し、親トランプ団体は反対する可能性がある自党議員に３万件を超える電話やショートメッセージで攻勢をかけた。結局ヘグセス氏を批判してきたジョニ・アーンスト上院議員は公聴会直後に「賛成票を投じる」として屈服した。

上院議員１００議席のうち共和党は５３議席を確保している。公聴会を終えたヘグセス氏は明るく笑って家族や支持者らと抱擁した。その後、拳を握ってみせると何も言わずに公聴会場から去った。