ドナルド・トランプ次期米大統領
彼らだけではない。ウクライナ戦争に大規模派兵を敢行し国際秩序を揺るがす北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長の重量感も変わった。インドのモディ首相、トルコのエルドアン大統領、ハンガリーのオルバン首相、イスラエルのネタニヤフ首相など、「リトルストロングマン」と呼ばれる鉄拳統治者も世界各地で影響力を拡大している。ほとんどが長期執権を経てさらに老練になり堅固になったという評価がともなう。
◇ストロングマンが浮上、西側は不安定に
嵐の前夜、船長を失った大韓民国号はどのようにこの高波を乗り越えるだろうか。悪材料は重なった。権威主義が勢力を伸ばす間に、民主主義を率いた西側のリーダーシップが全般的に不安定になったためだ。
主要7カ国(G7)で警告音が鳴る。欧州連合(EU)を率いるフランスとドイツは並んで政権不信任事態に直面しており、英国とカナダの政権もやはりいつ交代させられてもおかしくないほど人気がない。日本でも石破茂首相の短命説が根強く出ている。バイデン米政権時代に単一隊列でひとつになった「価値」に基づいた民主陣営がいまはこれといった拠り所がないという意味だ。
◇ストロングマン同士の力学関係もさらに複雑に
「新ストロングマン時代」はだれが主導するだろうか。まず第1次トランプ政権の時とは国際情勢が大きく異なる。欧州と中東で2つの戦争が進行中で、核を握る北朝鮮が史上初めて国際戦に飛び込んだ。絡まり合ったストロングマンの間の力学関係がさらに複雑になった格好だ。
こうした状況でトランプ氏は第1次政権当時のように「関税爆弾」と「防衛費分担金引き上げ」という刀を両手に握り民主と権威の両陣営を同時に攻略している。特に戦略競争中である「中国叩き」に力を入れている。
ところが習近平主席が内心こうしたトランプ氏の「米国優先主義」を機会と感じているという診断も出ている。韓国外国語大学のカン・ジュンヨン国際地域研究センター長は「中国は最近になりトランプ氏の再登場に不安がる米国の同盟と友邦にビザ免除や禁輸措置解除など融和的なジェスチャーを取っている。トランプの対中圧力を抜け出すために米国とこれらの国の隙間を狙う戦略」と話した。
トランプ氏とプーチン氏の「ブロマンス」もウクライナ戦争終戦という共同の目標がなくなれば即座に冷めるかもしれない。トランプ氏が「米国を再び偉大に」するための動力として掲げるシェールオイル・ガス輸出を増やす過程でロシアとのエネルギー覇権争いが激しくなり得るためだ。ソウル市立大学エネルギー安保戦略センター長のアン・セヒョン氏は「トランプ氏は第1次政権当時に米国産液化天然ガス(LNG)を欧州に輸出するためロシアの欧州向けガスパイプライン「ノルドストリーム2」の稼動を強く牽制した。ウクライナ戦争が終われば再びロシアがガス価格を引き下げて世界市場を攻略するとみられるが、トランプ氏はこれを座視しないだろう」と予想した。
トランプ氏、8年前そのままにまた「ストロングマン時代」…ここに北朝鮮が飛び込んだ(2)
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