米国内で１億７０００万人のユーザーを抱えているティックトック（ＴｉｋＴｏｋ）の米国市場退出の可能性が徐々に高まっている。米連邦最高裁は１０日（現地時間）、米国内のティックトック使用を禁止するいわゆる「ティックトック禁止法」に対する口頭弁論でティックトック側の主張に懐疑的な反応を示しながらだ。

この日の弁論でティックトックの米国利用者側弁護士のジェフリー・フィッシャー氏は今月１９日から施行予定のティックトック禁止法（敵対国の統制を受けるアプリケーションから米国人を保護する法律）で、利用者が自分の選択したプラットフォームを通じてコンテンツを配布して受け取って見る憲法（修正憲法第１条）上の権利が侵害される場合があると主張した。中国に本社を置くティックトックの親会社のバイトダンス（ＢｙｔｅＤａｎｃｅ）が米国ティックトックユーザーのデータを乱用可能性があるという懸念に対しても積極的に反論した。ティックトック側の弁護士ノウル・フランシスコ氏は「ティックトックアプリの米国法人は中国バイトダンスからある程度自立権を確保している」と主張した。


だが、最高裁判事はティックトック側の主張に強い疑いの目を向けた。ジョン・ロバーツ最高裁長官はティックトック側に「（ティックトックの）最終親会社が実際に中国政府のために情報収集作業をしなければならないという事実を無視するべきか」と反問した。ブレット・カバノー判事は「ティックトックがユーザーに対する書類を作っている可能性があり、今はユーザーの多数が１０代であっても、彼らが今後数十年内に米国社会で重要な地位を占めていく」と懸念した。判事たちは「ティックトックの背後に中国があるという事実はもうすべての人々が知っている」と強調するなど、ティックトック側が主張する表現の自由よりも「国家安全保障」に重きを置いた発言を繰り返した。


昨年４月、米国上院を通過したティックトック禁止法は「ティックトックが米国で今後も運営を続けるためには１９日までに親会社バイトダンスがティックトックを売却しなければならない」という内容を骨子としている。売却しない場合、ティックトックは米国内グーグル・アップルなど各種アップストアから消される。これに先立ち、米国内では中国政府がバイトダンスを通じて米国ティックトックのユーザー１億７０００万人余りの個人情報にアクセスして、これを悪用して米国に対するスパイおよび監視作戦を展開することができるという懸念が繰り返し提起されてきた。ティックトック禁止法通過以降、ティックトック側は直ちに米国連邦裁判所に反対訴訟を提起したが、１審と２審で続けて敗訴して現在は最高裁の判決を残すのみとなった。

変数はドナルド・トランプ次期大統領の歩みだ。トランプ氏は大統領選挙期間からティックトックを救うと主張していた。自身と対立関係にあるフェイスブックの代案がティックトックだという判断からだ。昨年９月には自身のＸ（旧ツイッター）アカウントに「米国でティックトックを救おうと思うすべての人のために、トランプに投票を！」と記したこともある。

実際、トランプ氏は先月２７日、最高裁にティックトック禁止法の発効を本人の就任（２０日）以降に延期するか処分を出すよう要請した。事件で争点となる問題を政治的手段として解決しようという腹積もりだった。だが、現在鍵を握っているのは最高裁で、最高裁がこの要請を受け入れるかどうかは未知数だ。ニューヨークタイムズ（ＮＹＴ）は「裁判所がトランプ氏を待つ可能性は低そうだ」と評価した。民主党所属のマーク・ワーナー上院議員はワシントン・ポスト（ＷＰ）に「トランプ次期大統領に対する確実なことは、彼が何をするか全く検討がつかないということ」と話した。