トランプ次期米大統領が振る関税ムチの恐怖が世界を脅かしている。カナダのトルドー首相は感謝祭連休を過ごしているトランプ氏のフロリダ州マー・ア・ラゴの自宅を訪問した。メキシコのシェインバウム大統領はトランプ氏に送ろうとする手紙をテレビ中継で公開した。トランプ氏が就任初日の来年1月20日にメキシコとカナダには関税25%、中国には自身が公約した追加関税に10%の関税をさらに課す内容の行政命令に署名するという予告が起こした波紋だ。
関税の理由が「貿易収支」と「雇用」でないという点が目を引く。トランプ氏はメキシコとカナダの国境から流入する移民者が犯罪と麻薬問題を起こすと主張し、メキシコ政府とカナダ政府にこの問題を解決するまでは関税のムチを打つと脅した。
トルドー首相はトランプ氏が関税爆弾を予告したその日にトランプ氏と電話をし、数日後にフロリダ行き飛行機に乗った。世界が知る犬猿の仲であるトランプ氏に自身の政治生命のためにトルドー首相は腰を低める不名誉を覚悟した。「それほど関税が恐ろしければ米国の51番目の州になればよい」というぞっとする冗談までも聞かなければならなかった。12月初め、メキシコ政府は不法に米国国境を越えようとしていた移民者5000人を逮捕し、過去最大規模の合成麻薬フェンタニル取り締まり事実を公開した。トランプ氏の「関税爆弾脅迫」からちょうど1週間後だ。
関税爆弾脅迫だけでもトランプ氏は自身の核心公約だった不法移民問題を解決している。「トランプ政権2期目」の世の中の予告編だ。カナダとメキシコは米国と国境が接する隣国であり最大の貿易相手国だ。1990年代初期の「米国-カナダ-メキシコ自由貿易協定(NAFTA)」締結で共同経済圏が誕生した。米国の自動車企業はメキシコとカナダにサプライチェーンを拡張した。自由貿易協定(FTA)の恩恵を狙って世界最大の米国消費者市場を狙った外国企業の投資が、賃金が安いメキシコに集まった。
トランプ氏1期目にNAFTAが米国の製造業の雇用を奪っていくというトランプ氏の圧力で、米国に有利な「米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)」に生まれ変わった。従来の協定が気に入らないとして自身が再交渉して締結した国家間協定も、トランプ氏は必要ならばいくらでも無視する態勢だ。25%関税がUSMCA違反という反論に対し、彼に忠誠を尽くす官僚たちはいかなる名分も作り出す厚かましさを持っている。
◆関税、トランプ氏の対外政策の核心手段
トランプ氏の帰還は「関税マン(Tariff Man)」の帰還だ。彼が選挙遊説で掲げた10-20%普遍的基本関税、中国を狙った60%関税に対し、人々は「交渉用」「本気」などとそれぞれの解釈を出している。世間のこうした論争や騒ぎをトランプ氏は楽しむ。彼はこうした状況を自身が望むものを勝ち取るのに活用する。トランプ氏は最後まで相手が自身のゲームに巻き込まれてきたという印象を世間に残すことを望む。4年ぶりにホワイトハウスに帰還するトランプ氏の最初の関税爆弾がメキシコとカナダへ向かうことを予想した人はどれほどいるだろうか。移民と麻薬を口実にすることを予想できただろうか。
米国のドル覇権維持のためにもトランプ氏は関税爆弾を発射する準備ができている。最近、彼は中国・インド・ブラジルなど非西欧巨大経済国連合体BRICSを狙って関税賦課を警告した。「新しいブリックス通貨を作ったり米ドルに代わる他の通貨を支持したりしないと約束しなければ100%関税に直面することになるだろう」という脅迫もためらわなかった。
トランプ氏はどこに跳ねるか分からないラグビーボールのようだ。トランプ氏自身が不確実性だ。一つ明白なのは、関税が「米国優先主義」(America First)を追求するトランプ氏の対外政策の核心手段という点だ。バイデン政権の補助金を掲げた米国投資誘引政策をトランプ氏は激しく非難した。遊説では終始、関税のムチで関税収入は増大するはずで、関税ムチを恐れれば外国企業は米国に投資して雇用が増えると公言した。11月末にソウルで開かれたセミナーで、米国側の出席者は「関税障壁で要塞化する米国に投資することが韓国が生きる道」とトランプ氏に同調した。いま「無条件投資」という時代が開かれるということなのか。
次期大統領に身分が変わった後の最初の関税関連の言及で、トランプ氏は関税を移民と麻薬問題の解決手段にした。これほどなら「関税は英語辞典で最も美しい単語」という彼の関税礼賛論はホラでもない。財務長官に指名されたベッセント氏も関税を交渉武器として活用し、米国に不利に傾いたグラウンドを平坦にし、中国による安保脅威に対応できるという主張をしている。米通商代表部(USTR)代表に指名されたグリア氏も関税ムチの信奉者だ。
【コラム】分裂の政治では「トランプストーム」防げない=韓国(2)
関税の理由が「貿易収支」と「雇用」でないという点が目を引く。トランプ氏はメキシコとカナダの国境から流入する移民者が犯罪と麻薬問題を起こすと主張し、メキシコ政府とカナダ政府にこの問題を解決するまでは関税のムチを打つと脅した。
トルドー首相はトランプ氏が関税爆弾を予告したその日にトランプ氏と電話をし、数日後にフロリダ行き飛行機に乗った。世界が知る犬猿の仲であるトランプ氏に自身の政治生命のためにトルドー首相は腰を低める不名誉を覚悟した。「それほど関税が恐ろしければ米国の51番目の州になればよい」というぞっとする冗談までも聞かなければならなかった。12月初め、メキシコ政府は不法に米国国境を越えようとしていた移民者5000人を逮捕し、過去最大規模の合成麻薬フェンタニル取り締まり事実を公開した。トランプ氏の「関税爆弾脅迫」からちょうど1週間後だ。
関税爆弾脅迫だけでもトランプ氏は自身の核心公約だった不法移民問題を解決している。「トランプ政権2期目」の世の中の予告編だ。カナダとメキシコは米国と国境が接する隣国であり最大の貿易相手国だ。1990年代初期の「米国-カナダ-メキシコ自由貿易協定(NAFTA)」締結で共同経済圏が誕生した。米国の自動車企業はメキシコとカナダにサプライチェーンを拡張した。自由貿易協定(FTA)の恩恵を狙って世界最大の米国消費者市場を狙った外国企業の投資が、賃金が安いメキシコに集まった。
トランプ氏1期目にNAFTAが米国の製造業の雇用を奪っていくというトランプ氏の圧力で、米国に有利な「米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)」に生まれ変わった。従来の協定が気に入らないとして自身が再交渉して締結した国家間協定も、トランプ氏は必要ならばいくらでも無視する態勢だ。25%関税がUSMCA違反という反論に対し、彼に忠誠を尽くす官僚たちはいかなる名分も作り出す厚かましさを持っている。
◆関税、トランプ氏の対外政策の核心手段
トランプ氏の帰還は「関税マン(Tariff Man)」の帰還だ。彼が選挙遊説で掲げた10-20%普遍的基本関税、中国を狙った60%関税に対し、人々は「交渉用」「本気」などとそれぞれの解釈を出している。世間のこうした論争や騒ぎをトランプ氏は楽しむ。彼はこうした状況を自身が望むものを勝ち取るのに活用する。トランプ氏は最後まで相手が自身のゲームに巻き込まれてきたという印象を世間に残すことを望む。4年ぶりにホワイトハウスに帰還するトランプ氏の最初の関税爆弾がメキシコとカナダへ向かうことを予想した人はどれほどいるだろうか。移民と麻薬を口実にすることを予想できただろうか。
米国のドル覇権維持のためにもトランプ氏は関税爆弾を発射する準備ができている。最近、彼は中国・インド・ブラジルなど非西欧巨大経済国連合体BRICSを狙って関税賦課を警告した。「新しいブリックス通貨を作ったり米ドルに代わる他の通貨を支持したりしないと約束しなければ100%関税に直面することになるだろう」という脅迫もためらわなかった。
トランプ氏はどこに跳ねるか分からないラグビーボールのようだ。トランプ氏自身が不確実性だ。一つ明白なのは、関税が「米国優先主義」(America First)を追求するトランプ氏の対外政策の核心手段という点だ。バイデン政権の補助金を掲げた米国投資誘引政策をトランプ氏は激しく非難した。遊説では終始、関税のムチで関税収入は増大するはずで、関税ムチを恐れれば外国企業は米国に投資して雇用が増えると公言した。11月末にソウルで開かれたセミナーで、米国側の出席者は「関税障壁で要塞化する米国に投資することが韓国が生きる道」とトランプ氏に同調した。いま「無条件投資」という時代が開かれるということなのか。
次期大統領に身分が変わった後の最初の関税関連の言及で、トランプ氏は関税を移民と麻薬問題の解決手段にした。これほどなら「関税は英語辞典で最も美しい単語」という彼の関税礼賛論はホラでもない。財務長官に指名されたベッセント氏も関税を交渉武器として活用し、米国に不利に傾いたグラウンドを平坦にし、中国による安保脅威に対応できるという主張をしている。米通商代表部(USTR)代表に指名されたグリア氏も関税ムチの信奉者だ。
【コラム】分裂の政治では「トランプストーム」防げない=韓国(2)
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