韓国与党・国民の力の「弾劾防御ライン」が事実上崩れた。金宰燮（キム・ジェソプ）議員が１１日、尹錫悦（ユン・ソクヨル）大統領の弾劾に対して「賛成」を決心し、議員２４人は弾劾訴追案の表決に参加する意向を表した。

これまで弾劾の代わりに「秩序ある退陣」を主張してきた韓東勲（ハン・ドンフン）国民の力代表の重大決心が迫っているという見方も出ている。韓代表は周囲に「１４日の２次弾劾案の表決の際、わが党の議員が本会議場に出席して表決しなければいけない」と話し、弾劾案が可決される状況に対応するという考えも明らかにしたという。与党関係者は「韓代表が弾劾案通過の可能性を排除せず周囲の意見を聞いて悩んでいる」と伝えた。

この日、与党の「弾劾時計」は急激に変わった。金宰燮議員は国会で記者会見を開き、「尹大統領を弾劾しようと思う」とし「大統領の善意にかける下野の主張はこれ以上有効でなく、最も秩序ある退陣は弾劾」と話した。続いて「党論で弾劾に賛成することを求める」と党に要請した。１回目の弾劾案否決の際、党論に従って表決に参加せず弾劾反対に賛同した金議員が賛成に旋回し、公開的に弾劾に賛成する与党議員は５人（趙慶泰、安哲秀、金相旭、金睿智、金宰燮）に増えた。これで弾劾案可決まで３票だけが残った。


残りの３票が埋まるのも時間の問題というのが与党の雰囲気だ。中央日報がこの日、非常戒厳常設特検案の表決に賛成または棄権した与党議員３６人を中心に「２次弾劾案では表決に参加するのか」と尋ねたところ、高東真（コ・ドンジン）議員、権泳臻（クォン・ヨンジン）議員、金相旭（キム・サンウク）議員、金素熙（キム・ソヒ）議員、金睿智（キム・イェジ）議員、金宰燮議員、金台鎬（キム・テホ）議員、朴庭勲（パク・ジョンフン）議員、裵賢鎮（ペ・ヒョンジン）議員、安哲秀（アン・チョルス）議員、禹在埈（ウ・ジェジュン）議員、鄭聖国（チョン・ソングク）議員、趙慶泰（チョ・ギョンテ）議員、秦鍾午（チン・ジョンオ）議員と匿名を求めた５人の計１９人が参加の意思を明らかにした。匿名を求めた議員５人は「参加を前向きに考える」と答えた。最初の表決では３人（安哲秀、金相旭、金睿智）だった表決参加与党議員が２４人前後に増えたのだ。

このうち７人（賛成５人、高東真、朴庭勲は反対）を除いて大半は賛成・反対を公開しなかった。しかし党内外で尹大統領非難世論が強まっていることを考慮すると、少なくない議員が賛成票を投じるとみられる。与党関係者は「記名投票の常設特検案表決の際にも与党議員２２人が賛成票を投じたが、無記名投票の弾劾案表決の場合、賛成票がそれより少ないとは考えにくい」とし「弾劾カウントダウンはすでに始まった」と話した。

このように急変した気流は韓代表にも影響を与えたとみられる。韓代表は周囲に「戒厳事態関連の暴露や捜査の速度などすべてのことが急激に変わっている。これに対応する」とし、事実上の弾劾可決を念頭に置いた発言をしたという。党関係者によると、韓代表は「いま捜査機関と国会が事態関連者をみんな呼んでいる」とし「国民が感じる深刻性も高まっているが、これを見ながら対応を熟考する」という考えも伝えた。ただ、親韓派の内部ではもう少し見守った後に最終決定を下すべきという意見も少なくない。

最初の弾劾案否決から４日間で国民の力が弾劾に傾いたのは、戒厳事態をめぐる緊迫した政局も作用したという評価だ。内乱の主導者とされる金竜顕（キム・ヨンヒョン）前国防部長官が１０日夜に拘束され、１１日未明に警察国家捜査本部が趙志浩（チョ・ジホ）警察庁長と金峰植（キム・ボンシク）ソウル警察庁長を同時に緊急逮捕すると、与党議員の間では「捜査の矛先が近く尹大統領に向かう」という反応が急速に広まったという。親尹派でも弾劾を防ぐのは現実的に難しいという声が出ている。ある親尹派の重鎮議員は「私が見たところ国会国防委員会などで提起される暴露の程度が深刻だった。もう弾劾世論に対して持ちこたえるのは容易でないだろう」と述べた。

尹大統領も下野より弾劾案可決に重点を置いて対応を摸索していることが分かった。金鍾赫（キム・ジョンヒョク）国民の力最高委員は「洪哲鎬（ホン・チョルホ）政務首席秘書官に尋ねたところ『弾劾に進むこと以外に方法があるだろうか』と答えた」と伝えた。