作家と直接会ったのは連載をすべて終えた後だった。数カ月間メールをやりとりし通話をしたからか久しぶりに会った人のようだった。写真の中の浅い微笑の明るい顔だろうと漠然と考えたが、作品に全てを吐き出したかのようにやせて疲れた体と心が明確に見え胸が痛んだ。『幼い鳥』一羽が抜け出たようなしかばねたちの言葉のない魂を慰めるためにろうそくを灯す小説の中の16歳の少年が重なって見えた。上下に黒い服を着た姿が依然として小説の中の人物を哀悼するように感じられたりもした。
「渾身の力を出す」という慣用句を目で直接見るならば多分当時の作家の姿だっただろう。だが落ち着いた声は少しほっとしたようにも聞こえたりもした。どれだけ苦しく至難な自身との戦いだったか。ましてそのことが5・18当時に息を殺しながら苦痛を受けた人たちの隠された話をひとつひとつどうにか広げてみせ彼らの痛みに触れ、その時代を証言する宿命のような使命を尽くす作業だったから。作家と別れてあいさつを交わし遠ざかる姿を見守った。多分2人きりで会ったなら一度抱きしめていただろうと後で考えた。ぎゅっと抱きしめればつぶれそうな弱い状態でおそらく軽く背中をなでてあげただろう。
傍らで見たノーベル賞小説家・韓江…句点ひとつも軽々しく打たなかった(1)
「渾身の力を出す」という慣用句を目で直接見るならば多分当時の作家の姿だっただろう。だが落ち着いた声は少しほっとしたようにも聞こえたりもした。どれだけ苦しく至難な自身との戦いだったか。ましてそのことが5・18当時に息を殺しながら苦痛を受けた人たちの隠された話をひとつひとつどうにか広げてみせ彼らの痛みに触れ、その時代を証言する宿命のような使命を尽くす作業だったから。作家と別れてあいさつを交わし遠ざかる姿を見守った。多分2人きりで会ったなら一度抱きしめていただろうと後で考えた。ぎゅっと抱きしめればつぶれそうな弱い状態でおそらく軽く背中をなでてあげただろう。
傍らで見たノーベル賞小説家・韓江…句点ひとつも軽々しく打たなかった(1)
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