尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領の支持率急落を見ながら、皮肉にも政権発足当時の雄壮な場面が思い浮かんだ。2年半前に青瓦台(チョンワデ、旧大統領府)を出た瞬間がその一つだ。「帝王的大統領制を下ろす方式があまりにも帝王的ではないのか」という指摘にも尹大統領は断固としていた。「政府を担当する人の自己哲学と決断も重要だ」とし、大統領室竜山(ヨンサン)移転を強行した。「国家最高意思決定者が働く姿を国民が見ることができ、露出しているということ自体が、わが国の民主主義の発展をはるかに早める」という抱負は頼もしかった。
尹大統領は国民との「精神的交感」を民主主義の重要な要素と考えた。かなり前のことだが、記者らとの出勤前の問答「ドアステッピング」も似た趣旨だった。不快な質問も国民の前で受けて、すべての責任を自ら負うという大統領の初心は鮮明だった。帝王でなく公僕への換骨奪胎、大統領の視線は国民の目に合わされた。
任期の折返し点に立った今、鋭い最初の決断の追憶は消えた。巨大な青写真はこじれるだけこじれた。仕事をする姿を見せたものの公僕の動きが感じられない。国民が見たい姿ではなく、権力が見せたいものばかりが露出する。「疎通の意志」と書いても「不通の意地」と読まれる。就任時の抱負はそのまま「竜山の矛盾」となった。その結果が今向き合っている20%台の支持率なのだろう。
矛盾の真ん中には大統領夫人がいる。2年余りの間、金建希(キム・ゴンヒ)夫人は政府の「Xマン」(ゲームなどでこっそりとチームをつぶす妨害者)だったといっても過言でない。疑わしかった状況は雪だるまのように膨らみ、あやしかった過去の記憶と奇妙につながる。過度な疑心だと話していた支持者も首をかしげる。尹大統領が望んだ国民的な交感は公憤として現出している。
改革の出発点である竜山は疑惑の震源地になった。竜山庁舎のリフォーム事業は最近の監査院の監査で違法が確認された。手続きを無視した請負、不明確な契約、国庫の損失などが表れた。疑わしい会社の中には、よりによって金氏が運営したコバナコンテンツの展示会を協賛したところがある。その会社が協賛した2015年の「マーク・ロスコ展」の場合、金氏がいくつかの賞まで受け、ポータルサイト人物情報の受賞履歴として残っている。
少しだけ関心を持てば疑いの尾は簡単に切れない。同じ展示会の協賛社の中には問題のドイツモータースの名前もある。10余年前に金氏と金氏の母が20億ウォン台の投資利益を得て、その時期に株価操作があった会社だ。金氏の関与が正常な投資なのか、共犯またはほう助犯なのかに対する検察の捜査はまだ進行中だ。他の容疑者が2審有罪判決を受けるまで検察は結論を出していない。
株価操作のメンバーの一人は昨年の殉職海兵事件当時「VIP」に師団長救命を図ったという疑惑もある。録音の中のVが誰なのかは迷宮に入っている。ドンキホーテのような牧師のアンダーカバー取材で暴露されたブランドバック授受疑惑が氷山の一角のように感じられる。
ハプニングで終わるかと思われた疑惑はこじれて政権の成敗を左右する状況にいたった。「大韓民国が『金建希王国』に転落したという嘆きと怒りが強まっている」という野党の批判にうなずく国民が増えている。そのような熟成の時間を経た特検法が大統領の机の上にまた上がった。
尹大統領は折返し点で迎えた最悪の危機を突破することができるだろうか。その動力は国民の視点でのみ見つけられるだろう。市場で長ネギとハクサイを買い、麻浦(マポ)大橋と障害児施設で涙を流したからといって得られる共感ではない。野党代表の司法リスクに期待する時間はない。いま尹大統領が断固拒否しなければいけないのは竜山の矛盾だ。帝王と決別した初心のように、もう一度決断しなければいけない。
キム・スンヒョン/社会ディレクター
尹大統領は国民との「精神的交感」を民主主義の重要な要素と考えた。かなり前のことだが、記者らとの出勤前の問答「ドアステッピング」も似た趣旨だった。不快な質問も国民の前で受けて、すべての責任を自ら負うという大統領の初心は鮮明だった。帝王でなく公僕への換骨奪胎、大統領の視線は国民の目に合わされた。
任期の折返し点に立った今、鋭い最初の決断の追憶は消えた。巨大な青写真はこじれるだけこじれた。仕事をする姿を見せたものの公僕の動きが感じられない。国民が見たい姿ではなく、権力が見せたいものばかりが露出する。「疎通の意志」と書いても「不通の意地」と読まれる。就任時の抱負はそのまま「竜山の矛盾」となった。その結果が今向き合っている20%台の支持率なのだろう。
矛盾の真ん中には大統領夫人がいる。2年余りの間、金建希(キム・ゴンヒ)夫人は政府の「Xマン」(ゲームなどでこっそりとチームをつぶす妨害者)だったといっても過言でない。疑わしかった状況は雪だるまのように膨らみ、あやしかった過去の記憶と奇妙につながる。過度な疑心だと話していた支持者も首をかしげる。尹大統領が望んだ国民的な交感は公憤として現出している。
改革の出発点である竜山は疑惑の震源地になった。竜山庁舎のリフォーム事業は最近の監査院の監査で違法が確認された。手続きを無視した請負、不明確な契約、国庫の損失などが表れた。疑わしい会社の中には、よりによって金氏が運営したコバナコンテンツの展示会を協賛したところがある。その会社が協賛した2015年の「マーク・ロスコ展」の場合、金氏がいくつかの賞まで受け、ポータルサイト人物情報の受賞履歴として残っている。
少しだけ関心を持てば疑いの尾は簡単に切れない。同じ展示会の協賛社の中には問題のドイツモータースの名前もある。10余年前に金氏と金氏の母が20億ウォン台の投資利益を得て、その時期に株価操作があった会社だ。金氏の関与が正常な投資なのか、共犯またはほう助犯なのかに対する検察の捜査はまだ進行中だ。他の容疑者が2審有罪判決を受けるまで検察は結論を出していない。
株価操作のメンバーの一人は昨年の殉職海兵事件当時「VIP」に師団長救命を図ったという疑惑もある。録音の中のVが誰なのかは迷宮に入っている。ドンキホーテのような牧師のアンダーカバー取材で暴露されたブランドバック授受疑惑が氷山の一角のように感じられる。
ハプニングで終わるかと思われた疑惑はこじれて政権の成敗を左右する状況にいたった。「大韓民国が『金建希王国』に転落したという嘆きと怒りが強まっている」という野党の批判にうなずく国民が増えている。そのような熟成の時間を経た特検法が大統領の机の上にまた上がった。
尹大統領は折返し点で迎えた最悪の危機を突破することができるだろうか。その動力は国民の視点でのみ見つけられるだろう。市場で長ネギとハクサイを買い、麻浦(マポ)大橋と障害児施設で涙を流したからといって得られる共感ではない。野党代表の司法リスクに期待する時間はない。いま尹大統領が断固拒否しなければいけないのは竜山の矛盾だ。帝王と決別した初心のように、もう一度決断しなければいけない。
キム・スンヒョン/社会ディレクター
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