中東で戦争拡大を懸念する声が強まっている。イスラエルは25日未明(現地時間)、戦闘機100機を動員し、レバノン南部のイスラムシーア派武装組織ヒズボラの拠点を打撃した。ニューヨークタイムズ(NYT)はヒズボラがこの日午前5時、約3000発のミサイル・ロケットとドローンでイスラエル北部の国境地帯を大規模に打撃しようとしたが、イスラエルが先手を打ったと報じた。
これに先立ちハマスの首長イスマイル・ハニヤ氏は先月、テヘランで爆弾攻撃で死亡した。イスラエルの攻撃と推定されている。中東内の軍事的衝突が拡大する雰囲気だ。関係国の思惑と戦略を分析した。
◆イラン
テヘラン側は先月31日のペゼシュキアン新大統領就任式に出席したハマスの政治指導者ハニヤ氏が宿舎で爆死すると、「苦痛な報復」を明らかにした。しかしイランは事件発生から1カ月が経過しても特に報復をしていない。
これにはいくつかの理由がある。まず、イランは域内では強国だが、イスラエルに直接触れるのは難しい。イスラエルの後ろ盾となる米国の強大な中東戦力のためだ。米国は2021年8月にアフガニスタンから撤収したが、ペルシア湾(アラビア湾)周辺で強力な戦力を維持している。イランから300キロほど離れたバーレーンには米海軍第5艦隊が駐留している。バーレーン南東側のカタールには米軍が中東で運用する最大の空軍駐屯地アルウデイド基地がある。ここにはステルス機のF-22とB-1爆撃機も配備されている。アラブ首長国連邦(UAE)の首都アブダビ近隣にはアルダフラ基地がある。イランがむやみに動けない理由だ。
さらにイスラエルとの距離は1000キロを超える。直接攻撃するには戦闘機はもちろんミサイル・ドローンでも負担になる。イランはシリア・ダマスカスの自国領事館が爆撃されたことに報復するとして、すでに4月に弾道ミサイルなど数百発をイスラエルに発射したが、ほとんどが中間で迎撃された。実際、軍事行動の幅は大きくないということだ。
そのほか米国など西側の経済制裁も対イスラエル戦争拡大を難しくしている。戦争を拡大する場合、そうでなくても厳しい経済状況をさらに悪化させ、国内の世論が大きく悪化するからだ。しかし注目すべき点は、イランの軍統帥権者は国民が選出した任期制の大統領でなく、イスラムシーア派聖職者が選んだ終身制最高指導者(ラフバル)という点だ。7月31日に穏健派のペゼシュキアン氏が大統領に就任したが、軍事行動の最終決定は最高指導者ハメネイ師がする。イランが依然としてどこに跳ねるかを予測するのが容易でない理由だ。
◆米国
戦争拡大の防止のほか、ガザ地区戦争終息のための交渉の仲裁に積極的に取り組んでいる。バイデン政権の立場でみると、戦争拡大は11月の大統領選挙に明確に悪材料となるからだ。米国内の各地では親パレスチナデモが続いていて、離脱する民主党支持者も少なくない。国際社会ではガザ地区の民間人被害に対する非難の声が多い。
25日のイスラエルのヒズボラ空襲を見ると、バイデン政権を勘案して慎重に行動した点が表れている。100機の戦闘機が出撃したが、ヒズボラはこの日、死亡者を6人と発表した。この発表が事実なら、イスラエルは空襲目標物周辺の「付随的被害」、すなわち民間人の死傷を最小化し、軍事目標物だけを破壊する精密打撃をしたということだ。
◆イスラエル
イランとの戦争拡大を避けている。昨年10月7日に始まったハマスとの戦争が10カ月以上も続き、動員された30万人の予備軍をはじめ国民も戦争疲労感を感じるしかない。最近4万人を超えたガザ地区のパレスチナ住民死亡者も大きな負担だ。
こうした状況で行われたヒズボラに対する予防的先制打撃は、昨年10月のハマスの奇襲を予防できなかったことに対するネタニヤフ首相の政治的負担を減らす契機となる可能性もある。AP通信など海外メディアは「ネタニヤフ首相の立場では、適当な緊張感を与える対立状態が政権維持に有利であるはず」とし「特に国内の強硬保守派をなだめるためには耐えられるレベルの対決が必要な状況」と分析した。このためネタニヤフ首相は今後も「ハマス根絶」という目的を達成するために戦争を続けるべきという声を高めるとみられる。
◆ハマス・ヒズボラ
ハマスは政治指導者ハニヤ氏が先月テヘランで爆弾で死亡したことで絶体絶命の危機を迎えた。ハマス指導部自体が絶滅する危機に直面したからだ。現在としては生存が最も大きな課題になった。終戦交渉でイスラエル軍の完全撤収を主張する理由だ。イランの支援を受けるヒズボラは25日、野心的な奇襲作戦をする数時間前、イスラエルの攻撃を受けた。しかしヒズボラの指導者ナスララ師はこの日、レバノンのテレビに出演して「1次報復を終えた」と述べた。今後すぐには追加の攻撃がないという意味だ。目的を達成できなかったものの自制する姿からヒズボラの内心を読むことができる。4万-12万発にもなるロケットを備蓄しているヒズボラの沈黙が続いているが、いつ終わるか分からない不安な沈黙だ。
これに先立ちハマスの首長イスマイル・ハニヤ氏は先月、テヘランで爆弾攻撃で死亡した。イスラエルの攻撃と推定されている。中東内の軍事的衝突が拡大する雰囲気だ。関係国の思惑と戦略を分析した。
◆イラン
テヘラン側は先月31日のペゼシュキアン新大統領就任式に出席したハマスの政治指導者ハニヤ氏が宿舎で爆死すると、「苦痛な報復」を明らかにした。しかしイランは事件発生から1カ月が経過しても特に報復をしていない。
これにはいくつかの理由がある。まず、イランは域内では強国だが、イスラエルに直接触れるのは難しい。イスラエルの後ろ盾となる米国の強大な中東戦力のためだ。米国は2021年8月にアフガニスタンから撤収したが、ペルシア湾(アラビア湾)周辺で強力な戦力を維持している。イランから300キロほど離れたバーレーンには米海軍第5艦隊が駐留している。バーレーン南東側のカタールには米軍が中東で運用する最大の空軍駐屯地アルウデイド基地がある。ここにはステルス機のF-22とB-1爆撃機も配備されている。アラブ首長国連邦(UAE)の首都アブダビ近隣にはアルダフラ基地がある。イランがむやみに動けない理由だ。
さらにイスラエルとの距離は1000キロを超える。直接攻撃するには戦闘機はもちろんミサイル・ドローンでも負担になる。イランはシリア・ダマスカスの自国領事館が爆撃されたことに報復するとして、すでに4月に弾道ミサイルなど数百発をイスラエルに発射したが、ほとんどが中間で迎撃された。実際、軍事行動の幅は大きくないということだ。
そのほか米国など西側の経済制裁も対イスラエル戦争拡大を難しくしている。戦争を拡大する場合、そうでなくても厳しい経済状況をさらに悪化させ、国内の世論が大きく悪化するからだ。しかし注目すべき点は、イランの軍統帥権者は国民が選出した任期制の大統領でなく、イスラムシーア派聖職者が選んだ終身制最高指導者(ラフバル)という点だ。7月31日に穏健派のペゼシュキアン氏が大統領に就任したが、軍事行動の最終決定は最高指導者ハメネイ師がする。イランが依然としてどこに跳ねるかを予測するのが容易でない理由だ。
◆米国
戦争拡大の防止のほか、ガザ地区戦争終息のための交渉の仲裁に積極的に取り組んでいる。バイデン政権の立場でみると、戦争拡大は11月の大統領選挙に明確に悪材料となるからだ。米国内の各地では親パレスチナデモが続いていて、離脱する民主党支持者も少なくない。国際社会ではガザ地区の民間人被害に対する非難の声が多い。
25日のイスラエルのヒズボラ空襲を見ると、バイデン政権を勘案して慎重に行動した点が表れている。100機の戦闘機が出撃したが、ヒズボラはこの日、死亡者を6人と発表した。この発表が事実なら、イスラエルは空襲目標物周辺の「付随的被害」、すなわち民間人の死傷を最小化し、軍事目標物だけを破壊する精密打撃をしたということだ。
◆イスラエル
イランとの戦争拡大を避けている。昨年10月7日に始まったハマスとの戦争が10カ月以上も続き、動員された30万人の予備軍をはじめ国民も戦争疲労感を感じるしかない。最近4万人を超えたガザ地区のパレスチナ住民死亡者も大きな負担だ。
こうした状況で行われたヒズボラに対する予防的先制打撃は、昨年10月のハマスの奇襲を予防できなかったことに対するネタニヤフ首相の政治的負担を減らす契機となる可能性もある。AP通信など海外メディアは「ネタニヤフ首相の立場では、適当な緊張感を与える対立状態が政権維持に有利であるはず」とし「特に国内の強硬保守派をなだめるためには耐えられるレベルの対決が必要な状況」と分析した。このためネタニヤフ首相は今後も「ハマス根絶」という目的を達成するために戦争を続けるべきという声を高めるとみられる。
◆ハマス・ヒズボラ
ハマスは政治指導者ハニヤ氏が先月テヘランで爆弾で死亡したことで絶体絶命の危機を迎えた。ハマス指導部自体が絶滅する危機に直面したからだ。現在としては生存が最も大きな課題になった。終戦交渉でイスラエル軍の完全撤収を主張する理由だ。イランの支援を受けるヒズボラは25日、野心的な奇襲作戦をする数時間前、イスラエルの攻撃を受けた。しかしヒズボラの指導者ナスララ師はこの日、レバノンのテレビに出演して「1次報復を終えた」と述べた。今後すぐには追加の攻撃がないという意味だ。目的を達成できなかったものの自制する姿からヒズボラの内心を読むことができる。4万-12万発にもなるロケットを備蓄しているヒズボラの沈黙が続いているが、いつ終わるか分からない不安な沈黙だ。
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