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【時視各角】トランプ氏の頭に韓国は入力されたのか

ⓒ 中央日報/中央日報日本語版

トランプ前米大統領

#1.才能は本能に勝てない。理性も本能を超えられない。今回の米国大統領選挙も2人の本能が版図を動かした。ドナルド・トランプ共和党大統領候補、そしてAP通信のカメラマンのエバン・ブッチ氏だ。

まずはトランプ氏。彼は銃声が響いた瞬間、すぐに演壇の下に体を隠した。彼はニューヨーク軍事学校出身だ。そのDNAが生きていた。年齢78歳にして大変な瞬発力、体力だ。その後に続いた3回の「fight(戦おう)」の叫び。拳を握った右手を突き上げた本能は気力だ。申し訳ない話だが、バイデン大統領ならどうなっていただろうか。おそらく警護員に担がれていくか、気絶していたのではないだろうか。トランプ政権1期目にワシントン特派員をしながら書いた記事を振り返ってみると、「破壊本能」「暴言本当」など数多くの本能をトランプ氏に修飾語として付けていた。もちろん否定的な描写だった。5年が経過した今になって分かった。そのすべてをことを越えても余りある天賦的な「政治本能」がトランプ氏にあることを。

2021年にピューリッツァー賞を受賞したブッチ氏の本能も劇的だった。混乱した現場だったが、写真の構図が完ぺきだった。写真で最も安定的な構図は三角形だ。ブッチ氏はトランプ氏が突き上げた右手の拳を頂点に美しい三角形をとらえた。下からのアングルで雄壮な姿も出ていた。幸運かもしれないが逆光でなく順光で、青く澄んだ空が鮮明に星条旗と対比した。他のカメラマンも同じ位置にいたが、彼らはカメラを上に向けたままシャッターを押しただけだ。世紀の写真とそれなりの写真はこのように分かれた。


#2.銃撃事件が起きたのは午前7時5分(以下、日本時間)。最初にメッセージを出したのは英国のスターマー新首相だった。2時間後の午前9時15分に「衝撃的な場面に驚いた。いかなる形態の暴力も容認することはできない」というコメントをSNSに載せた。続いてオーストラリア(午前9時28分)、日本(午前9時59分)の首脳が後に続いた。他の主要国の首脳も概して似た時間帯に動いた。

ところが韓国の大統領室の対処は異常なほど遅かった。米国時間基準で日が変わり翌日未明(午後2時38分)に尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領のメッセージをSNSに出した。トランプ氏が300キロ離れたニュージャージー州の空港に降りる映像が公開されてからも1時間ほど過ぎた遅い対応だった。このため米国の主要メディアの関連記事からも韓国は抜けてしまった。記憶、忍耐心の限界がともに短いトランプ氏の頭の中に尹大統領のメッセージはおそらく未入力状態だろう。

では、なぜそうなったのか。まずバイデン大統領を意識したのなら大きな誤算だ。トランプ氏は「同盟かどうか」でなく指導者との1対1の関係を最も重視する。「石橋を叩いても渡らない」という言葉があるほど慎重な日本が機敏に動いたのにはすべて理由がある。さらに、特にトランプ氏の肩を持つ内容でもなく、テロを糾弾する平凡なメッセージだった。

もう一つ、仮に休日の午前であり大統領の行事のために対応が遅れたのなら深刻な紀綱弛緩だ。3文の短いメッセージを出すのにそれほど長い時間がかかるのだろうか。大統領室、外交部ともに全く本能も才能もない。

#3.米大統領選挙がすでにトランプ氏の勝利に傾いたという主張には同意しない。理由は2つある。一つは、米大統領選挙は結局、保守・進歩陣営の投票率が決定的な変数となる。今回の銃撃事件で保守層が結集する可能性もあるが、反対に危機を感じた民主党の支持層がさらに結集することも考えられる。

もう一つは「10月の異変」だ。米大統領選挙を振り返ると、いつも11月の投票日直前に大型の突発変数が発生した。2016年には米連邦捜査局(FBI)の「ヒラリーeメールスキャンダル」再捜査が発表され、状況が180度ひっくり返った。2020年にはトランプ氏のコロナ感染が決定打になった。

しかしいくらそうだとしても「トランプ2期目対応」を疎かにする理由はない。そうでなくても尹大統領がバイデン氏との義理をあまりにも重視し、下の人たちが動きにくくなっているという噂がすでにワシントンと外交関係者の間で広まっているという。外交において義理は実利に勝つことができない。

金玄基(キム・ヒョンギ)/論説委員



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