――３カ所でコンピューティング？

「まず、データセンターでＡＩを訓練・推論させるファンデーションモデルが駆動しなければならない。２番目はロボットに搭載されるジェットソンのようなエッジコンピューティングが必要だ。最後にその２つの間にあるメタバースプラットフォーム『オムニバース』基盤のコンピューティングだ。オムニバースでは試行錯誤や追加費用支出なくロボットを訓練できる。３つのコンピューターが絶えず相互作用してロボットを訓練する」。

現在ＡＩ学習・推論用チップ市場の９０％を独占するエヌビディアの次の視線はすでにロボットコンピューティングに向かっていた。タラ副社長の言葉通りならばロボット学習・推論用チップ市場は単純計算でも現在のサーバー用ＡＩチップ市場より３倍以上大きくなる。


ＡＩ搭載ロボットの最終目的地はヒューマノイド、すなわち人間に似たロボットだ。人間のように歩いて動くヒューマノイドロボットを開発しようとする競争はすでに激しくなっている。エヌビディアは個別の製品開発を超え、ロボティクス（ロボット工学）市場で通用するプラットフォームを開発するという野心を３月の開発者カンファレンスで示した。ヒューマノイド開発会社向けの汎用モデル「グルート」を公開しながらだ。

タラ副社長はグルートをエヌビディアのロボットビジョンの核心であり頂点に選んだ。フアンＣＥＯもやはり「世の中に最も簡単に適応できるロボットはヒューマノイド。この分野に大きな期待をかけている」と話した。

――エヌビディアが定義するヒューマノイドとは。

「人を助けるヒューマノイドがあれば、家庭や病院、商店で働くヒューマノイドが誕生するならば、未来に最も大きなロボット市場のひとつになるだろう。ほとんどの人がヒューマノイドを人間と似たひとつのフォームファクター（機器形態）と考える。だがロボットをヒューマノイドだと規定する要素はロボットに搭載された知能がどんな学習過程を通じて作られるのかにより決まるだろう」。

――プロジェクトグルートとは何か。

「グルートは基本的にヒューマノイドの基礎モデルを作る作業だ。テキストや音声を使ったり映像データ入力と学習を通じてロボット工学で汎用的に使える基礎モデルを作る。グルートを通じて誕生するロボットはすべてシミュレーション教育を受けるだろう。自然語を理解し人間の行動を観察して動きを模倣するよう設計される。実際の世界を探索して適応し相互作用するために必要な敏捷性とさまざまな技術を仮想空間で早く学習するだろう。核心は学習だ。ＧＰＵがＡＩを学習させるように、数千種類の実験を並列で実行できるので以前よりはるかに早く安く簡単にロボットテストが可能だ」。

――エヌビディアの「ヒューマノイド」はいつ出てくるか。

「エヌビディアはもうロボット工学に向けたプラットフォーム会社だ。ロボットシミュレーションプラットフォームであるアイザック、ジェットソントールのようなヒューマノイドに理想的なエッジコンピュータ、仮想世界でロボットをロボットらしく訓練するデジタルツインのオムニバースまでそろえた。（グルートを活用した）エヌビディアが直接ヒューマノイドロボットを作りはしないので具体的な製品発売時期を言うことはできない。だが各種ロボットを作っている数百社、数千社が結局はエヌビディアのプラットフォームを使うことになるだろう」。

エヌビディアのメッセージは驚くほど明確だった。「新しい産業革命のエンジンもずっとエヌビディアが作る」。建築資材に当たるＧＰＵと家を作る道具に例えられる専用ソフトウエア「ＣＵＤＡ」でＡＩチップ市場を独占したエヌビディアが成功の公式をそのままロボットに持ち込んで、もう一度の独走を準備するという意味だ。ロボット開発市場でも標準ツールを作ってエヌビディアがなければどのヒューマノイドロボットも作動しない未来、そしてその裏には間違いなくエヌビディアのＧＰＵがある。エヌビディアのロボットビッグピクチャーだ。


ロボットにはまったがロボットは作らない…手を使わず金を稼ぐエヌビディア（１）