北朝鮮の挑発が、韓国軍の手足を縛る鎖のように作用してきた9・19南北軍事合意を事実上無効にする名分として作用した。今後、韓国軍が選択できる実質的措置がまた増え、北朝鮮がより大きな圧迫感を受けることになるため、「汚物風船」のアイロニーといえる。
大統領室国家安保室は3日、「南北間の相互信頼が回復するまで9・19軍事合意全体の効力を停止する案件を4日に国務会議に上程することにした」と明らかにした。前日に対北朝鮮拡声器再開方針を決めてから5時間後、北朝鮮が汚物風船散布を条件付きで中断すると態度を変えた中、こうした状況の変化を反映して対応措置を議論した結果だ。
軍内外では「プランB」(次善策)を先に稼働したという声が出ている。軍関係者は「対北拡声器放送の再開がプランA(最善策)だったなら、北が汚物風船散布を中断した現時点でプランBを先に稼働したということ」と話した。
同時に韓国政府はプランA、すなわち拡声器放送再開を依然として最も強力な選択肢として準備を進めている。すでに国民の被害などが発生した中、北朝鮮が態度を変えたという理由で何ごともなかったかのように事態を済ませるのは難しいと判断したとみられる。前日(2日)の国家安全保障会議(NSC)は「北が耐えがたい措置に着手することにした」という発表もした。
実際、南北が互いに敵対行為をしないと包括的に規定した9・19南北軍事合意の効力を停止するのは、拡声器再開のために必須の事前手続きでもある。対北朝鮮拡声器放送を特定して禁止したのは2018年4・27板門店(パンムンジョム)宣言だが、政府は板門店宣言が国会の批准を経ていないため別途の効力停止手続きも必要でないとみている。拡声器放送を禁止した南北関係発展法(2021年施行)は「この法施行前に国会の同意を受けて締結・批准した南北合意書」(付則)に限り遵守するよう規定しているというのが政府の判断だ。
結局、9・19軍事合意効力停止を通じて政府はプランAを依然として準備し、これを通じて我々が取ることができる軍事的措置の選択肢を多様化する実利も得たということだ。
表現は効力停止だが、これは事実上の破棄手続きという見方が多い。現政権はその間、軍事合意を対北朝鮮軍事的措置の「障害物」と考えてきた。申源湜(シン・ウォンシク)国防部長官が代表的な廃止論者だ。申長官は長官候補者だった昨年9月、「軍事合意で軍事的脆弱性が非常に高まったため必ず破棄しなければいけない」とし「北が意図的で繰り返し軍事合意を違反している状況で、破棄を通じて北の脅威に対応するための軍事対応態勢を強化するのが望ましい」と主張した。
これを受け、政府は北朝鮮挑発局面で軍事合意を比例的対応策として持ち出した。昨年11月に北朝鮮が偵察衛星を打ち上げた際、飛行禁止区域設定関連条項(第1条3項)を効力停止にした。軍の前方偵察能力復元が北朝鮮偵察衛星に相応する措置という論理だった。
続いて軍当局は1月、北朝鮮が合意上の敵対行為禁止区域で相次いで砲兵射撃挑発をすると、「敵対行為中止区域はこれ以上存在しない」と発表した。合意以前に実施したように西北島嶼や軍事境界線の南側地域で各種射撃訓練を再開するとも明らかにした。たとえ軍当局の当時の発表は国務会議の議決手続きを踏まず、その後も訓練は行われず宣伝的な意味として残ったが、事実上の合意の終焉と解釈された。
一方では軍事合意を北朝鮮対応カードとして使用するのが妥当なのかという批判世論も少なくない。一部の専門家らは北朝鮮衛星打ち上げの場合は9・19軍事合意に含まれないという点を挙げ、南北衝突の可能性を高めるだけだと指摘した。
しかし政府は今回は状況が異なるとみている。汚物風船散布と衛星利用測位システム(GPS)妨害などこれまでにない「複合挑発」形態を見せているため、韓国内の葛藤よりも政府の積極的な対応を求める声が多いと判断しているということだ。同時に政府は国務会議議決を根拠とする効力停止を通じて、宣伝的な効果を超える手続き的正当性を確保しようとするとみられる。
軍内部では増えた選択肢のため戦略的あいまい性が高まり、北朝鮮抑止力効果も強まると期待している。軍当局者は「軍事合意効力停止後、当分は具体的な軍事行動を『空欄』として残しておけば、北の当局が感じる恐怖感はさらに深まるだろう」とし「合意以前の水準で前方射撃訓練を実施することだけでも北の軍が感じる疲労感はかなり強いはず」という見方を示した。梨花女子大の朴元坤(パク・ウォンゴン)北朝鮮学科教授は「対北拡声器放送再開カードを惜しんで段階的に西北島嶼砲射撃訓練などを進める可能性がある」と話した。
大統領室国家安保室は3日、「南北間の相互信頼が回復するまで9・19軍事合意全体の効力を停止する案件を4日に国務会議に上程することにした」と明らかにした。前日に対北朝鮮拡声器再開方針を決めてから5時間後、北朝鮮が汚物風船散布を条件付きで中断すると態度を変えた中、こうした状況の変化を反映して対応措置を議論した結果だ。
軍内外では「プランB」(次善策)を先に稼働したという声が出ている。軍関係者は「対北拡声器放送の再開がプランA(最善策)だったなら、北が汚物風船散布を中断した現時点でプランBを先に稼働したということ」と話した。
同時に韓国政府はプランA、すなわち拡声器放送再開を依然として最も強力な選択肢として準備を進めている。すでに国民の被害などが発生した中、北朝鮮が態度を変えたという理由で何ごともなかったかのように事態を済ませるのは難しいと判断したとみられる。前日(2日)の国家安全保障会議(NSC)は「北が耐えがたい措置に着手することにした」という発表もした。
実際、南北が互いに敵対行為をしないと包括的に規定した9・19南北軍事合意の効力を停止するのは、拡声器再開のために必須の事前手続きでもある。対北朝鮮拡声器放送を特定して禁止したのは2018年4・27板門店(パンムンジョム)宣言だが、政府は板門店宣言が国会の批准を経ていないため別途の効力停止手続きも必要でないとみている。拡声器放送を禁止した南北関係発展法(2021年施行)は「この法施行前に国会の同意を受けて締結・批准した南北合意書」(付則)に限り遵守するよう規定しているというのが政府の判断だ。
結局、9・19軍事合意効力停止を通じて政府はプランAを依然として準備し、これを通じて我々が取ることができる軍事的措置の選択肢を多様化する実利も得たということだ。
表現は効力停止だが、これは事実上の破棄手続きという見方が多い。現政権はその間、軍事合意を対北朝鮮軍事的措置の「障害物」と考えてきた。申源湜(シン・ウォンシク)国防部長官が代表的な廃止論者だ。申長官は長官候補者だった昨年9月、「軍事合意で軍事的脆弱性が非常に高まったため必ず破棄しなければいけない」とし「北が意図的で繰り返し軍事合意を違反している状況で、破棄を通じて北の脅威に対応するための軍事対応態勢を強化するのが望ましい」と主張した。
これを受け、政府は北朝鮮挑発局面で軍事合意を比例的対応策として持ち出した。昨年11月に北朝鮮が偵察衛星を打ち上げた際、飛行禁止区域設定関連条項(第1条3項)を効力停止にした。軍の前方偵察能力復元が北朝鮮偵察衛星に相応する措置という論理だった。
続いて軍当局は1月、北朝鮮が合意上の敵対行為禁止区域で相次いで砲兵射撃挑発をすると、「敵対行為中止区域はこれ以上存在しない」と発表した。合意以前に実施したように西北島嶼や軍事境界線の南側地域で各種射撃訓練を再開するとも明らかにした。たとえ軍当局の当時の発表は国務会議の議決手続きを踏まず、その後も訓練は行われず宣伝的な意味として残ったが、事実上の合意の終焉と解釈された。
一方では軍事合意を北朝鮮対応カードとして使用するのが妥当なのかという批判世論も少なくない。一部の専門家らは北朝鮮衛星打ち上げの場合は9・19軍事合意に含まれないという点を挙げ、南北衝突の可能性を高めるだけだと指摘した。
しかし政府は今回は状況が異なるとみている。汚物風船散布と衛星利用測位システム(GPS)妨害などこれまでにない「複合挑発」形態を見せているため、韓国内の葛藤よりも政府の積極的な対応を求める声が多いと判断しているということだ。同時に政府は国務会議議決を根拠とする効力停止を通じて、宣伝的な効果を超える手続き的正当性を確保しようとするとみられる。
軍内部では増えた選択肢のため戦略的あいまい性が高まり、北朝鮮抑止力効果も強まると期待している。軍当局者は「軍事合意効力停止後、当分は具体的な軍事行動を『空欄』として残しておけば、北の当局が感じる恐怖感はさらに深まるだろう」とし「合意以前の水準で前方射撃訓練を実施することだけでも北の軍が感じる疲労感はかなり強いはず」という見方を示した。梨花女子大の朴元坤(パク・ウォンゴン)北朝鮮学科教授は「対北拡声器放送再開カードを惜しんで段階的に西北島嶼砲射撃訓練などを進める可能性がある」と話した。
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