最近、米国、欧州連合(EU)加盟国のほか、米国のアジア太平洋地域の同盟国のメディアにまで「中国スパイ」というキーワードが絶えず登場している。単なる疑惑に終わるイシュー性の報道も多いが、実際にスパイ容疑が浮上して波紋を起こした事件もあった。今年上半期だけでもベルギー、オランダ、米国、英国、ドイツ、フランス、スイス、オーストラリア、フィリピンなど9カ国を超えるところで波紋が広がった。近来「中国スパイ」事件がよくメディアに登場している理由は何か。
最近世界を騒がせたのは「中国スパイ説」が浮上したフィリピン・ルソン島バンバン市の女性市長アリス・グォだ。出身背景や履歴が不明であるうえ、市長室のすぐ後ろにある中国人を主に顧客とするオンラインカジノが「ロマンス詐欺」(オンラインで異性に接近してお金をとる詐欺手法)犯罪の巣窟と確認されたからだ。
調べてみると、この業者の敷地の半分とヘリコプター1機がグォ市長の所有であり、疑わしい点が一つや二つでなかった。母がフィリピン人、父が中国人ということは知られているが、今月初めに開かれた聴聞会で身辺関連の質問にグォ市長が具体的な答弁をしなかった点も疑惑を深めた。英BBCが19日、グォ市長をめぐる「スパイ説」を大々的に報道し、世界メディアがこれを扱ったが、グォ市長と中国の明確な関係性が明らかになったわけではない。
フィリピンでは1カ月前にも「中国スパイ」イシューがあった。中国牽制のための軍事的橋頭堡地域に中国人留学生数千人が集まったからだ。マニラタイムズなど現地メディアは先月18日、フィリピン政府がルソン島カガヤン州トゥゲガラオ市のある私立大に4600人の中国人留学生が登録した状況を調査することにしたと報じた。
カガヤン州は台湾から400キロほど離れたフィリピン最北端地域であり、2つの米軍基地がある。フィリピン大学内に中国人留学生が多いのは異例でない。ただ、台湾海峡と南シナ海の緊張が高まった時期、軍事的要衝地の真ん中に中国人学生が急増したのはフィリピン軍当局が疑うのに十分だった。
中国スパイ疑惑はフランスとスイスでもあった。英フィナンシャルタイムズ(FT)は先月29日、フランス海軍の原子力潜水艦基地があるブレスト地域で中国スパイのハニートラップ工作疑惑があると報じた。海軍基地で勤務する職員と中国人女子学生の結婚式がこの数年間に大きく増えたからだ。
米ウォールストリートジャーナル(WSJ)は16日、米国の最先端第5世代戦闘機F-35を導入することにしたスイスの「スパイ騒動」を集中的に報道した。スイス空軍飛行場付近で中国人家族が運営する「ホテルレスリー」が中国情報機関の監視哨所と疑われるとし、スイス連邦警察が調査を始めた。
WSJはこの家族が本当に中国スパイなのか、軍事情報を収集したかを判断する物証はまだ確認されていないと明らかにした一方、海外居住中国人なら誰でもスパイになる危険があると強調した。2017年に改正された中国「国家情報法」7条によると、すべての中国人は国家の諜報活動と機密維持に積極的に協力する義務があるからだ。
こうした事例は疑惑にすぎない可能性もある。しかし否定しがたい状況も少なくない。13日、豪ABC放送の調査報道番組が伝えた、元中国公安部所属の秘密警察へのインタビュー内容が代表的な例だ。昨年オーストラリアに亡命した元中国工作員エリック氏(仮名)は自身が2008年から23年まで海外で行ってきた秘密警察活動と海外滞在反体制人物に対する中国共産党の「狩猟」方式を詳細に暴露した。
このほかにも中国の諜報活動とスパイイシューは今年に入って西側メディアのヘッドラインに何度も登場している。中国スパイとして暗躍した容疑で所属政党から除名された元ベルギー上院議員フランク・クレイエルマン事件(1月15日、FT)、オランダ軍情報当局が公開した中国政府支援ハッカーの軍ネットワークハッキング事件(2月6日、ロイター)、サイバー攻撃を繰り返した中国武漢基盤ハッカー組織「APT31」に対する米国・英国当局の制裁(3月25日、ロイター)、中国スパイ容疑で起訴された元英議会研究官クリストファー・キャッシュとクリストファー・ベリー事件(4月22日、英タイムズ)、中国国家安全省に防衛産業技術を流出させたドイツ国籍者トーマスF.、ヘルビッヒF.、イナF.事件(4月22、英ガーディアン)、ドイツ極右政党「ドイツのための選択肢(AfD)」所属マクシミリアン・クラー議員の補佐官ジアン・グオがEU議会交渉・決定関連情報を中国に渡した容疑で逮捕された事件(4月23日、独DPA)など次々と新しいニュースが出ている。
世界各地で絶えない中国スパイ疑惑(2)
最近世界を騒がせたのは「中国スパイ説」が浮上したフィリピン・ルソン島バンバン市の女性市長アリス・グォだ。出身背景や履歴が不明であるうえ、市長室のすぐ後ろにある中国人を主に顧客とするオンラインカジノが「ロマンス詐欺」(オンラインで異性に接近してお金をとる詐欺手法)犯罪の巣窟と確認されたからだ。
調べてみると、この業者の敷地の半分とヘリコプター1機がグォ市長の所有であり、疑わしい点が一つや二つでなかった。母がフィリピン人、父が中国人ということは知られているが、今月初めに開かれた聴聞会で身辺関連の質問にグォ市長が具体的な答弁をしなかった点も疑惑を深めた。英BBCが19日、グォ市長をめぐる「スパイ説」を大々的に報道し、世界メディアがこれを扱ったが、グォ市長と中国の明確な関係性が明らかになったわけではない。
フィリピンでは1カ月前にも「中国スパイ」イシューがあった。中国牽制のための軍事的橋頭堡地域に中国人留学生数千人が集まったからだ。マニラタイムズなど現地メディアは先月18日、フィリピン政府がルソン島カガヤン州トゥゲガラオ市のある私立大に4600人の中国人留学生が登録した状況を調査することにしたと報じた。
カガヤン州は台湾から400キロほど離れたフィリピン最北端地域であり、2つの米軍基地がある。フィリピン大学内に中国人留学生が多いのは異例でない。ただ、台湾海峡と南シナ海の緊張が高まった時期、軍事的要衝地の真ん中に中国人学生が急増したのはフィリピン軍当局が疑うのに十分だった。
中国スパイ疑惑はフランスとスイスでもあった。英フィナンシャルタイムズ(FT)は先月29日、フランス海軍の原子力潜水艦基地があるブレスト地域で中国スパイのハニートラップ工作疑惑があると報じた。海軍基地で勤務する職員と中国人女子学生の結婚式がこの数年間に大きく増えたからだ。
米ウォールストリートジャーナル(WSJ)は16日、米国の最先端第5世代戦闘機F-35を導入することにしたスイスの「スパイ騒動」を集中的に報道した。スイス空軍飛行場付近で中国人家族が運営する「ホテルレスリー」が中国情報機関の監視哨所と疑われるとし、スイス連邦警察が調査を始めた。
WSJはこの家族が本当に中国スパイなのか、軍事情報を収集したかを判断する物証はまだ確認されていないと明らかにした一方、海外居住中国人なら誰でもスパイになる危険があると強調した。2017年に改正された中国「国家情報法」7条によると、すべての中国人は国家の諜報活動と機密維持に積極的に協力する義務があるからだ。
こうした事例は疑惑にすぎない可能性もある。しかし否定しがたい状況も少なくない。13日、豪ABC放送の調査報道番組が伝えた、元中国公安部所属の秘密警察へのインタビュー内容が代表的な例だ。昨年オーストラリアに亡命した元中国工作員エリック氏(仮名)は自身が2008年から23年まで海外で行ってきた秘密警察活動と海外滞在反体制人物に対する中国共産党の「狩猟」方式を詳細に暴露した。
このほかにも中国の諜報活動とスパイイシューは今年に入って西側メディアのヘッドラインに何度も登場している。中国スパイとして暗躍した容疑で所属政党から除名された元ベルギー上院議員フランク・クレイエルマン事件(1月15日、FT)、オランダ軍情報当局が公開した中国政府支援ハッカーの軍ネットワークハッキング事件(2月6日、ロイター)、サイバー攻撃を繰り返した中国武漢基盤ハッカー組織「APT31」に対する米国・英国当局の制裁(3月25日、ロイター)、中国スパイ容疑で起訴された元英議会研究官クリストファー・キャッシュとクリストファー・ベリー事件(4月22日、英タイムズ)、中国国家安全省に防衛産業技術を流出させたドイツ国籍者トーマスF.、ヘルビッヒF.、イナF.事件(4月22、英ガーディアン)、ドイツ極右政党「ドイツのための選択肢(AfD)」所属マクシミリアン・クラー議員の補佐官ジアン・グオがEU議会交渉・決定関連情報を中国に渡した容疑で逮捕された事件(4月23日、独DPA)など次々と新しいニュースが出ている。
世界各地で絶えない中国スパイ疑惑(2)
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