カルティエが1920年に発表した「シガレットケース」 [カルティエ]
毎週金曜日に連載する「カルティエ・デジタル・ドーセント」第3回では、カルティエの長い歴史の技術と匠の精神を感じることができる「シガレットケース」と「ロトンド・ドゥ・カルティエ・ウォッチ」を紹介する。
「カルティエ、時の結晶」展は主に「素材の変身と色彩」「形態とデザイン」「世界的な好奇心」の3つで構成されている。チャプター別に壮大な時間を経て誕生した宝石、自然と文化からインスピレーションを受けたデザイン、匠の独歩的な工芸技術が結びついたジュエリーを公開する。最初のチャプター「素材の変身と色彩」では長期にわたる匠の精神が込められた色彩の組み合わせと1世紀かけて完成された技術力が交わった作品があるが、それが「シガレットケース」と「ロトンド・ドゥ・カルティエ・ウォッチ」だ。
◆伝統が集約されたモザイク
小片をつないだモザイクが神秘的な印象を与える。複雑な模様に華麗な色彩感が加わり、豪華な古代ローマ建築の精巧な装飾を連想させる。
カルティエはこの豪華で巨大なモザイクを「シガレットケース」のような日常品にも具現した。魅力的な色を誇る青金石とトルコ石を最大限に繊細に細工して自然に配置する精巧さを無理なく発揮している。こうしたモザイクはカルティエの「ハードストーンマーケトリー」(Hard Stone Marquetry、原石の小片をモザイクのように合わせる)という象嵌細工技法で作られた。欧州でかなり以前から家具や日常用品に適用されてきた伝統技法でもある。
伝統技法を忠実に具現できるのはカルティエの匠が保持する優れた技術のおかげだ。カルティエは2010年に宝石彫刻を専門にする工房を設立した。ここにはフランス政府が伝統工芸分野の最高技能者と認定した「メートル・ダール(Maitre d’ art)」称号を受けた匠が所属している。この匠人らはカルティエの伝統技術を練磨して後継者を養成するなど、カルティエが持つ手工芸技術の命脈を引き継いでいくために努力している。
従来の技術を基礎に実験的な細工技法を見せたりもする。自然から受けるインスピレーションを工芸品にする試みだ。
◆腕時計に取り入れたミステリークロック
腕時計の中の一組の針が浮いているようだ。カルティエの創意性を見せる作品「ミステリークロック」を小さな腕時計の中に入れた形状で、2017年に登場した「ロトンド・ドゥ・カルティエ・ウォッチ」だ。
今回の展示「プロローグ:時の空間、ミステリークロックとプリズムクロック」で見られるミステリークロックは20世紀初めにカルティエ創立者の孫ルイ ・カルティエとウォッチメーカーのモーリスクーエが共に制作した。いかなる部品とも連結していない時計の針が神秘的だ。このため過去1世紀の間、カルティエの象徴のような作品として認められてきた。
カルティエはそのミステリークロックの技術をより一層精巧にして「ロトンド・ドゥ・カルティエ・ウォッチ」に適用する実験をした。小さなミステリークロックの白いダイヤル(文字盤)はカルティエの匠が象嵌細工で作ったモザイクと絶妙に交わる。カルティエの独特の技術力と匠の精神が調和した作品が誕生したということだ。
◆韓国伝統素材との出会い
最初のチャプター「素材の変身と色彩」では、闇の中に広がる霧の間に、王室の宝が入った、封印された箱が置かれた空間が連想される。カルティエの代表作品が韓国伝統王室の宝物倉庫に置かれているようだ。これは韓国伝統素材「羅」を、空間を飾るのに活用したためだ。羅は三国時代と高麗時代によく使われた高級織物で、きめ細かく深みのある半透明の質感を持つ。
今回の展示の羅は韓国伝統文化研究所「オンジウム」で特別に制作された。2013年に中央ファドン財団の付設研究所として第一歩を踏み出したオンジウムは祖先の衣食住の中の遺産をつくる匠を養成し、同時に工房を運営している。伝統の美を復元して未来の遺産にするという点にカルティエが注目した。カルティエはオンジウムの羅復元過程を後援し、展示場に羅を活用して演出した。
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