中国官僚たちが米国のトランプ前大統領が再執権する場合に起きる新たな米中貿易戦争と技術戦争に備え始めたと米国ウォール・ストリート・ジャーナル（ＷＳＪ）が１日（現地時間）、報じた。

報道でＷＳＪは、トランプ氏が今年１１月の米大統領選挙で勝利した場合、習近平国家主席の最大の懸念はロシアのプーチン大統領との「ブロマンス」が邪魔されないかどうかだと指摘した。トランプ氏は過去の執権期間、ロシアと友好的な関係を持つために努力したと評価される。メディアは冷戦期間、リチャード・ニクソン元大統領が旧ソ連に対抗するために中国を訪問したように、トランプ氏もモスクワを中国に対抗させる「逆ニクソン」戦略を駆使する場合もあるとみている。

トランプ第１期で中央情報局（ＣＩＡ）と国務省を導いたポンペオ氏の合流も中国にとっては心配事だ。昨年１月、ポンペオ氏の回顧録『Ｎｅｖｅｒ　Ｇｉｖｅ　ａｎ　Ｉｎｃｈ（少しも引かない）』の翻訳本を見た習主席は「米国は台湾に完全な外交的認定を付与しなければならない」という部分を読んで激憤したという。ポンペオ氏は中国が領土入国を禁じたトランプ政府官僚リスト（計２８人）に含まれている。中国外交部の華春瑩報道官はバイデン大統領の就任前日「ポンペオは『うそつき』であり『最後のピエロ』」と極言を使って非難した。


ＷＳＪによると、複数の中国官僚は内心トランプ氏の当選を期待している。トランプ氏の再執権が米国の政治・社会的混乱を引き起こして世界単一覇権の衰退を加速させ、バイデン大統領が任期中に築いた同盟国を白紙に戻して、中国が欧州との関係を再構築するために助けになるだろうという予想のためだ。

だが、中国指導部に近い消息筋は、トランプ第２期が中国に及ぼす被害が潜在的利益よりも大きいだろうと信じる中国官僚が多数だとＷＳＪに伝えた。米国スティムソンセンター中国プログラムディレクターの孫韵氏は「トランプがホワイトハウスに復帰するなら米中関係の改善には限界はあるが、（関係の）下落は底辺がなくなるだろう」と展望した。

中国は「トランプリスク」に対する対策準備に入った。外交部・商務部・科学技術部などは米国選挙観察チームを任命し、特にトランプキャンプの人選に注目している。中国高官は米国企業の最高経営陣に対する求愛を強化し、トランプ内閣に誰が含まれるのかを聞き出し、米国企業家を中国に引き留めようと努力している。

中国指導部が最も恐れているのは米中貿易戦争が起きる可能性だ。トランプ第１期で中国産輸入品に対する米国の関税は平均３％から１２％に引き上げられた。トランプ氏は再選に成功すれば中国に６０％の関税を課す可能性があると公言したことがある。中国経済学者の研究によると、米中貿易戦争で中国国内総生産（ＧＤＰ）が受けた被害は米国の３倍に達した。

中国のもう一つの心配は先端技術の統制だ。北京の官僚はトランプが再選する場合、米国の輸出統制速度と範囲を予測するためのシミュレーションに米国と西側専門家を招いた状態だ。中国政府研究院は技術接近迂回チャンネルを確保するためにすでに中東アブダビの技術革新研究所と生命工学、量子コンピューティング、人工知能（ＡＩ）などの分野で協力を進めている。

中国分析家は「米国の技術制裁を回避しようとする中国の取り組みが今後数カ月で加速する可能性が高い」と指摘する。米国側は中国企業が海外企業を買収する形で米国の強力なＡＩチップを入手する可能性がある点を懸念している。