ロシアの反体制活動家アレクセイ・ナワリヌイ氏の死亡に関連して米国のバイデン大統領が連日強硬論を展開している。反面、トランプ前大統領はナワリヌイ氏の死と自身の捜査状況を重ねて、自身が政治的目的の捜査を受けていると主張している。

バイデン氏は１９日（現地時間）、記者と会ってナワリヌイ氏の死亡に関連して「すでに（ロシアに対する）制裁を行っているが、追加制裁を検討している」と話した。

ナワリヌイ氏はロシア官僚の不正腐敗を暴露して政府政策を公開的に批判してきたが、今月１６日にシベリアの刑務所で亡くなった。バイデン氏はナワリヌイ氏の死亡直後から「プーチンに責任がある」とし、同氏を直接批判してきた。ロシアに対する追加制裁もその背後がプーチン氏であることを前提にしたものと解釈される。


バイデン氏はまた、共和党が多数の下院で審議中のウクライナ・イスラエル支援のための安保予算に関連して「ナワリヌイ氏の死亡で立場変化が起きるよう願っている」とし「共和党は大きな過ちを犯していて、ロシアの脅威と我々の義務から逃げている」と指摘した。

バイデン氏の強硬な発言はトランプ氏を狙った可能性もある。

トランプ氏はプーチン氏について何度も「頭の良い人」と話し、ロシアの２０１６年大統領選挙介入疑惑に関しても同氏を弁護するような発言をしたことがある。反面、ナワリヌイ氏の死亡に関連し、プーチン氏の責任については言及しないでいる。これを受けて共和党選挙候補であるニッキー・ヘイリー元サウスカロライナ州知事まで乗り出して「トランプはプーチンがナワリヌイに対する責任があると考えるかどうか答えるべき」と言って圧迫した。

トランプ氏は結局、この日ソーシャルメディア「トゥルース・ソーシャル（Ｔｒｕｔｈ　Ｓｏｃｉａｌ）」に初めてコメントを出した。しかしナワリヌイ氏の死の背後に関しては言及を避けたまま「同氏の突然の死は、私に米国で何が起こっているのか徐々に自覚させた」とし「頭の悪い急進左派の政治家と司法府は我々を漸次的に衰退の道に導いている」とだけコメントした。続いて「穴の空いた国境と操作された選挙、不公正な判決が米国を破壊している。我々は衰退中の失敗した国」とし、ナワリヌイ氏の死亡を、自身に対する捜査と裁判が政治的目的によって行われているという主張を展開するための手段として利用した。

トランプ氏は前日には保守メディアの社説『バイデン：トランプ、プーチン：ナワリヌイ』をＳＮＳに掲示したが、これもプーチン氏が政敵を投獄したことと、バイデン政府が自身を捜査したことが類似の目的という論理の内容だった。米政治専門メディア「ポリティコ（Ｐｏｌｉｔｉｃｏ）」は「ナワリヌイの死から７２時間経ってトランプが初めてコメントを出したが、彼はナワリヌイの死を自身の裁判とつなげただけ」と評した。

ネットメディア「アクシオス」はバイデン氏がＮＡＴＯ（北大西洋条約機構）同盟を圧迫して、ロシアを直接批判しないトランプ氏の状況を活用した反撃カードを出す可能性を提起した。契機は来月７日の上・下院合同会議の一般教書演説だ。同メディアはバイデン氏の側近の言葉を引用して「特検報告書の否定的衝撃を扱う唯一の道は大統領が立ち上がって強い存在感を表わし、強い声を出すこと」としながら国民向け演説を通じて大統領選の状況をひっくり返すチャンスにしようとしていると報じた。

バイデン氏の機密文書流出疑惑を捜査したロバート・ハー特別検察官は８日の報告書でバイデン大統領について「記憶力が悪いが悪意はない老人」と評して年齢論争に油を注いだ。共和党が来月ハー検察官を公聴会に証人として呼ぶ予定の中で、バイデン氏が自ら論争に終止符を打たなければならないという意味だ。特に演説では不法移民者流入を中断する行政命令まで電撃発表してトランプ氏が出した国境イシューまで先行獲得するのではないかという見通しも出ている。

米国では大統領の演説直後に野党要人の反論演説が続く。米国の一部メディアは共和党内の一部では演説者にトランプ氏を送り込む案が話し合われているという報じているが、実際には誰が演説を引き受けるのかということに対しても関心が高まっている。