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【中央時評】ダークホースを除去する韓国社会

ⓒ 中央日報/中央日報日本語版
ある外国人ユーチューバーの韓国旅行記が話題になった。旅行記は韓国に関する疑問で始まる。先端技術と文化産業の躍進で韓国という国は脚光を浴びているが、韓国の人たちはなぜ不幸だと感じているのだろうか。彼が見つけた答えは圧縮的成長を経た韓国が儒教文化と資本主義文化の短所ばかりをつかんだということだ。各自の個性を尊重するよりも体面を強調する文化の中で、絶えず比較と競争で人々はいつも不安を感じるということだ。主犯は思い浮かぶ。教育問題は私たちの「部屋の中の象」になって久しい。女性の経歴断絶と出生率の急低下、不動産問題と地方消滅、高齢者貧困問題にも教育が絡んでいる。最も懸念されるのは青少年が幸せでないという点だ。幸せでない青少年が幸せな成人になれるだろうか。

人工知能の進化で世の中の変化は数倍速くなった。分野を問わず与えられた質問に速やかに答えを出す人でなく、与えられた答えにタックルをして新たな質問を投げかける人物が未来のリーダーという点に異見はない。こうした環境の中で最も代替不可能で希少性があるのは結局、各自が持つ「自分らしさ」だ。自分らしさを基礎に一個人の成長は、慣れない状況に身を投じながら、いろんな人たちと交流しながら、余裕のある時間の中で作られる。上の世代にとって成長期のどたばたが時間の浪費だったなら、今はまさにこうした過程で自分らしさが形成され、不確実性を乗り越えていく丈夫な筋力が育まれる。

ハーバード教育大学院のトッド・ローズ教授は著書『ダークホース』で、標準化した成功公式を追うのは意味がないだけでなく、むしろ個人の幸せを害するという点を指摘している。著書にはこのような内容がある。「(標準化された成功公式は)個人が持つ潜在力を低評価する。何よりも大きな毒素は、各自が持つ個性に合わない道を進ませ、その道の上でさまよえば失敗だと指を差し、個人の過ちであるかのように自分を責めさせることだ」。韓国社会は無限の潜在力を持つ子どもたちを競走馬のように目隠しして走らせている。


医大狂風現象は「韓国の教育は朴賛浩(パク・チャンホ、元メジャーリーガー)にアインシュタインになれという」と表現した外国人教授の批判を思い出させる。勉強が少しできるという子どもを持つ多くの親が「医歯韓薬獣」(医大、歯科大、韓医大、薬科大、獣医大)に向けて幼い頃から訓練させる。首都圏の最高レベルの大学からも新入生が専門を知る前から引き潮のように抜けていく。学習塾が集まる地域に小学生医大クラスができて久しい。このような環境で自分のやり方で子育てをすると強く決心するのは容易でない。いつの間にかだめになっていくのではいう不安も理解できるが、現在の基準で未来を生きていく子どもたちの人生を安全な近道に案内できるという自信は危険で無謀だ。

大学の問題はさらに大きい。現在の大学は、学生が世の中を広く眺めながら自分らしさを省察して未来を探索する機会を十分に与えるのに最適化していない。大学に入ってくる前まで学生たちは入試ばかりを見て走る。多様な学問の世界を正確に理解できていないだけでなく、自身に対する考慮よりも合格ラインに合わせて専攻を決めるしかない。大学に入って自身の適性や好みを見つけても、不幸にも学科間の仕切りは高く専攻を変えるのは容易でない。社会の変化に合わせて消えたり減ったりする分野もあり、新設されたり拡大する分野があるというのは当然のことだが、大学の学科・専攻構成の基本枠は30年前とそれほど変わらない。学生は非常に限された情報と選択肢の中に貴重な時間を押し入れるしかない。

教育部が入学後に専攻を決める無専攻選抜の拡大を進めたが、反発は激しかった。諸条件を十分に考慮していない試みだというが、従来の学科中心の学士制度を大学が自ら改革できないため苦肉の策として外部が刺激したものだ。現体制を変えようという動きは必ず「趣旨は理解できるが性急だ」「諸条件が整っていない」という反発にぶつかり、これで退くことはできないという長官の決起も3週後には従来の案を撤回して挫けてしまった。方向性に同意しながら速度が伴わないのは変化を拒否するのと変わらない。

教育はどの分野よりも破壊的な革新が求められている部門であるにもかかわらず、破壊または破壊による反発を恐れて一歩も踏み出せていない状況だ。3大改革の一つとして教育改革に取り組むという現政権が中長期教育政策の方向を用意するとして発足させた国家教育委員会は、中長期政策どころか沈黙が続いていて、存在するのかどうかさえも分からない。教育を「部屋の中の象」にした歴代政権の無責任な放任、変わらない大学、不安を利用して生きる学習塾カルテル、これらがワンチームになって、未来を率いていくダークホースを静かに除去している。

キム・ウンミ/ソウル大言論情報学科教授



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