◇ディープフェイク拡散に「国際共助必要」

米議会の対応もさらに加速するものとみられる。有名人の性搾取物は氷山の一角であることから、平凡な世界の女性・児童を対象にした無作為のフェイクポルノが横行するのではないかという懸念も高まっているためだ。オランダのサイバーセキュリティー研究会社「ディープトレース」は、２０１９年全世界のディープフェイク動画のうち９６％が女性と児童を狙ったわいせつ物だと指摘したことがある。

ジョー・モレル下院議員（民主党）はデジタルで操作されたポルノイメージを無作為で共有することを連邦犯罪と規定し、懲役刑と罰金を科す法案を通過させるよう求めた。モレル氏は下院法制司法委員会に回付された超党派的法案「Ｐｒｅｖｅｎｔｉｎｇ　Ｄｅｅｐｆａｋｅｓ　ｏｆ　Ｉｎｔｉｍａｔｅ　Ｉｍａｇｅｓ　Ａｃｔ（私的イメージのディープフェイク防止法）」を発議した人物でもある。トム・ケイン・ジュニア下院議員（共和党）も「保護装置が用意される速度よりもＡＩ技術の発展のほうが速い」とし、早急な安全装置用意の必要性に対して声を一つにした。


現在、米国は政府次元でディープフェイク技術を規制するものがない。カリフォルニア・テキサス・イリノイ・ニューヨーク等９州に限り、相手の同意なくディープフェイクイメージを作って共有することを禁じ、合意のないディープフェイクを流布することを刑事犯罪として規定している。

英国の場合、２０２２年に同意なくディープフェイクポルノや性的な写真を共有する行為等を犯罪として規定し、すぐに処罰することができるようにする「オンライン安全法」が用意された。

専門家は女性・児童を標的としたディープフェイク技術が日増しに凶悪化しているにもかかわらず、規制導入の速度が遅々としているとして、国際共助の必要性を強調した。

デジタル性犯罪や女性の人権について研究してきたウェスタン大学のノエル・マーティン研究員は「誰かの人生を台無しにしておきながら何の処罰も受けないのは明らかに問題がある」とし「各国政府や法執行機関、被害者コミュニティが一丸となった『世界的対応』がないといけない」と強調した。インターネットセキュリティー会社「Ｃｅａｒｔａｓ」の創業者ダン・パーセル氏も「インターネットは国境のない一つの管轄圏」としながら「デジタル性搾取から人々を守るための国際法が必要だ」と話した。


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