◇中国の現状維持続くか
米国はウクライナ戦争とイスラエル-ハマス戦争でウクライナとイスラエルを支援している。米国が同時に中国発(または北朝鮮発)東アジア戦争を遂行する能力が不足していると中国が判断すれば、台湾を武力で挑発する可能性は高まるだろう。米国より国力が劣っていた毛沢東時代に、中国は1950年韓国戦争(朝鮮戦争)に介入し、大躍進運動(1958~62年)の混乱渦中にも1962年インドを侵攻した事実を念頭に置かなければならない。米国の強力な抑制のために中国が現状を維持するのではないかという考えに執着すれば致命的な誤判断を犯す恐れがある。
統一を含む台湾の未来は民主・自決の原則により台湾人が選択する事案だ。だが、現実的に中国の力を考慮する場合、台湾は中国との交渉を通じて平和的に未来を決めることが望ましく思える。台湾問題は今や世界の人々が注目するグローバルイシューだ。韓国の国益とも不可分の関係だ。台湾の自由民主主義と市場経済体制が武力によって転覆すれば世界の秩序は荒波にもまれ、韓国の繁栄と安全保障も大きな打撃を受ける可能性がある。
◇両岸全面戦争時には韓国も大きな損失
ブルームバーグ通信によると、台湾海峡で戦争が勃発する場合、グローバル国内総生産(GDP)の10%に該当する約10兆ドル(約1460兆ドル)の天文学的損失が予想される。貿易依存度約75%で世界2位の韓国はグローバル・サプライチェーン(供給網)の再編に伴うリスクで大きな損失を受けるという。韓国の貿易物流量の43%が台湾海峡を通過する。韓国は輸出入貨物の99%を船舶で輸送している。
両岸衝突の最悪シナリオである中国の台湾本島攻撃または全面戦争が起きる場合、中国人民解放軍東部戦区だけでなく北部戦区の一部も参戦するだろうと軍事専門家は展望する。この場合、西海(ソヘ、黄海)や南海の一部海上でも在韓米軍を含む米国の同盟軍と中国軍の衝突の可能性を排除できない。北朝鮮の核・ミサイル脅威に直面した大韓民国の近海が米中の戦場にならないわけがない。
台湾問題に関連し、韓国は責任ある国際社会の一員として役割を果たさなくてはならない。尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領が昨年5月、「力による台湾海峡の現状変更に反対する」と述べたのは、このような趣旨から出たものと考えることができる。両岸の平和と安定のために韓国政府は堂々としながらも精巧な立場を表明する必要がある。このために抑制(Deterrence)と保障(Assurance)を同時に追求しなければならない。
中国の台湾海峡封鎖や戦争を抑制するために、韓国は隣国の友邦たちと共に「力による現状変更反対」の立場を堅持しなければならない。「一つの中国」に基づく平和統一のための過程であり手段として、台湾の防御的軍事力の維持は避けられない。また、台湾の経済的繁栄は国防力の根本だ。したがって台湾の新南向政策をはじめとする自由貿易に国際社会は支持を送らなければならない。経済が枯死すれば台湾の対中抑制力の低下は避けられなくなる。
◇中国の不安解消対策も必要
同時に中国の不安を解消する政策も推進しなければならない。台湾の独立追求による現状変更に対しても韓国は反対の立場を表明しなければならないという意味だ。たとえば台湾独立に向かった手順と疑われかねない国号の変更や「中華民国」国家の廃止などに韓国は懸念の声を出さなければならない。「交渉による現状変更」、すなわち平和統一オプションが依然として存在することを中国側に説得して保障するように努力しなければならない。
われわれは台湾問題に立場を明言できる特別な歴史的経験と名分を持っている。中国が韓国戦争当時に北朝鮮側に立って侵攻し、韓国人は大きな犠牲を払った。韓国は中国に「みじめで虚欲に満ちた武力統一の試みは危険だ」と警告できる道徳的位置にある。
もう一方で、韓国は産業化と民主化を経験した隣国として台湾に当面は現状を維持するように助言することができる。分断の痛みとあわせて、民主主義・市場経済など価値・制度を共有する韓国人は台湾人と同等に疎通できる位置にある。
国民党所属で2008~16年に執権した馬英九前総統はメディアのインタビューで「外国政府が台湾を助ける最高の方法は台湾と本土が平和交渉を通じて戦争を避けるように励ますこと」と述べた。国立台湾大学の黄旻華教授は両岸の民間専門家が参加する「トラックツー」対話がほぼ断絶してしまったとして懸念した。黄氏は台湾や中国本土における両側要人の接触は難しいとしながら、代案として第三国で公信力のある民間機関が対話の場を提供するオプションに言及した。韓国もその候補地になることができる。世界の中心国に浮上した韓国は増大した国力を基に世界平和と繁栄を導く国家として飛躍することができる。堂々とし、精巧な国家戦略を通じてピンチをチャンスにしなければならない。
ソン・インジュ/ソウル大学政治外交学部教授
【コラム】高まった台湾海峡の荒波…韓国が両岸の平和仲裁者になる可能性も(1)
米国はウクライナ戦争とイスラエル-ハマス戦争でウクライナとイスラエルを支援している。米国が同時に中国発(または北朝鮮発)東アジア戦争を遂行する能力が不足していると中国が判断すれば、台湾を武力で挑発する可能性は高まるだろう。米国より国力が劣っていた毛沢東時代に、中国は1950年韓国戦争(朝鮮戦争)に介入し、大躍進運動(1958~62年)の混乱渦中にも1962年インドを侵攻した事実を念頭に置かなければならない。米国の強力な抑制のために中国が現状を維持するのではないかという考えに執着すれば致命的な誤判断を犯す恐れがある。
統一を含む台湾の未来は民主・自決の原則により台湾人が選択する事案だ。だが、現実的に中国の力を考慮する場合、台湾は中国との交渉を通じて平和的に未来を決めることが望ましく思える。台湾問題は今や世界の人々が注目するグローバルイシューだ。韓国の国益とも不可分の関係だ。台湾の自由民主主義と市場経済体制が武力によって転覆すれば世界の秩序は荒波にもまれ、韓国の繁栄と安全保障も大きな打撃を受ける可能性がある。
◇両岸全面戦争時には韓国も大きな損失
ブルームバーグ通信によると、台湾海峡で戦争が勃発する場合、グローバル国内総生産(GDP)の10%に該当する約10兆ドル(約1460兆ドル)の天文学的損失が予想される。貿易依存度約75%で世界2位の韓国はグローバル・サプライチェーン(供給網)の再編に伴うリスクで大きな損失を受けるという。韓国の貿易物流量の43%が台湾海峡を通過する。韓国は輸出入貨物の99%を船舶で輸送している。
両岸衝突の最悪シナリオである中国の台湾本島攻撃または全面戦争が起きる場合、中国人民解放軍東部戦区だけでなく北部戦区の一部も参戦するだろうと軍事専門家は展望する。この場合、西海(ソヘ、黄海)や南海の一部海上でも在韓米軍を含む米国の同盟軍と中国軍の衝突の可能性を排除できない。北朝鮮の核・ミサイル脅威に直面した大韓民国の近海が米中の戦場にならないわけがない。
台湾問題に関連し、韓国は責任ある国際社会の一員として役割を果たさなくてはならない。尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領が昨年5月、「力による台湾海峡の現状変更に反対する」と述べたのは、このような趣旨から出たものと考えることができる。両岸の平和と安定のために韓国政府は堂々としながらも精巧な立場を表明する必要がある。このために抑制(Deterrence)と保障(Assurance)を同時に追求しなければならない。
中国の台湾海峡封鎖や戦争を抑制するために、韓国は隣国の友邦たちと共に「力による現状変更反対」の立場を堅持しなければならない。「一つの中国」に基づく平和統一のための過程であり手段として、台湾の防御的軍事力の維持は避けられない。また、台湾の経済的繁栄は国防力の根本だ。したがって台湾の新南向政策をはじめとする自由貿易に国際社会は支持を送らなければならない。経済が枯死すれば台湾の対中抑制力の低下は避けられなくなる。
◇中国の不安解消対策も必要
同時に中国の不安を解消する政策も推進しなければならない。台湾の独立追求による現状変更に対しても韓国は反対の立場を表明しなければならないという意味だ。たとえば台湾独立に向かった手順と疑われかねない国号の変更や「中華民国」国家の廃止などに韓国は懸念の声を出さなければならない。「交渉による現状変更」、すなわち平和統一オプションが依然として存在することを中国側に説得して保障するように努力しなければならない。
われわれは台湾問題に立場を明言できる特別な歴史的経験と名分を持っている。中国が韓国戦争当時に北朝鮮側に立って侵攻し、韓国人は大きな犠牲を払った。韓国は中国に「みじめで虚欲に満ちた武力統一の試みは危険だ」と警告できる道徳的位置にある。
もう一方で、韓国は産業化と民主化を経験した隣国として台湾に当面は現状を維持するように助言することができる。分断の痛みとあわせて、民主主義・市場経済など価値・制度を共有する韓国人は台湾人と同等に疎通できる位置にある。
国民党所属で2008~16年に執権した馬英九前総統はメディアのインタビューで「外国政府が台湾を助ける最高の方法は台湾と本土が平和交渉を通じて戦争を避けるように励ますこと」と述べた。国立台湾大学の黄旻華教授は両岸の民間専門家が参加する「トラックツー」対話がほぼ断絶してしまったとして懸念した。黄氏は台湾や中国本土における両側要人の接触は難しいとしながら、代案として第三国で公信力のある民間機関が対話の場を提供するオプションに言及した。韓国もその候補地になることができる。世界の中心国に浮上した韓国は増大した国力を基に世界平和と繁栄を導く国家として飛躍することができる。堂々とし、精巧な国家戦略を通じてピンチをチャンスにしなければならない。
ソン・インジュ/ソウル大学政治外交学部教授
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