◇トランプ登場時は国際秩序に危機も
「規則による国際秩序が崩壊して、西側が弱まるのは大きな危機です」。ラトビアのエギルス・レヴィッツ前大統領はティーカップを下ろしながら低めの声でこのように第一声を発した。レヴィッツ氏は2004年から2019年まで欧州司法裁判官を歴任し、昨年夏に大統領を退任した後もラトビア国際法特別代表を務めている。元老政治家であり法曹人である彼の目には力の政治に帰還していくグローバル地政学がさらなる危機として近づく。国際秩序のルールが崩壊した場合、最も大きな被害を受けることになるのは地政学的断層帯に位置する弱小国だ。価値と原則は強大国の専有物ではなく、むしろこれらの国々とってもっとさらに切実な生存の手段になる。
「もし米国でトランプ大統領のような指導者が再び登場すれば、本当に危機が来るかもしれません」。2023年NATO首脳会議を主管したリトアニアで会った複数の専門家は強い危機感を表した。米国が孤立主義に進み、各自生き残りの国際秩序が繰り広げられるなら、欧州とNATOの凝集力は弱まり、中国とロシアは相対的に西側の分裂という政治的目標を簡単に達成して影響力を大きくするかもしれないという懸念がより鮮明になっている。
台湾と国交を正常化して中国との外交的関係を断絶してから、リトアニアは執拗な中国の報復に直面している。経済的依存は相対的に小さかったが、中国はリトアニアが関連したほぼすべてのグローバルビジネスにブレーキをかけている。だが、リトアニアはウクライナ戦でロシア側に立った中国をパートナーとして受け入れたいとは思っておらず、そのリスクを甘受して対決の最前線に立っている。米国と西側が不安定になればそれだけ難しい状況に置かれるだろう。その懸念は韓国と日本も共有している。2024年ユーラシア地政学の二つの最前線に投じられた最大の脅威はプーチンか、トランプか。どちらも選べない質問が投じられる。
◇グローバル安保談論の形成に積極的に乗り出してこそ
バルト3国、そしてフィンランドより韓国ははるかに規模が大きな国だ。経済力にしろ軍事力にしろ、国際社会でより多くの役割を果たすことができる行為者だ。だが、中国・ロシア・北朝鮮を同時に相手にしなければならない地政学的構図と重さは欧州地政学の最前線に置かれた上記の国々と大きく違わない。「韓国がわれわれとより多くの対話をするよう望みます。われわれは共有できる議題が多くあります」。出張中に会ったバルト3国の政策決定者や専門家は口をそろえる。韓国の防衛産業に対しても大きな関心を向けている。「バルチック安保会議」や「リガ・カンファレンス」のようなこの地域の安保多国間対話機構にも韓国はもっと視線を転じる必要がある。日本はすでにかなり深く関与してきた。
ウクライナ戦争は韓国がこれまで注視できなかった新たな軍事、経済安保の場を開いた。ウクライナ、イスラエル、そして北東アジアでの同時多発的葛藤と地政学と地形学、技術競争が複雑に絡み合った新たな国際秩序は一つの危機がある地域だけに限らず、互いに関連していることを示している。不確実性が急速に拡散している国際秩序で相手の善意に対する漠然とした期待とロマンチックな予測は禁物だ。辛い歴史は繰り返されやすく、希望混じりの期待が実現することはほぼない。それが地政学の宿命だ。
中立の時代は過ぎつつある。同盟の強化を外交の中心軸に据えて周辺国と何重もの二者間、多国間関係を張り巡らせて交渉力を高めなければならない。グローバル安保とルール形成の談論にももっと積極的に介入しなければならない。それでこそ韓半島問題の解決策に対してもより多くの支持を引き出すことができる。同じような安保地形に囲まれているNATOの最前線から韓国を見つめる。韓国が冷厳な北東アジア地政学で生き残るためには韓半島を抜け出した、もっと広い視野からグローバル安保行為者にならなければならない。今やわれわれはそのような力量を備えており、そのような時期が来てもいる。
イ・ジェスン/高麗(コリョ)大学国際学部教授、イルミン国際関係研究院長
【コラム】NATO最前線で見た韓半島…同盟の重要性を思い出すべき=韓国(1)
「規則による国際秩序が崩壊して、西側が弱まるのは大きな危機です」。ラトビアのエギルス・レヴィッツ前大統領はティーカップを下ろしながら低めの声でこのように第一声を発した。レヴィッツ氏は2004年から2019年まで欧州司法裁判官を歴任し、昨年夏に大統領を退任した後もラトビア国際法特別代表を務めている。元老政治家であり法曹人である彼の目には力の政治に帰還していくグローバル地政学がさらなる危機として近づく。国際秩序のルールが崩壊した場合、最も大きな被害を受けることになるのは地政学的断層帯に位置する弱小国だ。価値と原則は強大国の専有物ではなく、むしろこれらの国々とってもっとさらに切実な生存の手段になる。
「もし米国でトランプ大統領のような指導者が再び登場すれば、本当に危機が来るかもしれません」。2023年NATO首脳会議を主管したリトアニアで会った複数の専門家は強い危機感を表した。米国が孤立主義に進み、各自生き残りの国際秩序が繰り広げられるなら、欧州とNATOの凝集力は弱まり、中国とロシアは相対的に西側の分裂という政治的目標を簡単に達成して影響力を大きくするかもしれないという懸念がより鮮明になっている。
台湾と国交を正常化して中国との外交的関係を断絶してから、リトアニアは執拗な中国の報復に直面している。経済的依存は相対的に小さかったが、中国はリトアニアが関連したほぼすべてのグローバルビジネスにブレーキをかけている。だが、リトアニアはウクライナ戦でロシア側に立った中国をパートナーとして受け入れたいとは思っておらず、そのリスクを甘受して対決の最前線に立っている。米国と西側が不安定になればそれだけ難しい状況に置かれるだろう。その懸念は韓国と日本も共有している。2024年ユーラシア地政学の二つの最前線に投じられた最大の脅威はプーチンか、トランプか。どちらも選べない質問が投じられる。
◇グローバル安保談論の形成に積極的に乗り出してこそ
バルト3国、そしてフィンランドより韓国ははるかに規模が大きな国だ。経済力にしろ軍事力にしろ、国際社会でより多くの役割を果たすことができる行為者だ。だが、中国・ロシア・北朝鮮を同時に相手にしなければならない地政学的構図と重さは欧州地政学の最前線に置かれた上記の国々と大きく違わない。「韓国がわれわれとより多くの対話をするよう望みます。われわれは共有できる議題が多くあります」。出張中に会ったバルト3国の政策決定者や専門家は口をそろえる。韓国の防衛産業に対しても大きな関心を向けている。「バルチック安保会議」や「リガ・カンファレンス」のようなこの地域の安保多国間対話機構にも韓国はもっと視線を転じる必要がある。日本はすでにかなり深く関与してきた。
ウクライナ戦争は韓国がこれまで注視できなかった新たな軍事、経済安保の場を開いた。ウクライナ、イスラエル、そして北東アジアでの同時多発的葛藤と地政学と地形学、技術競争が複雑に絡み合った新たな国際秩序は一つの危機がある地域だけに限らず、互いに関連していることを示している。不確実性が急速に拡散している国際秩序で相手の善意に対する漠然とした期待とロマンチックな予測は禁物だ。辛い歴史は繰り返されやすく、希望混じりの期待が実現することはほぼない。それが地政学の宿命だ。
中立の時代は過ぎつつある。同盟の強化を外交の中心軸に据えて周辺国と何重もの二者間、多国間関係を張り巡らせて交渉力を高めなければならない。グローバル安保とルール形成の談論にももっと積極的に介入しなければならない。それでこそ韓半島問題の解決策に対してもより多くの支持を引き出すことができる。同じような安保地形に囲まれているNATOの最前線から韓国を見つめる。韓国が冷厳な北東アジア地政学で生き残るためには韓半島を抜け出した、もっと広い視野からグローバル安保行為者にならなければならない。今やわれわれはそのような力量を備えており、そのような時期が来てもいる。
イ・ジェスン/高麗(コリョ)大学国際学部教授、イルミン国際関係研究院長
【コラム】NATO最前線で見た韓半島…同盟の重要性を思い出すべき=韓国(1)
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