米プロフットボール（ＮＦＬ）アトランタ・ファルコンズで活躍する韓国系スター、ク・ヨンフェ（２９）が「最高のキッカー」に挑戦する。

米ワシントンポストは最近「賢いキッカーが活躍する時代」と題した特集記事を掲載し、ク・ヨンフェの活躍を集中的に紹介した。そして「フィールドゴールの正確度が高まり、キッカーが勝敗に及ぼす影響が大きくなった」と分析した。

同紙がク・ヨンフェの活躍を取り上げたのは、リーグトップ級どころか史上最も偉大なキッカーに挑戦中であるからだ。ＮＦＬ個人通算８９．１％（７４試合）のフィールドゴール成功率を誇るク・ヨンフェは同部門で歴代３位だ。歴代最高キッカーの座をク・ヨンフェ、ジャスティン・タッカー（３４、ボルティモア・レイブンズ）、ハリソン・バッカー（２８、カンザスシティ・チーフス）の３選手が激しく競争している。現在１位はタッカー（９０％、１９１試合）、２位がバッカー（８９．５％、１０３試合）で、ク・ヨンフェとの差はそれぞれ０．９％ポイント、０．４％ポイントにすぎない。次の試合でタッカーやバッカーがフィールドゴールを１、２回失敗してク・ヨンフェが成功すれば、順位が入れ替わることもある差だ。今季のク・ヨンフェのフィールドゴール成功率は８９．３％（２８回中２５回成功）。半面、デビュー１３年目のベテラン、タッカーは今季８２．８％（２９回中２４回成功）で停滞している。ク・ヨンフェが今シーズン内にフィールドゴール成功率１位になる可能性が高い。


現地メディアはク・ヨンフェを「アメリカンドリーム」をつかんだ選手と紹介した。ク・ヨンフェのＮＦＬ定着ストーリーは一つの「逆転ドラマ」だ。１９９４年にソウルで生まれたク・ヨンフェは１２歳だった２００６年、米ニュージャージー州に移住した。韓国ではサッカー選手を夢見ていた。米国の中学校に進学した後、ク・ヨンフェのシュート力を見た友人が「奨学金を受けて大学に行くことができる」としてアメリカンフットボールを勧めた。ＮＦＬホームページは「ク・ヨンフェは英語を習う前にアメリカンフットボールから習った」と紹介した。ク・ヨンフェはその後、ジョージアサザン大学に進学した。

ク・ヨンフェは２０１７年、ロサンゼルス・チャージャーズに入団し、韓国出身の初のＮＦＬ選手になった。しかし成績不振でわずか１カ月で放出された。その後も挫折せずに技術を磨いたク・ヨンフェは２０１９年、アトランタで最高のキッカーに生まれ変わった。ク・ヨンフェは「放出された後もあきらめなかった。むしろモチベーションにした。二度と同じことを繰り返さないように努力した」と振り返った。

２０１９シーズンにアトランタで２３本のフィールドゴール（成功率８８．５％）に成功したク・ヨンフェは２０２０シーズンにはトップ級キッカーになった。フィールドゴール成功率９４．９％をマークし、生涯初めてプロボウル（オールスター戦）に選ばれた。２０２１シーズンにもフィールドゴール成功率９３．１％と大活躍した。するとアトランタ球団が先に再契約を提案した。ク・ヨンフェは２０２２年３月、アトランタ・ファルコンズと５年・２４２５万ドル（約３２０億ウォン）でサインした。キッカーとしては７番目に多い金額だ。

ク・ヨンフェはＬＡチャージャーズ時代まで韓国国籍を保有していたが、現在は米国国籍だ。ＮＦＬでアジア選手は外国人扱いを受ける。人種差別も存在する。身長１７５センチと体格が小さいク・ヨンフェは「フィールドに出るたびに防具をつける」という。ク・ヨンフェは「最初は英語もフットボールも分からなかった。目標を立てて頑張れば誰でも夢を叶えることができる」と話した。

ク・ヨンフェは自分のルーツを忘れないよう努めている。名前もハングル名のアルファベット表記「ＹＯＵＮＧＨＯＥ　ＫＯＯ」をそのまま使用している。チャンチククス（温麺）やサムギョプサルなど韓国料理を好み、韓国のサッカースター孫興ミン（ソン・フンミン）のファンだ。

ク・ヨンフェは「アメリカンフットボールでアメリカンドリームをつかんだ」としながらも「これは終わりでなく始まりにすぎない。記録の競争は意識しない。優秀な選手との競争を楽しみながら一段階さらに発展するのが目標」と語った。

◆ク・ヨンフェ

生年月日：１９９４年８月３日（ソウル生まれ、米国国籍）

体格：１７５センチ、８４キロ

所属：アトランタ・ファルコンズ

ポジション：キッカー

主要経歴：２０２０シーズン１４４得点（球団新記録）、プロボウル（オールスター）、

２０２３シーズン記録：フィールドゴール成功率８９．３％（２８回中２５回成功）

通算記録：フィールドゴール成功率８９．１％（１６５回中１４７回成功）

好きな食べ物：チャンチククス（温麺）