米国大統領選挙まで残り1年となった。トランプ前大統領が当選する可能性もある。現在、トランプの全国的な支持度はバイデン大統領より少し高く、競合州でも優位に立つ。もちろんトランプには司法リスクがあり、極端な性向に対する懸念は今も残る。バイデンにも健康問題、インフレなどの弱点がある。トランプの当選の可能性は50%にはなると見るべきだろう。
トランプが大統領だった当時、彼は偏った主張を政策として強行することが多かった。今のトランプは怒りと復讐心に満ちていて、自分のやり方でしようという思いが強い。トランプ陣営の側近参謀はトランプ1期目には既得勢力の「ディープステート(Deep State、隠れた権力集団)」によりトランプの「斬新」な政策が挫折した事例が多かったと考えている。彼らの目には、ケリー秘書室長、ティラーソン国務長官、マティス国防長官、ボルトン安保補佐官らが妨害者だ。参謀らはトランプ2期目には「ディープステート」の妨害を防ぐ案を人事と運営の側面で用意しようと腐心している。トランプが再執権すれば、彼はより極端な政策をより強く進めると思われる。引き止めるような人物は最初から起用しないだろう。
このため、トランプが当選する場合に韓国の外交が直面する変化を考えることは無駄ではない。米大統領選の時期に任期の折り返し点を迎える韓国の尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権は任期後半部をトランプ政権と共にして変化に対応しなければいけない。
まず変わるの同盟の連携レベルだ。トランプの米国優先主義や同盟軽視がさらに深刻になるからだ。こうした雰囲気はNATO(北大西洋条約機構)から韓米同盟にいたるまでマイナスの影響を及ぼすだろう。韓米間では連合訓練、戦略資産、防衛費など同盟の運用をめぐる議論が増えるはずだ。根本的に米軍撤収または縮小の主張が出てくる可能性も排除できない。
その間、尹錫悦政権は対外政策の根幹を同盟強化に置いて、バイデン政権と拡大抑止強化、韓米日安保協力およびNATOとの協力強化に取り組んできた。こうした尹錫悦政権としてはトランプが同盟を新たに規定して韓米連携のトーンを変える場合、巨視的な側面で政策の哲学と基調を再調整するべきかという難しい状況を迎えることが予想される。また、トランプ発の同盟関連議論に対処しなければならない微視的な側面の負担も抱えることになるだろう。
さらに注目すべき点は、米国の拡大抑止に対する信頼度が落ちる可能性だ。米国優先主義に傾倒したトランプが米国に対する核攻撃を覚悟してまで韓国に核の傘を提供するだろうかという疑問が強まる。トランプが拡大抑止について否定的な発言でもすれば、韓米がしてきた拡大抑止強化努力は大きな打撃を受ける。その反作用として韓国国内で核武装論が再浮上する可能性がある。そのような雰囲気が続いて次期大統領選挙では核武装論がイシューになることも考えられる。
2つ目の変化は米朝関係だ。いま北朝鮮は米大統領選に注目している。北朝鮮はトランプの当選を望み、当選すれば金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長は祝いの親書を送るだろう。これにトランプが応じないことは考えにくい。両者はすでに数十回も、いわゆる「ラブレター」を交わした。トランプは自分が執権していれば今のような北朝鮮問題をめぐる対決状況はなかったと豪語する。米朝間で接触が再開することが予想される。半面、北朝鮮は韓国との対話を避ける可能性が高い。また米朝首脳会談が開催されることもあり得る。
韓米同盟が緩んで南北対話が断絶した中で再開される米朝対話は難題になる。韓半島(朝鮮半島)問題の議論で韓国が排除されるのは決して望ましくない。同盟を軽視するトランプが韓国の問題を北朝鮮と交渉する状況は安心できない。
3つ目は、米中の対立がさらに激しくなり、韓国の負担が増えることだ。バイデン時代の「小さな庭、高いフェンス(Small Yard, High Fence)」流の節制された接近は退潮し、対決領域が拡大して牽制の壁も高まるとみられる。米中関係がデリスキング(リスク回避)を越えて事実上デカップリングに入ることも考えられる。トランプ政権は同盟に対する配慮を減らし、同盟を対中国牽制に動員するための圧力は強めるだろう。韓国が半導体やバッテリーに関連してバイデン政権から苦労して確保した空間が縮小するかもしれない。またトランプの米国中心保護主義政策が韓国経済に打撃を与えることが予想される。
このようにトランプの執権は可能性の領域であり、その波紋が大きくなるため、対応が必要だ。特に同盟、北朝鮮、中国関連の対策が重要となる。同盟に関しては、連携が一定ライン以下に弱まってはならず、拡大抑止に対する疑問が極端な政策選択につながってはいけない。韓国が排除された韓半島問題の交渉があってはいけない。韓国が米中対立の間で過度な打撃を受けてはいけない。今はこのような目標を念頭に置いた対策を研究し、世論を形成し始める時だと考える。
魏聖洛(ウィ・ソンラク)/元韓半島平和交渉本部長/リセットコリア外交安保分科長
トランプが大統領だった当時、彼は偏った主張を政策として強行することが多かった。今のトランプは怒りと復讐心に満ちていて、自分のやり方でしようという思いが強い。トランプ陣営の側近参謀はトランプ1期目には既得勢力の「ディープステート(Deep State、隠れた権力集団)」によりトランプの「斬新」な政策が挫折した事例が多かったと考えている。彼らの目には、ケリー秘書室長、ティラーソン国務長官、マティス国防長官、ボルトン安保補佐官らが妨害者だ。参謀らはトランプ2期目には「ディープステート」の妨害を防ぐ案を人事と運営の側面で用意しようと腐心している。トランプが再執権すれば、彼はより極端な政策をより強く進めると思われる。引き止めるような人物は最初から起用しないだろう。
このため、トランプが当選する場合に韓国の外交が直面する変化を考えることは無駄ではない。米大統領選の時期に任期の折り返し点を迎える韓国の尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権は任期後半部をトランプ政権と共にして変化に対応しなければいけない。
まず変わるの同盟の連携レベルだ。トランプの米国優先主義や同盟軽視がさらに深刻になるからだ。こうした雰囲気はNATO(北大西洋条約機構)から韓米同盟にいたるまでマイナスの影響を及ぼすだろう。韓米間では連合訓練、戦略資産、防衛費など同盟の運用をめぐる議論が増えるはずだ。根本的に米軍撤収または縮小の主張が出てくる可能性も排除できない。
その間、尹錫悦政権は対外政策の根幹を同盟強化に置いて、バイデン政権と拡大抑止強化、韓米日安保協力およびNATOとの協力強化に取り組んできた。こうした尹錫悦政権としてはトランプが同盟を新たに規定して韓米連携のトーンを変える場合、巨視的な側面で政策の哲学と基調を再調整するべきかという難しい状況を迎えることが予想される。また、トランプ発の同盟関連議論に対処しなければならない微視的な側面の負担も抱えることになるだろう。
さらに注目すべき点は、米国の拡大抑止に対する信頼度が落ちる可能性だ。米国優先主義に傾倒したトランプが米国に対する核攻撃を覚悟してまで韓国に核の傘を提供するだろうかという疑問が強まる。トランプが拡大抑止について否定的な発言でもすれば、韓米がしてきた拡大抑止強化努力は大きな打撃を受ける。その反作用として韓国国内で核武装論が再浮上する可能性がある。そのような雰囲気が続いて次期大統領選挙では核武装論がイシューになることも考えられる。
2つ目の変化は米朝関係だ。いま北朝鮮は米大統領選に注目している。北朝鮮はトランプの当選を望み、当選すれば金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長は祝いの親書を送るだろう。これにトランプが応じないことは考えにくい。両者はすでに数十回も、いわゆる「ラブレター」を交わした。トランプは自分が執権していれば今のような北朝鮮問題をめぐる対決状況はなかったと豪語する。米朝間で接触が再開することが予想される。半面、北朝鮮は韓国との対話を避ける可能性が高い。また米朝首脳会談が開催されることもあり得る。
韓米同盟が緩んで南北対話が断絶した中で再開される米朝対話は難題になる。韓半島(朝鮮半島)問題の議論で韓国が排除されるのは決して望ましくない。同盟を軽視するトランプが韓国の問題を北朝鮮と交渉する状況は安心できない。
3つ目は、米中の対立がさらに激しくなり、韓国の負担が増えることだ。バイデン時代の「小さな庭、高いフェンス(Small Yard, High Fence)」流の節制された接近は退潮し、対決領域が拡大して牽制の壁も高まるとみられる。米中関係がデリスキング(リスク回避)を越えて事実上デカップリングに入ることも考えられる。トランプ政権は同盟に対する配慮を減らし、同盟を対中国牽制に動員するための圧力は強めるだろう。韓国が半導体やバッテリーに関連してバイデン政権から苦労して確保した空間が縮小するかもしれない。またトランプの米国中心保護主義政策が韓国経済に打撃を与えることが予想される。
このようにトランプの執権は可能性の領域であり、その波紋が大きくなるため、対応が必要だ。特に同盟、北朝鮮、中国関連の対策が重要となる。同盟に関しては、連携が一定ライン以下に弱まってはならず、拡大抑止に対する疑問が極端な政策選択につながってはいけない。韓国が排除された韓半島問題の交渉があってはいけない。韓国が米中対立の間で過度な打撃を受けてはいけない。今はこのような目標を念頭に置いた対策を研究し、世論を形成し始める時だと考える。
魏聖洛(ウィ・ソンラク)/元韓半島平和交渉本部長/リセットコリア外交安保分科長
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