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<ヒョンデ研究>口を閉ざしていた役員が変わった…鄭義宣がイーロン・マスクより強い理由(1)

ⓒ 中央日報/中央日報日本語版

鄭夢九名誉会長。[写真 ヒョンデ]

数年前に米カリフォルニア州で最高の学区に挙げられるパロアルトのアディソン小学校1年生を対象にアンケート調査をしました。「将来どんな自動車に乗りたいか」と尋ねました。1位はグーグル、2位はアップルでした。これはどういう意味でしょう。

6月、ソウルの延世(ヨンセ)大学経営館講義室。現代自動車グループのブランド戦略について評価してほしいという質問に、延世大学経営学科のイ・ムウォン教授はすぐこのように問い直した。

◇最も乗りたい車が「グーグルカー」?


イ教授は世界的競争戦略研究の大家と呼ばれる米スタンフォード大学経営大学院(MBA)のウィリアム・バーネット教授とともに「ブランド価値の向上」と題した特別講義でヒョンデ(2003年)のケーススタディ教材を執筆した。米国の有名大学で韓国企業の経営事例を主題に授業を進めたのはこの時が初めてだった。

当時スタンフォード大学教授と博士課程の学生として出会った2人の関係は、昨年「現代自動車グループ、ファーストフォロワーからゲームチェンジャーに」の共同執筆につながった。この論文はスタンフォード大学MBAケースセンターに公式登録された。

イ教授は「ゲームチェンジャー(市場の流れを変える革新企業)」として最も重要な価値が「未来の顧客にどれだけ露出し、どのようにアピールするか」と強調する。米国の小学生の事例を取り上げた理由がここにある。

子どもたちは代表的な未来の顧客であるためです。これ以上自動車メーカーの販売実績だけが評価の指標になることにはならないという意味です。それなら子どもたちはなぜIT企業の自動車に興味を感じるのでしょうか? 自動車に乗ればグーグルやアップルと連動したデバイスを楽しめるためです。そのため「将来グーグルカーかアップルカーを買いたい」と話すのです。

テスラやBMWのような企業も言及された。イ教授は「テスラだけを好む人たちがいる。またBMWだけに固執するファンもいる。それが販売実績とは異なるブランド価値だ。いまや評価の基準は複合的な次元に進化した」と話す。自動車と言えば当然「品質」と「世界販売実績」で評価していたものが、そのものさしと目線が完全に変わったという意味だ。

◇「ヒョンデがトヨタより賢い…顧客を知っている」

イ教授の言葉のように「ブランド価値」はこの20年間で自動車を評価する主要指標に浮上した。こうした観点からヒョンデに初めて注目した人物は「現代ブランド理論の父」と呼ばれる米カリフォルニア大学バークレー校ハース・スクール・オブ・ビジネスのデービッド・アーカー教授だった。アーカー教授は2011年に韓国メディアとのインタビューでヒョンデについて「賢い」と評価した。ヒョンデがゼロに近かった米国市場でのシェアを引き上げた秘訣はトヨタより品質が卓越していたからではなくブランド戦略の力というのが彼の分析だ。

代表的なマーケティング戦略が常識を破壊したアフターサービス政策だ。ヒョンデは1999年、「10年・10万マイルワランティ(保証修理)」という戦略で品質問題を正面突破した。こうした破格なサービスを提示したのは世界の自動車メーカーで現代自動車グループが初めてだった。アーカー教授はこれに対し「顧客の頭の中に『ヒョンデ=品質保障』を刻印させる契機になった」と指摘した。

要するに競争者を破ることによって勝利したのでなく、「革新的アフターサービス」という消費者に絶対に必要なキーワードを掲げて自動車を選択する優先順位を変えたと分析される。ヒョンデは米国で1998年に9万217台を売ったが、「10年・10万マイル」を掲げて翌年は16万4190台を売った。その後2000年に24万4391台、2001年に34万6235台など加速度がついた。

アーカー教授は新車を買ってから1年以内に失業したら車を買い戻すと破格の宣言をした「アシュアランスプログラム」(2009年)にも言及した。2008年に世界的金融危機が押し寄せてくるとヒョンデが出したマーケティング戦略だ。失業寒波が襲い主要企業が米国を含む世界市場で苦戦した。だが2%台で推移していたヒョンデの米国市場でのシェアは2009年4.2%と大きく伸びた。

『トヨタVS現代 トヨタがGMになる前に』(2011年)を書いた早稲田大学の小林英夫名誉教授はこれに対し、それは危険な賭けではなく『妙手』だったと絶賛した。実際に日本の自動車調査会社フォーインによると、最近米国で売れた自動車74万台のうち払い戻しされた車はわずか100台ほどだった。割合では0.01%にとどまる。米国人は実際に失業しても職を求める時には車に乗って動かなければならないほど自動車が暮らしに必須だ。現実として自動車を払い戻す人はほとんどないという意味だ。

◇日本の自動車専門家も「100%払い戻しは妙手」と評価

ただブランド戦略は品質という「内面の空白」から始まる。バーネット教授とイ・ムウォン教授(当時は博士課程)がヒョンデに初めて注目した2003年以前だけでもヒョンデは「崖っぷちに立った会社」だった。ヒョンデ米国法人代表を務めたフィンバー・オニール氏でさえ「もしかするとわからないので弁護士免許を保険として維持した」(ニューズウイークとのインタビュー)と回顧するほどだった。

そんなヒョンデが一気に1.5流ぐらいに浮上した根幹には「品質戦略」があった。圧倒的な刷新には圧倒的リーダーシップがあるものだ。いずれも2003年のヒョンデ事例研究に登場する話だ。事例研究の中で匿名の勤続11年目のヒョンデ社員は「鄭夢九(チョン・モング)会長(現名誉会長)の決定に異議を提起する人は翌日に解雇される覚悟をしなければならなかった」と打ち明けた。「だれも彼の指示に異議を提起したことがなく、別の意見を提示すること自体が不可能な構造だった」という。

帝王的リーダーシップという批判を受けたがこうしたカリスマ経営の成果は輝かしかった。彼は「こうした強力な推進力がなかったならば日本、米国、欧州の自動車メーカーと肩を並べるのにさらに長い時間が必要だっただろう」と話した。「鄭夢九式ブルドーザーリーダーシップ」が「品質」と「販売台数」が強調された時代的状況とうまく合致したということだ。

続くイ教授の説明だ。「典型的なファーストフォロワー(新技術早く追いかける追従者戦略)の姿です。当時はオーナー経営者が構想する品質や世界販売台数が『正解』だったためトップダウン式でスピーディに推進する意志決定が重要でした。実際にこうした方式が功を奏したとみられます」。

◇「いまは完全に違う…曖昧さが必要な時代」

いなはどうだろうか。イ教授は「いまは曖昧さがビジョン」という予想外の診断を出した。時代精神が「革新」である時代、言葉通りあらゆることを完全に変え新しくしなければならないため「曖昧さの美学」が必要という話だ。

これはこの20年間ヒョンデを研究してきたバーネット教授の洞察ともかみ合っている。バーネット教授は7月27日の中央日報とのインタビューでも「リーダーは愚かさと失敗を許容しなければならない。それでこそ構成員が天才的才能を発揮し、会社は革新を成し遂げることができる」と断言した。2人は「ゲームチェンジャー」論文(2022年)で「ヒョンデはゲームチェンジャーになるため文化的DNAを変えるために努力中。核心的な要素は柔軟性」と指摘した。



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