先月16日、ベルギーのブリュッセルにある欧州委員会本部ビル。ユン・サンオン記者
◇米・英・EUの三つ巴
自国にビッグテック企業がないEUはどこよりも早く2021年からAI規制法案を準備してきた。6月にはチャットGPTのような生成AI技術を4段階のリスクに分けて規制する内容のAI法草案が欧州議会を通過した。
先月16日にブリュッセルの欧州委員会本部で中央日報と会ったマウリッツ・ヤン・プリンズAI技術特別顧問は「EUの価値に合致するAIだけでなく、大企業とスタートアップが公正競争するにはAI法が絶対に必要だ。規制が明確になってこそ(EU加盟国の)AIスタートアップの競争力も良くなるだろう」と話した。彼は年内の確定を目標にAI法の詳しい内容を調整している。
英国は1日にAI安全サミットを開催し、G7を含む28カ国から安全なAIに向け協力するという「ブレッチリー宣言」を引き出した。特にスナク英首相は自国内の反対にも会談に中国代表の招請を強行したという。陣営を超え「世界のAI仲裁者」になるという抱負だ。一方、英国はAI、次世代スーパーコンピュータ、量子コンピューティング研究などに総額15億ポンド(約2782億円)を投じることにした。技術まで備えた審判でEUと差を付けたいという計算だ。
多くのAI企業を保有する米国は「自国企業保護」に力を入れる。先月30日にバイデン米大統領はAIサービス開発とサービスを統制する内容の大統領令に署名した。骨子は企業がAIの安定性試験結果を政府に報告するようにしたものだが、特定規模以上の巨大AIモデルにだけ適用される。ビッグテックには規制の不確実性をなくし、規模が小さいAIスタートアップは規制を免れた。大統領令に対しビッグテックは「AI技術ガバナンスで重要な進展」(マイクロソフト)、「政府と協力し、さらに速く安全な方式でAI潜在力を最大化したい」(グーグル)として一斉に歓迎した。
◇韓国、「デジタル秩序」から「AI秩序」も
韓国は来年5月にAIサミットの後続に当たるミニサミットを英国と共同主催する。世界的な主導権を確保する機会であるだけに、規制にもさらに戦略的なアプローチが必要という指摘が出る。先月科学技術情報通信部が発表した「デジタル権利章典」はデジタル規範秩序を盛り込んだ宣伝的内容であり、「AI産業育成と信頼基盤造成などに関する法律案」は国会に係留中だ。
ネイバークラウドAIイノベーションセンター長のハ・ジョンウ氏は「韓国が公共領域でAIによりどのように安全性を確保したのかなどの事例を共有し国際社会で発言権を拡大できる」と話した。巨大言語モデル(LLM)を評価できる技術(LLMベンチマーク)を韓国が主導しようという声もある。韓国政府の「LLM信頼性ベンチマークデータ事業」に参加しているAI企業セレクトスターのファン・ミニョン副代表は「LLMの倫理・安全性評価はまだ国際標準がなく韓国が先導できる」と話す。KAISTキム・ジェチョルAI大学院のチェ・ジェシク教授は「人の生命と財産に大きな影響を及ぼす国防、医療、製造技術AIなどは徹底した国家検証が必要な産業になるだろう」と話した。
◇AI研究界「基盤技術規制ではなく活用に規制を」
AI技術業界は各国政府の規制競争に、場合によっては「一括規制」に流れないか懸念する。オープンAIの首席政策諮問を務めるトロント大学法学部のジリアン・ハドフィールド教授は中央日報に「すべてのAIを規制するのは経済全体を規制するということと同じ」と話した。技術そのものを規制するのではなく、技術が悪用されないよう活用を規制しなければならないということだ。
この記事を読んで…