2018アジア競技大会ジャカルタ-パレンバン大会出場を控えて訓練中の元フェンシング韓国女子代表ナム・ヒョンヒさん。中央フォト
少なくとも19億ウォン(約2億2000万円)を騙し取った容疑で拘束された詐欺犯を巡って全国民が笑って騒いで、チョン氏が詐欺を働くときに使ったという「I am」話法まで真似しているが、国際舞台で数多くのメダルを獲得したナムさん自身にとっては果てしなく過酷だということだ。チョン・チョンジョ氏は完全に偽物だが、ナム・ヒョンヒさんは血・汗・涙でメダルを獲得した本物の国家代表ではなかったか。
ナムさんの華やかなSNSを非難の理由だと指摘する者もいる。ただコーヒーを飲んでいるかのような、ソファに横になって寝ているかのようにみえるが、ナムさんが投稿した写真の隅々にはブランド品カバンや時計、ネックレスが精巧なアウトフォーカシングと重なったさまざまな構図の中に置かれている。虚栄にあふれているナムさんのアカウントにはチョン氏がプレゼントしたというブランド品で飾られていた。ナムさんはベントレーの車両を含めたブランド品40種余りを警察に提出して所有権を放棄した。あまりにも自慢しすぎた罪。ナムさんがここから抜け出そうとしているのは明らかだ。
大韓民国の少子化はSNSの虚勢のせいだというイルタ(一流トップスター)講師の主張が共感を形成する社会で、ナムさんに対する非難が逆説的だという考えに至る。詐欺師が詐欺で集めた金で買ったブランド品を自慢したことは問題だが、ナムさんの虚栄そのものを指摘して告訴しろという声も相当あるからだ。ナムさんが共有した写真と同じようなブランド品写真はSNSを少し検索するだけでも数千、数万枚がヒットする。多くの人々がそれぞれの場所で最善を尽くして、自慢のような、自慢ではない自慢をしながら、「いいね」とフォロワーを獲得していくというのが大韓民国の日常風景ではなかったか。
「チョン・チョンジョ-ナム・ヒョンヒ事態」のような事件が韓国だけにあったわけではない。Netflix(ネットフリックス)は、自分を数百億を相続する令嬢だと騙して一流ホテルで無銭飲食を繰り返し、米国社交界を揺さぶったアンナ・ソローキンという女性の話をドラマ化した(『令嬢アンナの真実』)。正体が明らかになって監獄に行ったものの、ソローキンの高級な趣向と虚勢にあふれたSNSで、人々はソローキンを本物だと感じて熱狂し、金を貸した。『令嬢アンナの真実』で検事キャサリンは「今日の米国の問題点がすべて入った事件」としながらソローキンを断罪しようとする。
警護員を同行させて家賃2000万ウォンのレジデンスに住んだチョン氏の詐欺とナムさんの虚栄も今日の大韓民国のさまざまな問題点を凝縮した一つの現象のように感じられる。住む場所やた食べたもの乗ったもの、表に現れるものだけで絶えず階級を分ける現実。たびたびフェイクがリアルを圧倒するという現実が、2人のおかげで水面上に現れてきたのではないだろうか。
パク・テイン/政治部記者
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