欧州が「防衛費爆弾」に怯えている。冷戦終息後、米国の核の傘の下で長く平和を維持してきたが、昨年2月からウクライナ戦争が続くと状況が急変した。さらに中東でもう一つの戦争という悪材料までが発生した。
「2つの戦争」は北大西洋条約機構(NATO)の中枢である欧州主要国に防衛費増額を要求しているが、予算を増やすためには難題が少なくない。ウクライナ支援で減少した自国の武器を満たすのも容易でない状況だ。
問題は米国に頼ることもできないという点だ。米国はイスラエルとパレスチナの武装勢力ハマスの激しい紛争にすでに深く介入した状態だ。2つの空母打撃群と約2000人の兵力を戦場周辺に派遣し、高高度防衛ミサイル体系(THAAD)とパトリオット迎撃ミサイル砲台を中東に追加で配備するなど軍事支援を進めている。さらに「米国がウクライナに支援しようとしていた砲弾数万発をイスラエルに送るとみられる」というアクシオスの報道もあった。
ウクライナの戦場に傾いていた米国の軍費支出がこのように中東に急激に移動する状況だ。このため専門家の間では「結局ウクライナ戦争は欧州のNATO加盟国が戦費を負担するしかない状況」という見方が出ている。
しかしNATO核心メンバーのドイツ・フランス・英国などが防衛費を急激に増やすのは事実上難しい状況だ。専門家らはその原因を▼ウクライナ戦争長期化による欧州の経済難▼冷戦後に定着した予算構造▼防衛費引き上げに対する大衆の反感--など大きく3つあるとみている。
◆今年も来年も経済厳しく
まず、欧州主要国の財政が悪化した。世界的な景気沈滞の中、ウクライナ戦争の影響でエネルギー費用増加と物価高が重なった。国際通貨基金(IMF)は昨年末の報告書で「ウクライナ戦争が欧州経済にますます大きな打撃を与えている」とし「緊縮的なマクロ経済政策基調が必要であり、脆弱な家計と堅実な企業が危機を克服できるよう支援するべき」と指摘した。一言で防衛費を増やす余力がないという意味だ。
今後がさらに問題だ。先月のIMFの発表によると、今年の欧州主要先進国の経済成長率は昨年(3.6%)を大幅に下回る0.7%となる見込みだ。特に米国・英国に続いてNATO分担金が3番目に多いドイツの場合、今年はマイナス成長(-0.5%)が予想されるほど危機だ。フランス(1%)と英国(0.5%)も低い成長率が予測されている。
今年より小幅上昇すると期待される来年も暗雲が漂い始めている。中東事態の長期化の兆候で予測値の下方修正が避けられないからだ。
◆「平和配当金」が招いた禍根
もう一つの問題は各国の予算構造だ。冷戦時代、西側各国は予算全体の中で防衛費の比率が相当高かった。これを先導した米国の場合、1980年代後半に防衛費の比率が国内総生産(GDP)の6%を占めた。
しかし東欧圏が没落した1991年当時、ブッシュ米大統領が「ソ連の欧州侵攻の可能性はもう現実的な脅威ではない」と宣言して防衛費を25%も削減し、欧州でも防衛費の縮小が続いた。ドイツなど多くの国が防衛費の比率を従来の半分以下に減らし、減らした予算を経済発展と社会福祉に回してきた。
フィナンシャルタイムズ(FT)は「ベルリンの壁が崩壊して以降、政治家らは防衛費をほとんど支出しないことに慣れている」とし「(冷戦の終息が招いた)いわゆる平和配当金(peace dividend)のおかげで各国は軍隊の代わりに保健・教育政策に数十億ドルを投資できることになった」と伝えた。
ロシアのウクライナ侵攻の脅威を看過していたNATO加盟国があたふたと予算構造を変えようとするが、画期的な反転を期待するのは難しそうだ。実際、英国ではタカ派議員が2.29%(2021年基準)の防衛費を3%まで引き上げるべきだと強く主張しているが、議会内でも反対が強い。年金改革問題などで頭を悩ませる状況で予算の転用が容易でないからだ。
ストックホルム国際平和研究所(SIPRI)のディエゴ・ロペス・ダ・シルバ研究員は「(すでに固まった予算構造を)完全に変えることはまた別の費用を招くことになる」とし「(防衛費の増加は)グリーン経済への転換など欧州各国の他の緊急懸案と競争するしかない」とFTに話した。
イスラエルの戦争で浮き彫りに 欧州防衛費「不都合な真実」(2)
「2つの戦争」は北大西洋条約機構(NATO)の中枢である欧州主要国に防衛費増額を要求しているが、予算を増やすためには難題が少なくない。ウクライナ支援で減少した自国の武器を満たすのも容易でない状況だ。
問題は米国に頼ることもできないという点だ。米国はイスラエルとパレスチナの武装勢力ハマスの激しい紛争にすでに深く介入した状態だ。2つの空母打撃群と約2000人の兵力を戦場周辺に派遣し、高高度防衛ミサイル体系(THAAD)とパトリオット迎撃ミサイル砲台を中東に追加で配備するなど軍事支援を進めている。さらに「米国がウクライナに支援しようとしていた砲弾数万発をイスラエルに送るとみられる」というアクシオスの報道もあった。
ウクライナの戦場に傾いていた米国の軍費支出がこのように中東に急激に移動する状況だ。このため専門家の間では「結局ウクライナ戦争は欧州のNATO加盟国が戦費を負担するしかない状況」という見方が出ている。
しかしNATO核心メンバーのドイツ・フランス・英国などが防衛費を急激に増やすのは事実上難しい状況だ。専門家らはその原因を▼ウクライナ戦争長期化による欧州の経済難▼冷戦後に定着した予算構造▼防衛費引き上げに対する大衆の反感--など大きく3つあるとみている。
◆今年も来年も経済厳しく
まず、欧州主要国の財政が悪化した。世界的な景気沈滞の中、ウクライナ戦争の影響でエネルギー費用増加と物価高が重なった。国際通貨基金(IMF)は昨年末の報告書で「ウクライナ戦争が欧州経済にますます大きな打撃を与えている」とし「緊縮的なマクロ経済政策基調が必要であり、脆弱な家計と堅実な企業が危機を克服できるよう支援するべき」と指摘した。一言で防衛費を増やす余力がないという意味だ。
今後がさらに問題だ。先月のIMFの発表によると、今年の欧州主要先進国の経済成長率は昨年(3.6%)を大幅に下回る0.7%となる見込みだ。特に米国・英国に続いてNATO分担金が3番目に多いドイツの場合、今年はマイナス成長(-0.5%)が予想されるほど危機だ。フランス(1%)と英国(0.5%)も低い成長率が予測されている。
今年より小幅上昇すると期待される来年も暗雲が漂い始めている。中東事態の長期化の兆候で予測値の下方修正が避けられないからだ。
◆「平和配当金」が招いた禍根
もう一つの問題は各国の予算構造だ。冷戦時代、西側各国は予算全体の中で防衛費の比率が相当高かった。これを先導した米国の場合、1980年代後半に防衛費の比率が国内総生産(GDP)の6%を占めた。
しかし東欧圏が没落した1991年当時、ブッシュ米大統領が「ソ連の欧州侵攻の可能性はもう現実的な脅威ではない」と宣言して防衛費を25%も削減し、欧州でも防衛費の縮小が続いた。ドイツなど多くの国が防衛費の比率を従来の半分以下に減らし、減らした予算を経済発展と社会福祉に回してきた。
フィナンシャルタイムズ(FT)は「ベルリンの壁が崩壊して以降、政治家らは防衛費をほとんど支出しないことに慣れている」とし「(冷戦の終息が招いた)いわゆる平和配当金(peace dividend)のおかげで各国は軍隊の代わりに保健・教育政策に数十億ドルを投資できることになった」と伝えた。
ロシアのウクライナ侵攻の脅威を看過していたNATO加盟国があたふたと予算構造を変えようとするが、画期的な反転を期待するのは難しそうだ。実際、英国ではタカ派議員が2.29%(2021年基準)の防衛費を3%まで引き上げるべきだと強く主張しているが、議会内でも反対が強い。年金改革問題などで頭を悩ませる状況で予算の転用が容易でないからだ。
ストックホルム国際平和研究所(SIPRI)のディエゴ・ロペス・ダ・シルバ研究員は「(すでに固まった予算構造を)完全に変えることはまた別の費用を招くことになる」とし「(防衛費の増加は)グリーン経済への転換など欧州各国の他の緊急懸案と競争するしかない」とFTに話した。
イスラエルの戦争で浮き彫りに 欧州防衛費「不都合な真実」(2)
この記事を読んで…