◇「ハマスもヒズボラの『弱い下っ端』にすぎない」

専門家はヒズボラを今回の戦争の「ゲームチェンジャー（結果・版図をひっくり返す核心要素）」と見ている。イスラエルの立場では、ヒズボラのほうがハマスよりもはるかに強力な敵だからだ。

中東研究所のＦｉｒａｓ　Ｍａｋｓａｄ上級研究員はタイム（ＴＩＭＥ）誌に「ハマスはヒズボラの『弱い下っ端（ｗｅａｋ　ｕｎｄｅｒｌｉｎｇ）』にすぎない」とし「ヒズボラの介入はイスラエルはもちろん、地域全体の版図をひっくり返すことになる」と評した。


まずヒズボラは強大な軍事力に支えられている。フォーリン・ポリシー（Ｆｏｒｅｉｇｎ　Ｐｏｌｉｃｙ、ＦＰ）は「ヒズボラは毎年イランから数億ドルの軍事支援を受け、各種対艦巡航ミサイルや地対空ミサイルまで持っている」とし「レバノン正規軍よりも強い戦力がある」と伝えた。ヒズボラはイスラエル空軍基地や歩兵部隊を狙える精密誘導ミサイルも所有していることが確認されている。「世界で最も強力な非正規軍隊」という修飾語がついている理由だ。

ヒズボラの兵力は約６万５０００人と推定されている。２０２１年、最高指導者ナスララ氏はヒズボラの武装戦士が１０万人いると主張した。

実戦経験も豊富だ。ヒズボラは２００６年イスラエル－レバノン戦争をはじめ、２０１４年シリア内戦やイエメン内戦などに参加した。内戦経験がある戦闘員だけで数千人以上いるとニューヨーク・タイムズ（ＮＹＴ）は伝えた。

◇レバノンの民心無視しがたい…国民７５％は貧困ライン以下

ただし、ヒズボラが経済難に疲れた自国の民心を無視して戦争に参入することは容易ではない。レバノンは２０１９年の経済危機以降、物価上昇率が三桁を記録して通貨価値が９０％急落した。米ＣＮＢＣはレバノン国民の４分の３が貧困ライン以下に落ちたと伝えた。このためレバノン人の相当数が経済危機以来、ヒズボラに反感を抱いている。

ＣＮＢＣは「レバノン人は金融システム崩壊などで疲労感を感じている」としながら「ヒズボラも（悪化した）自国世論を考慮せざるをえない」と伝えた。


「世界最強の非正規軍」がイスラエル狙う…ヒズボラと第２の戦線か（１）