「米国とサウジアラビアが韓米同盟のように連携しなければいけない」。
先月、イスラエルのコーヘン外相がウォールストリートジャーナル(WSJ)に寄稿したが、その内容が米国を騒がせた。コーヘン外相は「米国の仲裁でイスラエルとサウジが国交正常化交渉を進展させているが、サウジは米国の安全保障公約を望んでいる」とし「米国の拡大抑止が韓国を北朝鮮の核の脅威から保護するように、サウジと米国の(軍事)同盟はアラブ国家をイランから保護することになるだろう」と主張した。
イスラムのスンニ派宗主国サウジと長い競争関係にあるイスラエルが米国・サウジの「安保条約」を公開的に加速化したのには理由がある。現在、イスラエルとサウジは米国の仲裁で中東の地政学的版図を変える国交正常化(平和協定)を進行中だ。ところがサウジがイスラエルではなく米国に先決条件を要求した。見合いの相手でなく仲人に「先払い請求書」を出すような姿だ。
コーヘン外相の寄稿とバイデン大統領がニューヨークタイムズ(NYT)を通じて間接的に知らせた内容などを総合すると、サウジは大きく▼米国・サウジ間安保協力をNATO(北大西洋条約機構)または韓米同盟級にアップグレードする▼サウジが民需用ウラン濃縮技術を確保できるよう米国の協力を受ける--という2件を要求した。もちろんサウジは公式的には認めていない。
米国からは一斉に懸念の声が出てきた。米シンクタンク中東研究所(MEI)のビラル・サブ安保局長は「NATOや韓国のような同盟国との安保条約は戦略的な集団行動の結果」とし「絶対君主制のサウジとは米国の利益に影響を及ぼす安保問題に効果的かつ透明に対応できない」と指摘した。進歩性向のオンラインメディアの局長も「北朝鮮とは違いイランは核兵器を完成していない状態であり、韓国とサウジは状況が全く異なる」とし「サウジと安保同盟を結べばむしろイランとの緊張が高まるはずで、中東紛争に米国が絶えず関わることになりかねない」と反対した。
今回の件は米国の外交政策の念願事業である中東平和体制の導入をめぐる、関連国の激しい駆け引きを反映している。4カ国の4人の指導者が絡んでいる。中国牽制のために平和協定を実現させようとするバイデン大統領、米国を相手に「大胆営業」を試みるサウジの実権者ムハンマド・ビン・サルマン皇太子、この機会に中東で影響力を確保しようとする中国の習近平国家主席、そして米国を背にパレスチナ関連の譲歩を最小化しようとするイスラエルのネタニヤフ首相の外交角逐戦を整理した。
<1>焦るバイデン大統領
米国が今回の交渉に没頭する理由は一つだ。中国牽制のための経済・安保構想「インド・中東・欧州経済回廊(IMEC)」を完成するためだ。中国の陸・海上一帯一路(陸上海上シルクロード)を遮断しようとする米国の試みだ。バイデン大統領は9日、IMECを発表し、「これが本当のビッグディール」と繰り返し強調した。このIMECでインドと欧州をつなぐ核心ラインがサウジ・イスラエル区間を鉄道でつなぐということだ。その場合、両国間の国交正常化が必須となる。
再選を狙うバイデン大統領にとって今回の件は欲が出る外交課題でもある。前任のトランプ政権のイスラエル・アラブ圏平和協定「アブラハム合意」(イスラエルとUAE、バーレーンなどの国交正常化)に匹敵するからだ。
バイデン政権の大物外交・安保策士がこの3カ月間、頻繁にサウジを訪問したのもそのためだ。サリバン米大統領補佐官(国家安全保障問題担当、5月、7月)、米中央情報局(CIA)のバーンズ長官(5月)、ブリンケン国務長官(6月)、国家安全保障会議(NSC)のマクガーク中東・北アフリカ調整官(7月)がビン・サルマン皇太子に会った。
<2>余裕があるビン・サルマン皇太子
こうした中、ビン・サルマン皇太子は事実上「出口戦略のない交渉カード」をバイデン政権に投じた。ビン・サルマン皇太子が要求する「安保条約+民需用核開発」は米国としてはどちらもすぐに応じることができない。サウジとの安保同盟は中東から手を引いて中国牽制に集中しようとする米国の対外政策に反する。民需用核開発の許容はイランに続いてサウジの核開発につながる可能性がある。ビン・サルマン皇太子はすでに2018年、「イランが核を開発すれば我々も核を開発する可能性がある」と公言している。
ビン・サルマン皇太子は同時に中国をテコにして交渉力を最大値に高めている。昨年の習主席の国賓訪問に続き今年3月には北京で中国の仲裁でイランと国交正常化をし、今年サウジは中国主導の最高級協議体、上海協力機構(SCO、4月)、BRICS(8月)に加入した。
サウジが「韓米同盟級の安全保障」要求 焦るバイデン大統領(2)
先月、イスラエルのコーヘン外相がウォールストリートジャーナル(WSJ)に寄稿したが、その内容が米国を騒がせた。コーヘン外相は「米国の仲裁でイスラエルとサウジが国交正常化交渉を進展させているが、サウジは米国の安全保障公約を望んでいる」とし「米国の拡大抑止が韓国を北朝鮮の核の脅威から保護するように、サウジと米国の(軍事)同盟はアラブ国家をイランから保護することになるだろう」と主張した。
イスラムのスンニ派宗主国サウジと長い競争関係にあるイスラエルが米国・サウジの「安保条約」を公開的に加速化したのには理由がある。現在、イスラエルとサウジは米国の仲裁で中東の地政学的版図を変える国交正常化(平和協定)を進行中だ。ところがサウジがイスラエルではなく米国に先決条件を要求した。見合いの相手でなく仲人に「先払い請求書」を出すような姿だ。
コーヘン外相の寄稿とバイデン大統領がニューヨークタイムズ(NYT)を通じて間接的に知らせた内容などを総合すると、サウジは大きく▼米国・サウジ間安保協力をNATO(北大西洋条約機構)または韓米同盟級にアップグレードする▼サウジが民需用ウラン濃縮技術を確保できるよう米国の協力を受ける--という2件を要求した。もちろんサウジは公式的には認めていない。
米国からは一斉に懸念の声が出てきた。米シンクタンク中東研究所(MEI)のビラル・サブ安保局長は「NATOや韓国のような同盟国との安保条約は戦略的な集団行動の結果」とし「絶対君主制のサウジとは米国の利益に影響を及ぼす安保問題に効果的かつ透明に対応できない」と指摘した。進歩性向のオンラインメディアの局長も「北朝鮮とは違いイランは核兵器を完成していない状態であり、韓国とサウジは状況が全く異なる」とし「サウジと安保同盟を結べばむしろイランとの緊張が高まるはずで、中東紛争に米国が絶えず関わることになりかねない」と反対した。
今回の件は米国の外交政策の念願事業である中東平和体制の導入をめぐる、関連国の激しい駆け引きを反映している。4カ国の4人の指導者が絡んでいる。中国牽制のために平和協定を実現させようとするバイデン大統領、米国を相手に「大胆営業」を試みるサウジの実権者ムハンマド・ビン・サルマン皇太子、この機会に中東で影響力を確保しようとする中国の習近平国家主席、そして米国を背にパレスチナ関連の譲歩を最小化しようとするイスラエルのネタニヤフ首相の外交角逐戦を整理した。
<1>焦るバイデン大統領
米国が今回の交渉に没頭する理由は一つだ。中国牽制のための経済・安保構想「インド・中東・欧州経済回廊(IMEC)」を完成するためだ。中国の陸・海上一帯一路(陸上海上シルクロード)を遮断しようとする米国の試みだ。バイデン大統領は9日、IMECを発表し、「これが本当のビッグディール」と繰り返し強調した。このIMECでインドと欧州をつなぐ核心ラインがサウジ・イスラエル区間を鉄道でつなぐということだ。その場合、両国間の国交正常化が必須となる。
再選を狙うバイデン大統領にとって今回の件は欲が出る外交課題でもある。前任のトランプ政権のイスラエル・アラブ圏平和協定「アブラハム合意」(イスラエルとUAE、バーレーンなどの国交正常化)に匹敵するからだ。
バイデン政権の大物外交・安保策士がこの3カ月間、頻繁にサウジを訪問したのもそのためだ。サリバン米大統領補佐官(国家安全保障問題担当、5月、7月)、米中央情報局(CIA)のバーンズ長官(5月)、ブリンケン国務長官(6月)、国家安全保障会議(NSC)のマクガーク中東・北アフリカ調整官(7月)がビン・サルマン皇太子に会った。
<2>余裕があるビン・サルマン皇太子
こうした中、ビン・サルマン皇太子は事実上「出口戦略のない交渉カード」をバイデン政権に投じた。ビン・サルマン皇太子が要求する「安保条約+民需用核開発」は米国としてはどちらもすぐに応じることができない。サウジとの安保同盟は中東から手を引いて中国牽制に集中しようとする米国の対外政策に反する。民需用核開発の許容はイランに続いてサウジの核開発につながる可能性がある。ビン・サルマン皇太子はすでに2018年、「イランが核を開発すれば我々も核を開発する可能性がある」と公言している。
ビン・サルマン皇太子は同時に中国をテコにして交渉力を最大値に高めている。昨年の習主席の国賓訪問に続き今年3月には北京で中国の仲裁でイランと国交正常化をし、今年サウジは中国主導の最高級協議体、上海協力機構(SCO、4月)、BRICS(8月)に加入した。
サウジが「韓米同盟級の安全保障」要求 焦るバイデン大統領(2)
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