ロシアのプーチン大統領と北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長の首脳会談が開催される。世界秩序と韓半島(朝鮮半島)に新たな変曲点が発生した。われわれは強大国の地政学と北朝鮮問題が複雑に絡まる大変な時代を迎えた。「陣営対立の時代」は北朝鮮の核問題が米中覇権競争とロシアのウクライナ侵攻とつながり始まった。いまや中国とロシアの北朝鮮関連の行動は韓国の実存に直接的な影響を及ぼす。北朝鮮はこの機会を最大限活用しようとする。この対立の時代はどのように展開するだろうか。首脳会談の結果はどうなるだろうか。
北朝鮮とロシアのビッグディールの可能性もある。首脳会談合意文は抽象的な言及でこれを隠そうとできる。しかし実行過程でその具体的内容があらわれるほかない。例えば北朝鮮がロシアに砲弾とロケットだけでなく短距離ミサイルとドローンまで供給し、ロシアは現金とエネルギー、食糧だけでなく先端武器技術も北朝鮮に提供するというものだ。前兆とみられることもあった。7月末の北朝鮮の戦勝節行事参加のため北朝鮮を訪問したロシアのショイグ国防相はミサイルとドローンが展示された展覧会を参観した。金正恩は直接立ち上がって新武器を説明するほど誠意を傾けた。また、少し後に彼はミサイル生産工場を訪問して生産能力を飛躍的に増加させるよう促した。1個数千ドルの砲弾より数百倍高い短距離弾道ミサイルまで売って勝負を確実に決定付けたいという望みだと解釈できる。一部では金正恩とプーチンが直接会うだけに画期的な結果が出るだろうと推測する。だが北朝鮮とロシアの関係には両国の必要だけでなく地政学と関係国の対応などのさまざまな要因が複合的に作用する。
より可能性が大きいシナリオは「スモールディール」だ。北朝鮮製の砲弾とロケットをロシアが輸入し、その見返りとして石油類とガス、小麦などを北朝鮮に現物で支給する取引が一例だ。武器の代価をルーブルで支払うなら北朝鮮が受け取ろうとせず、ドルで支払うのは外貨が不足するロシアが望まない公算が大きい。ここにさらに多くの北朝鮮労働者をロシアが受け入れる措置も含まれる可能性がある。だがロシアは先端軍事技術の伝授を含む取引をできる限り避けたいだろう。そうでなければ国連安全保障理事会常任理事国として最も基本的な責務を破ったとし国際社会の大きな批判に直面しかねない。特にこれは韓日米と完全に背を向ける行為となり、その影響はウクライナ戦争後も続くだろう。ウクライナ戦争に韓日がさらに積極的に介入する可能性もある。
ロシアは低い水準のディールを通じ、果たして金正恩が信頼できるほどの人物なのか、そして北朝鮮の武器生産能力がどの程度なのかを確認したいだろう。ロシアのエリート外交官は概ね慎重だ。帝王のように君臨するプーチンは疑いが多く裏切りに対するトラウマが深い。したがって北朝鮮と深い軍事的・外交的関係を結ぶよりは経済的取引という浅い水準からスタートする方を選ぶだろう。また、原料と装備、部品と電力など全てが貧弱な北朝鮮が大量の武器を適時に生産し供給できるのか、その能力もチェックしようとするだろう。
金正恩も大きな負担を抱えている。まず中国の反応が問題だ。北朝鮮を自身の影響圏内に縛っておこうとする中国は北朝鮮とロシアの密着を喜ぶばかりではない。特にロシアと密着した北朝鮮は中国には潜在的な負債だ。ロシアという後ろ盾を置いた上に経済も少し改善し核高度化も成し遂げた北朝鮮が中国の話をはいはいと聞くだろうか。これを懸念する中国は北朝鮮に対する経済的支援を減らすかもしれない。最近の中国副首相の訪問の際にこれと関連した中国の立場が伝えられたかもしれない。また、ロシアに対する大量の武器支援は現在だけでなく未来の米朝関係を完全な破局へ追いやるだろう。最後に北朝鮮と金正恩の存亡がウクライナ戦争の結果にかかることになる。ロシアが敗戦したりプーチンが失脚するならば彼も同じ運命に置かれかねない。
韓国はどのように対応すべきだろうか。最初に、北朝鮮の武器生産のチョークポイントを把握し、これを集中的にふさがなければならない。例えば爆発物製造に必要な硝酸アンモニウムを北朝鮮が非公式なルートや肥料を装って輸入できないよう制裁を強化する案だ。2番目に、北朝鮮とロシアの危険な軍事的密着に対し韓日米が共同でロシアと北朝鮮に警告しなければならない。ロシアが北朝鮮製武器を実際に購入するならばこれに相応して韓日米のウクライナ支援内容が変わる可能性があることを知らせる必要がある。3番目に、中国の対北朝鮮影響力を活用しなければならない。韓国政府は米国の対中政策が対北朝鮮政策を考慮し再構成されるよう米国政府を説得しなければならない。
危険な時代、危険な人物同士の軍事的取引は世界秩序に迫り来る激しい荒波の予告編のようだ。北朝鮮とロシアの密着は南北ともに大きな脅威だ。しかしはるかに危険な側は北朝鮮だ。変化の激しい暴風雨の海を動力のない帆船で航海しようとするように、金正恩は国運と自身の運命を風に懸けている。
キム・ビョンヨン/ソウル大学国家未来戦略院長碩座教授
北朝鮮とロシアのビッグディールの可能性もある。首脳会談合意文は抽象的な言及でこれを隠そうとできる。しかし実行過程でその具体的内容があらわれるほかない。例えば北朝鮮がロシアに砲弾とロケットだけでなく短距離ミサイルとドローンまで供給し、ロシアは現金とエネルギー、食糧だけでなく先端武器技術も北朝鮮に提供するというものだ。前兆とみられることもあった。7月末の北朝鮮の戦勝節行事参加のため北朝鮮を訪問したロシアのショイグ国防相はミサイルとドローンが展示された展覧会を参観した。金正恩は直接立ち上がって新武器を説明するほど誠意を傾けた。また、少し後に彼はミサイル生産工場を訪問して生産能力を飛躍的に増加させるよう促した。1個数千ドルの砲弾より数百倍高い短距離弾道ミサイルまで売って勝負を確実に決定付けたいという望みだと解釈できる。一部では金正恩とプーチンが直接会うだけに画期的な結果が出るだろうと推測する。だが北朝鮮とロシアの関係には両国の必要だけでなく地政学と関係国の対応などのさまざまな要因が複合的に作用する。
より可能性が大きいシナリオは「スモールディール」だ。北朝鮮製の砲弾とロケットをロシアが輸入し、その見返りとして石油類とガス、小麦などを北朝鮮に現物で支給する取引が一例だ。武器の代価をルーブルで支払うなら北朝鮮が受け取ろうとせず、ドルで支払うのは外貨が不足するロシアが望まない公算が大きい。ここにさらに多くの北朝鮮労働者をロシアが受け入れる措置も含まれる可能性がある。だがロシアは先端軍事技術の伝授を含む取引をできる限り避けたいだろう。そうでなければ国連安全保障理事会常任理事国として最も基本的な責務を破ったとし国際社会の大きな批判に直面しかねない。特にこれは韓日米と完全に背を向ける行為となり、その影響はウクライナ戦争後も続くだろう。ウクライナ戦争に韓日がさらに積極的に介入する可能性もある。
ロシアは低い水準のディールを通じ、果たして金正恩が信頼できるほどの人物なのか、そして北朝鮮の武器生産能力がどの程度なのかを確認したいだろう。ロシアのエリート外交官は概ね慎重だ。帝王のように君臨するプーチンは疑いが多く裏切りに対するトラウマが深い。したがって北朝鮮と深い軍事的・外交的関係を結ぶよりは経済的取引という浅い水準からスタートする方を選ぶだろう。また、原料と装備、部品と電力など全てが貧弱な北朝鮮が大量の武器を適時に生産し供給できるのか、その能力もチェックしようとするだろう。
金正恩も大きな負担を抱えている。まず中国の反応が問題だ。北朝鮮を自身の影響圏内に縛っておこうとする中国は北朝鮮とロシアの密着を喜ぶばかりではない。特にロシアと密着した北朝鮮は中国には潜在的な負債だ。ロシアという後ろ盾を置いた上に経済も少し改善し核高度化も成し遂げた北朝鮮が中国の話をはいはいと聞くだろうか。これを懸念する中国は北朝鮮に対する経済的支援を減らすかもしれない。最近の中国副首相の訪問の際にこれと関連した中国の立場が伝えられたかもしれない。また、ロシアに対する大量の武器支援は現在だけでなく未来の米朝関係を完全な破局へ追いやるだろう。最後に北朝鮮と金正恩の存亡がウクライナ戦争の結果にかかることになる。ロシアが敗戦したりプーチンが失脚するならば彼も同じ運命に置かれかねない。
韓国はどのように対応すべきだろうか。最初に、北朝鮮の武器生産のチョークポイントを把握し、これを集中的にふさがなければならない。例えば爆発物製造に必要な硝酸アンモニウムを北朝鮮が非公式なルートや肥料を装って輸入できないよう制裁を強化する案だ。2番目に、北朝鮮とロシアの危険な軍事的密着に対し韓日米が共同でロシアと北朝鮮に警告しなければならない。ロシアが北朝鮮製武器を実際に購入するならばこれに相応して韓日米のウクライナ支援内容が変わる可能性があることを知らせる必要がある。3番目に、中国の対北朝鮮影響力を活用しなければならない。韓国政府は米国の対中政策が対北朝鮮政策を考慮し再構成されるよう米国政府を説得しなければならない。
危険な時代、危険な人物同士の軍事的取引は世界秩序に迫り来る激しい荒波の予告編のようだ。北朝鮮とロシアの密着は南北ともに大きな脅威だ。しかしはるかに危険な側は北朝鮮だ。変化の激しい暴風雨の海を動力のない帆船で航海しようとするように、金正恩は国運と自身の運命を風に懸けている。
キム・ビョンヨン/ソウル大学国家未来戦略院長碩座教授
この記事を読んで…