韓日米3カ国の首脳が先月18日に米キャンプデービッドで会った。この会談の企画者であるバイデン大統領は時代の変曲点で歴史的な瞬間を作ったと、共同記者会見で明らかにした。70年ほど前にそれぞれ結ばれた韓米同盟と日米同盟が韓日米3カ国協力体として新たに誕生したことを歓呼した。帰国後、趙太庸(チョ・テヨン)国家安保室長が会談の歴史的意味を「インド太平洋地域の地政学を変えた8時間」と表現したように時代に一線を画する事件だった。
就任以降、国際秩序が「新冷戦」に急変する状況で米国主導のインド太平洋戦略に呼応すべきとと判断した尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領は、韓日関係を改善するために心血を注いだ。そして日本の主張を包容する決断をした。第三者弁済案が開いた韓日関係改善の序曲は短い期間でキャンプデービッド三重奏として響いた。
◆キャンプデービッド韓日米協力
海外メディアで伝えられた内容に対して、国内外の前向きな評価が続いた。先進国入りした韓国が国際秩序の主要行為者に浮上したことを知らせる信号だった。さらに徴用者問題で主客が転倒して守勢になっていた韓国が、包容的な決断で道徳的優位を確保することになったのが何よりも大きな収穫だった。
今はもう落ち着いて包容的決断の意味とそれが残した問題を点検する時だ。明らかにその決断は加害者・日本の謝罪と賠償を「留保」する決断だった。これは謝罪と賠償が被害者の正当な権利だと考える国民感情に反するため、国民的な抵抗を招きかねない政治的リスクを内包していた。この点を歴史の和解に関する理論で説明してみよう。
責任論的和解論は「記憶を通じた事実確認→謝罪・賠償・容赦という責任実現→正義の回復と傷の治癒→関係改善」という段階的プロセスを想定する。すなわち、前の段階を踏まなければ次の段階に進めないプロセスだ。
尹大統領の決断は責任実現の段階を越えて関係改善に直行したケースだ。その結果、歴史の正義を回復できず、被害者の傷を治癒できなかったという批判を避ける方法がない。第三者弁済対象者15人のうち被害当事者2人を含む4人が弁済金を受けることを拒否し、さらには弁済案を貫徹させようとする政府の供託推進にも強く反発している。法的訴訟につながる見通しだ。
政府は引き続き供託を推進し、進行中の1000人の訴訟に対しては確定判決以降に同じ措置を取り、訴訟ができない多数の徴用者に対しては特別法を制定して徴用者問題を解消するという方針で対応するとみられる。しかしここには正義の回復も傷の治癒も見られない。包容的な決断以降に展開した経路を元に戻せなければ、謝罪と賠償のない治癒と正義を模索しなければならない。包容論的な和解が必要な理由だ。
◆両国の宿題として残った「包容論的和解」
包容論的和解のプロセスは「包容的決断→関係改善の突破口の用意→昇華を通じた治癒と包容の審判台で正義回復→関係の深化」で構成される。ここで核心は治癒に対する観点の転換だ。
責任論的和解では過去の事実を確認する記憶から始まり、謝罪と反省を受けることで治癒にいたる。このプロセスで少女像と徴用者像という記憶のシンボルが造形された。少女像は原初的清純性を、徴用者像は残酷な剥奪性を象徴的に見せる。それと同時に傷が治癒されなければならないという定言命題を視覚的に提示する。続いて加害者の謝罪と賠償が治癒の必要条件という論理的推論が導出される。
しかし記憶を通した治癒で加害者の謝罪と賠償という条件が満たされない時、記憶の作用は和解を誘導するのではなく、むしろ傷を深めて怒りを増幅し、胸の深くに恨として刻まれる。深い恨は歴史的な正義の回復という名分と結合し、大義のための闘争として続く。
こうした状況について私は残念に思う。もう肩の重荷を下ろして霊魂の平安を得られればよい。昇華を通した治癒が一つの方法になるだろう。謝罪と賠償を受けて傷を治癒しようとする欲求が満たされないのなら、その欲求を他の価値あるものと置き換えて満たす昇華を通じて治癒を達成することだ。
多様な次元の価値を考えることができる。被害者本人が霊魂の平安を得て円熟した人格体として人生の最後を過ごすこと、歴史問題をめぐる国内の葛藤が緩和されて国民統合を促進すること、深まった友好的な韓日関係が国家間の葛藤解決のモデルになり世界平和に寄与することなどだ。要するに昇華の本質は自身が経験した苦痛を相続させずに未来の世代に新しい道を開くところにある。
【韓半島平和ウォッチ】新たな段階に入った韓日関係、未来世代の負担にならないためには(2)
就任以降、国際秩序が「新冷戦」に急変する状況で米国主導のインド太平洋戦略に呼応すべきとと判断した尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領は、韓日関係を改善するために心血を注いだ。そして日本の主張を包容する決断をした。第三者弁済案が開いた韓日関係改善の序曲は短い期間でキャンプデービッド三重奏として響いた。
◆キャンプデービッド韓日米協力
海外メディアで伝えられた内容に対して、国内外の前向きな評価が続いた。先進国入りした韓国が国際秩序の主要行為者に浮上したことを知らせる信号だった。さらに徴用者問題で主客が転倒して守勢になっていた韓国が、包容的な決断で道徳的優位を確保することになったのが何よりも大きな収穫だった。
今はもう落ち着いて包容的決断の意味とそれが残した問題を点検する時だ。明らかにその決断は加害者・日本の謝罪と賠償を「留保」する決断だった。これは謝罪と賠償が被害者の正当な権利だと考える国民感情に反するため、国民的な抵抗を招きかねない政治的リスクを内包していた。この点を歴史の和解に関する理論で説明してみよう。
責任論的和解論は「記憶を通じた事実確認→謝罪・賠償・容赦という責任実現→正義の回復と傷の治癒→関係改善」という段階的プロセスを想定する。すなわち、前の段階を踏まなければ次の段階に進めないプロセスだ。
尹大統領の決断は責任実現の段階を越えて関係改善に直行したケースだ。その結果、歴史の正義を回復できず、被害者の傷を治癒できなかったという批判を避ける方法がない。第三者弁済対象者15人のうち被害当事者2人を含む4人が弁済金を受けることを拒否し、さらには弁済案を貫徹させようとする政府の供託推進にも強く反発している。法的訴訟につながる見通しだ。
政府は引き続き供託を推進し、進行中の1000人の訴訟に対しては確定判決以降に同じ措置を取り、訴訟ができない多数の徴用者に対しては特別法を制定して徴用者問題を解消するという方針で対応するとみられる。しかしここには正義の回復も傷の治癒も見られない。包容的な決断以降に展開した経路を元に戻せなければ、謝罪と賠償のない治癒と正義を模索しなければならない。包容論的な和解が必要な理由だ。
◆両国の宿題として残った「包容論的和解」
包容論的和解のプロセスは「包容的決断→関係改善の突破口の用意→昇華を通じた治癒と包容の審判台で正義回復→関係の深化」で構成される。ここで核心は治癒に対する観点の転換だ。
責任論的和解では過去の事実を確認する記憶から始まり、謝罪と反省を受けることで治癒にいたる。このプロセスで少女像と徴用者像という記憶のシンボルが造形された。少女像は原初的清純性を、徴用者像は残酷な剥奪性を象徴的に見せる。それと同時に傷が治癒されなければならないという定言命題を視覚的に提示する。続いて加害者の謝罪と賠償が治癒の必要条件という論理的推論が導出される。
しかし記憶を通した治癒で加害者の謝罪と賠償という条件が満たされない時、記憶の作用は和解を誘導するのではなく、むしろ傷を深めて怒りを増幅し、胸の深くに恨として刻まれる。深い恨は歴史的な正義の回復という名分と結合し、大義のための闘争として続く。
こうした状況について私は残念に思う。もう肩の重荷を下ろして霊魂の平安を得られればよい。昇華を通した治癒が一つの方法になるだろう。謝罪と賠償を受けて傷を治癒しようとする欲求が満たされないのなら、その欲求を他の価値あるものと置き換えて満たす昇華を通じて治癒を達成することだ。
多様な次元の価値を考えることができる。被害者本人が霊魂の平安を得て円熟した人格体として人生の最後を過ごすこと、歴史問題をめぐる国内の葛藤が緩和されて国民統合を促進すること、深まった友好的な韓日関係が国家間の葛藤解決のモデルになり世界平和に寄与することなどだ。要するに昇華の本質は自身が経験した苦痛を相続させずに未来の世代に新しい道を開くところにある。
【韓半島平和ウォッチ】新たな段階に入った韓日関係、未来世代の負担にならないためには(2)
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