1月3日、京畿道華城(キョンギド・ファソン)にある現代自動車グループ南陽(ナミャン)研究所。鄭義宣(チョン・ウィソン)現代自動車グループ会長はコロナ禍後3年ぶりに対面で行われた新年会会場としてここを指定した。行事は互いに距離感なく疎通する「タウンホールミーティング方式」だった。この席で彼は電気自動車戦略を加速化するという意志を明確にした。
今月5日、再び南陽研究所。鄭会長は今度はカジュアルな服装でヘリコプターに乗って現れた。下半期に世界での発売を控えた「アイオニック5N」に試乗するためだ。ヒョンデ(現代自動車)関係者によると、彼は今回も例外なく新車の動力性能と搭載されたソフトウエア、外観などを細かくチェックした。鄭義宣会長は普段から経営陣に「(試乗は)不足する1%を見つける過程」と口癖のように話すという。鄭会長にとって南陽研究所はこのように自身の意志を表わす象徴的な場所であり、ルーティーン(習慣)という話だ。
アイオニック5Nは高性能を象徴する「Nブランド」初の電気自動車だ。10本の指のうち噛んで痛くないところはないだろうが、自身が産んで育てたNブランドは鄭会長にとって格別な存在にならざるをえない。
自動車マニアの関心も熱い。偽装幕をかぶせたアイオニック5Nのティーザー動画はユーチューブで4月に公開されてから2カ月で再生回数が190万回を超えた。発売を待つ人たちがそれだけ多いという意味だ。
◇カーマゲドン超える現代自動車グループの「最終兵器」
自動車業界はこのところ環境規制強化と自動運転導入、新たなライバルの登場などで「カーマゲドン(Car+Armageddon、自動車と『終末』を意味するアルマゲドンの合成語)」時代を迎えている。いまが台風の目を過ぎる時期だ。「生きるか死ぬか」という生き残りの問題を悩むのは現代自動車グループも例外でない。
そして企業の生き残りの公式は未来にある。南陽研究所を一言で表現すれば現代自動車グループの未来がかかった核心戦略基地だ。鄭会長が時間さえできれば南陽研究所を訪れるのも未来戦略がここから始まるためだ。米国でかつて「走る棺桶」と笑われた現代自動車グループが世界3位に上ることができたのは南陽研究所から始まった投資と闘志があったためだ。南陽研究所がカーマゲドンを超える現代自動車グループの「最終兵器」ということだ。
ここで開発している技術と人材は極秘中の極秘だ。セキュリティは軍事施設に匹敵する。ネイバーやダウムのようなオンライン地図サービスでは研究所内の主要施設を確認することすらできない。
最近の成果は印象的だ。南陽研究所は「EQ900」をはじめ、ジェネシスの車両設計とデザインを牽引しブランドの成功を後押しした。電動化戦略の基点である専用プラットフォーム「E-GMP」もここで誕生した。「アイオニック5」と「EV6」などE-GMP基盤の電気自動車は世界で発売から2年で40万台以上売れた。
◇敷地だけで105万坪…偽装幕かぶせた車があふれる
中央日報の取材チームは7日に南陽研究所を訪れた。めったにメディアには公開しない空間だ。現代自動車グループの競争力の中心にある先行技術を調べるためだった。
保安検査台を通過して迎えてくれた南陽研究所は全く違う世界だった。SF映画の空間をそのまま持ってきたようだった。黒い偽装幕で覆われた車が常に道路を行き来していた。自動運転車もあちこちで目撃できた。
南陽研究所は現代グループがマンションを作るために取得した大規模干拓地の上に造成された。現代自動車を創業した鄭周永(チョン・ジュヨン)現代グループ先代会長は1980年代中盤ごろに「自動車のデザインと設計、試験、評価などを1カ所でできる場所が必要だ」として研究所の設立を指示した。
研究所が竣工したのは鄭周永会長の指示があってから約10年後の1995年だ。それもそのはずで敷地面積だけ347万平方メートルと汝矣島(ヨイド)の290万平方メートルより広い。設立を主導した李忠九(イ・チュング)元現代自動車社長は「結局は米国車、日本車と競争するほかないというのが鄭周永会長の考えだった。世界最高水準で作れという指示から、建物に使った窓枠もドイツから空輸した。一から十まで現代自動車の手だけでしたため竣工まで長い時間がかかった。後輩たちに渡しても恥ずかしくないハードウエアを備えたかった」と話した。
◇レベル4の自動運転車、歩行者に止まる
研究所設計2棟に移動するためヒョンデが開発中の自動運転車「ロボシャトル」を呼び出した。大型ワゴン車「ソラティ」を改造したロボシャトルは、外見はミニバスと大きく変わらなかった。だが室内は完全に違う状況だった。内部モニターには車に取り付けられたカメラとライダなどから収集した信号がリアルタイムで表示された。歩道でシャトルバスを待っていた歩行者が車道に身を乗り出すとロボシャトルはスピードを下げた。
ロボシャトルを担当するヒョンデの研究員は「車に設置されたカメラが歩道の歩行者の動きを感知して自らスピードを下げたもの」と説明した。前方にある横断歩道を歩行者が通り過ぎると車は感知して止まった。人工知能(AI)プログラムは歩行者が横断歩道を完全に渡り終えると再び運行を始めた。
研究所内部には45カ所の停留所を循環するシャトルバスがある。だが訪問者がアプリで指定した停留所だけ止まるロボシャトルがより効率が高い。レベル4の自動運転が適用されたロボシャトルは運転者の介入なく自動でハンドルを操作し目的地まで運転した。レベル4の自動運転は決められた区域で運転者が走行過程に関与せずに自動運転が可能な水準だ。地域に束縛されることなく完全自動運転が可能なレベル5の自動運転の直前段階だ。現在商用化された技術はレベル2の自動運転だ。
◇時計の針は「量産D-5年」に合わされる
この日訪問したモビリティプロジェクトチームは南陽研究所設計2棟の1階を占めている。1万4000人が働く研究所でも最前方にある組織のひとつだ。40人ほどが働くこのチームの任務は開発段階にある新技術を実際の車両に適用して検証することだ。電気モーターに機械的変速感を生み出す「Neシフト」など研究所で開発中または開発を終えた多様な新技術を適用してテスト車両を製作する。
同社モビリティプロジェクトチーム長のカン・ジェヨン氏は「私たちの時計の針は『量産D-5年』に合わせている」と紹介した。5年先を行く技術と車両を事前に検証するという意味だ。カン・チーム長の説明だ。
「量産の可能性を念頭に置いてプロジェクトを進めています。チームで検証した車両と技術の中には実際に量産されたものもあり、検証段階でストップしたものもあります。例えばインド市場をターゲットとした小型スポーツ多目的車(SUV)は私たちのチームを経た後に量産され、ディーゼルハイブリッド自動車は量産に至りませんでした」。
カン・チーム長に付いて地下1階駐車場に下りていくと「RN22e」に会うことができた。車体後部に伸びたスポイラーが印象的だった。Rは「動く研究室」を意味するローリングラボの略だ。RN22eは4月のソウルモビリティショーで一般に公開した車で、モビリティプロジェクトチームが検証している高性能電気自動車だ。アイオニック5Nの「先祖」に当たる。
<ヒョンデ研究>鄭義宣会長は「1%」を探しに行った、ネイバーにも表示されない「秘密基地」(2)
今月5日、再び南陽研究所。鄭会長は今度はカジュアルな服装でヘリコプターに乗って現れた。下半期に世界での発売を控えた「アイオニック5N」に試乗するためだ。ヒョンデ(現代自動車)関係者によると、彼は今回も例外なく新車の動力性能と搭載されたソフトウエア、外観などを細かくチェックした。鄭義宣会長は普段から経営陣に「(試乗は)不足する1%を見つける過程」と口癖のように話すという。鄭会長にとって南陽研究所はこのように自身の意志を表わす象徴的な場所であり、ルーティーン(習慣)という話だ。
アイオニック5Nは高性能を象徴する「Nブランド」初の電気自動車だ。10本の指のうち噛んで痛くないところはないだろうが、自身が産んで育てたNブランドは鄭会長にとって格別な存在にならざるをえない。
自動車マニアの関心も熱い。偽装幕をかぶせたアイオニック5Nのティーザー動画はユーチューブで4月に公開されてから2カ月で再生回数が190万回を超えた。発売を待つ人たちがそれだけ多いという意味だ。
◇カーマゲドン超える現代自動車グループの「最終兵器」
自動車業界はこのところ環境規制強化と自動運転導入、新たなライバルの登場などで「カーマゲドン(Car+Armageddon、自動車と『終末』を意味するアルマゲドンの合成語)」時代を迎えている。いまが台風の目を過ぎる時期だ。「生きるか死ぬか」という生き残りの問題を悩むのは現代自動車グループも例外でない。
そして企業の生き残りの公式は未来にある。南陽研究所を一言で表現すれば現代自動車グループの未来がかかった核心戦略基地だ。鄭会長が時間さえできれば南陽研究所を訪れるのも未来戦略がここから始まるためだ。米国でかつて「走る棺桶」と笑われた現代自動車グループが世界3位に上ることができたのは南陽研究所から始まった投資と闘志があったためだ。南陽研究所がカーマゲドンを超える現代自動車グループの「最終兵器」ということだ。
ここで開発している技術と人材は極秘中の極秘だ。セキュリティは軍事施設に匹敵する。ネイバーやダウムのようなオンライン地図サービスでは研究所内の主要施設を確認することすらできない。
最近の成果は印象的だ。南陽研究所は「EQ900」をはじめ、ジェネシスの車両設計とデザインを牽引しブランドの成功を後押しした。電動化戦略の基点である専用プラットフォーム「E-GMP」もここで誕生した。「アイオニック5」と「EV6」などE-GMP基盤の電気自動車は世界で発売から2年で40万台以上売れた。
◇敷地だけで105万坪…偽装幕かぶせた車があふれる
中央日報の取材チームは7日に南陽研究所を訪れた。めったにメディアには公開しない空間だ。現代自動車グループの競争力の中心にある先行技術を調べるためだった。
保安検査台を通過して迎えてくれた南陽研究所は全く違う世界だった。SF映画の空間をそのまま持ってきたようだった。黒い偽装幕で覆われた車が常に道路を行き来していた。自動運転車もあちこちで目撃できた。
南陽研究所は現代グループがマンションを作るために取得した大規模干拓地の上に造成された。現代自動車を創業した鄭周永(チョン・ジュヨン)現代グループ先代会長は1980年代中盤ごろに「自動車のデザインと設計、試験、評価などを1カ所でできる場所が必要だ」として研究所の設立を指示した。
研究所が竣工したのは鄭周永会長の指示があってから約10年後の1995年だ。それもそのはずで敷地面積だけ347万平方メートルと汝矣島(ヨイド)の290万平方メートルより広い。設立を主導した李忠九(イ・チュング)元現代自動車社長は「結局は米国車、日本車と競争するほかないというのが鄭周永会長の考えだった。世界最高水準で作れという指示から、建物に使った窓枠もドイツから空輸した。一から十まで現代自動車の手だけでしたため竣工まで長い時間がかかった。後輩たちに渡しても恥ずかしくないハードウエアを備えたかった」と話した。
◇レベル4の自動運転車、歩行者に止まる
研究所設計2棟に移動するためヒョンデが開発中の自動運転車「ロボシャトル」を呼び出した。大型ワゴン車「ソラティ」を改造したロボシャトルは、外見はミニバスと大きく変わらなかった。だが室内は完全に違う状況だった。内部モニターには車に取り付けられたカメラとライダなどから収集した信号がリアルタイムで表示された。歩道でシャトルバスを待っていた歩行者が車道に身を乗り出すとロボシャトルはスピードを下げた。
ロボシャトルを担当するヒョンデの研究員は「車に設置されたカメラが歩道の歩行者の動きを感知して自らスピードを下げたもの」と説明した。前方にある横断歩道を歩行者が通り過ぎると車は感知して止まった。人工知能(AI)プログラムは歩行者が横断歩道を完全に渡り終えると再び運行を始めた。
研究所内部には45カ所の停留所を循環するシャトルバスがある。だが訪問者がアプリで指定した停留所だけ止まるロボシャトルがより効率が高い。レベル4の自動運転が適用されたロボシャトルは運転者の介入なく自動でハンドルを操作し目的地まで運転した。レベル4の自動運転は決められた区域で運転者が走行過程に関与せずに自動運転が可能な水準だ。地域に束縛されることなく完全自動運転が可能なレベル5の自動運転の直前段階だ。現在商用化された技術はレベル2の自動運転だ。
◇時計の針は「量産D-5年」に合わされる
この日訪問したモビリティプロジェクトチームは南陽研究所設計2棟の1階を占めている。1万4000人が働く研究所でも最前方にある組織のひとつだ。40人ほどが働くこのチームの任務は開発段階にある新技術を実際の車両に適用して検証することだ。電気モーターに機械的変速感を生み出す「Neシフト」など研究所で開発中または開発を終えた多様な新技術を適用してテスト車両を製作する。
同社モビリティプロジェクトチーム長のカン・ジェヨン氏は「私たちの時計の針は『量産D-5年』に合わせている」と紹介した。5年先を行く技術と車両を事前に検証するという意味だ。カン・チーム長の説明だ。
「量産の可能性を念頭に置いてプロジェクトを進めています。チームで検証した車両と技術の中には実際に量産されたものもあり、検証段階でストップしたものもあります。例えばインド市場をターゲットとした小型スポーツ多目的車(SUV)は私たちのチームを経た後に量産され、ディーゼルハイブリッド自動車は量産に至りませんでした」。
カン・チーム長に付いて地下1階駐車場に下りていくと「RN22e」に会うことができた。車体後部に伸びたスポイラーが印象的だった。Rは「動く研究室」を意味するローリングラボの略だ。RN22eは4月のソウルモビリティショーで一般に公開した車で、モビリティプロジェクトチームが検証している高性能電気自動車だ。アイオニック5Nの「先祖」に当たる。
<ヒョンデ研究>鄭義宣会長は「1%」を探しに行った、ネイバーにも表示されない「秘密基地」(2)
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