財政分野の研究者としてよく受ける質問がある。韓国は国家債務比率が欧州や米国、日本など主要先進国の平均水準より低いのに、なぜ政府や学者は福祉や景気浮揚のための財政支出を拡大しないのかということだ。特に景気が鈍化した最近は国債発行を増やしてでも補正予算を編成して民生を支援するべきだという声が政界の半分以上を占める。
政府と財政の存在理由が最初から最後まで国民のためであるため、こうした指摘や主張には一理がある。ただ、一つ前提が必要だ。それは財政維持の可能性を満たすことだ。今年と来年はもちろん中長期的に財政が持続できてこそ積極財政も拡大財政も可能であり、意味がある。国家と政府が永続的なものであるだけに財政もそうでなければいけない。
◆財政資源が枯渇した王朝は滅びる
しつこく財政健全性を強調するのは、政策に失敗した政府は許されても、財政維持の可能性に失敗した政府は許されないからだ。歴史的にも無理な征服戦争や大工事で財政資源の枯渇を招いた王朝はすべて滅びた。財政が中長期的に持続するよう健全な状態を維持するのは政府の選択事項ではなく第一の責務だ。
このような意味で憲法でいう国家の守護とは、国防だけに限られず財政基盤の保存も含む。債務償還能力を喪失した個人や企業は金融機関や公的機関による救済や回復が可能だが、国家は問題の解決に頼れるところがない。国家の大切な資産を売却したりこれを担保に経済的独立を犠牲にして国際金融機構から支援を受けることができるだけだ。財政が最後の砦という言葉はここから出てくる。
◆小規模開放経済に健全財政は宿命
経済規模が小さく他国との貿易の比率が高い小規模開放経済の韓国は大小の外部の衝撃に露出している。このため安定した経済成長のために2つの宿命的な課題を抱えている。十分な外貨準備高と健全な財政基盤の維持がそれだ。
いつでも使用できる対外支給準備資産の不足がいかなる結果をもたらすかは1997年の通貨危機のつらい経験がよく説明している。韓国銀行(韓銀)が現在保有している530兆ウォン(約59兆円)を超える外貨をただ有事に備えた余裕資金というレベルでなく、マクロ経済の安定性を維持するための番人と見るのは、こうした歴史的教訓のおかげだ。
通貨危機の発生が一時的なドル流動性不足のためだと考えて悔しがる人が少なくない。実際、根本的な理由は国家信用管理問題にあるという点を知る必要がある。当時は国際金融市場に外貨建て国債を発行して資本調達をする正常な国家信用システムが作動しない状態だった。国際金融市場で信用が高い国ならドルを一時的に借り入れて容易に解決できた流動性危機が国家的な混乱に飛び火したのだ。
国家の運命を左右する対外信用度の決定で核心的な役割をするものの一つが財政の健全性だ。小規模開放経済国であり分断状況のため安全保障問題まで抱えている韓国にとって、財政の安定性は国際的な信用確保のために要求される宿命と変わらない。名実ともにグローバル先導国に加わるためには、健全な財政管理は予算をどれほど増やすべきかという単純な政策的選択とは次元が違う問題という点を認識しなければいけない。
◆財政健全性の悪化、金融機関の破綻を招く
国家信用度のほかにも財政健全性が経済的に大きな影響を及ぼす部分は多い。例えば金融部門の健全性は財政状態に大きく依存する。民間銀行発行債券のリスクプレミアムは該当国の国債プレミアムと比例する。財政状態が良好でない国は国債に対する要求収益率が相対的に高い水準であり、民間の金融調達費用もそれだけ高まるため、銀行と企業の収益性を落とす。結局、国際競争力で遅れをとる結果をもたらす。
財政健全性の悪化は予期せぬ金融機関の破綻危機を招いたりもする。昨年秋に英国政府の減税案が招いた年金基金破産危機がよい例だ。新型コロナ期間の大規模な財政投入で負債が大きく増えたが、新首相により財源調達策が欠如した減税案が強行されると、財政健全性の悪化を予想した国際金融市場は英国債と英ポンドの売った。その結果、英国債の価値が大きく落ち、これを大量で保有していた多数の年金基金と銀行が資産価値の下落で破綻危機に直面することになった。緊縮金融の手綱を引いたイングランド銀行総裁が願わない政策への急旋回を通じて緊急救済レベルの流動性を解きながら事態はかろうじて落ちついたが、首相はこうした責任から事実上解任された。先進国のうち最も深刻なインフレを経験している英国の現在の状況は、当時の中央銀行の物価対応基調に一部関連しているとみることができる。財政余力が不足した国が過度に財政赤字を増やす場合、金融部門にいかなる危機をもたらすかは、南欧の財政金融危機事例でもよく確認される。
財政余力が十分でなければ銀行の問題に政府が適切に対応する手段がなく深刻な金融危機に拡大するケースが共通して見られる。金融部門に対する財政健全性悪化の副作用は韓国のように非基軸通貨国であり国内総生産(GDP)に対する民間信用比率が非常に高い場合、はるかに大きく表れるという点が多くの実証研究の結果であるだけに注意する必要がある。
政府と財政の存在理由が最初から最後まで国民のためであるため、こうした指摘や主張には一理がある。ただ、一つ前提が必要だ。それは財政維持の可能性を満たすことだ。今年と来年はもちろん中長期的に財政が持続できてこそ積極財政も拡大財政も可能であり、意味がある。国家と政府が永続的なものであるだけに財政もそうでなければいけない。
◆財政資源が枯渇した王朝は滅びる
しつこく財政健全性を強調するのは、政策に失敗した政府は許されても、財政維持の可能性に失敗した政府は許されないからだ。歴史的にも無理な征服戦争や大工事で財政資源の枯渇を招いた王朝はすべて滅びた。財政が中長期的に持続するよう健全な状態を維持するのは政府の選択事項ではなく第一の責務だ。
このような意味で憲法でいう国家の守護とは、国防だけに限られず財政基盤の保存も含む。債務償還能力を喪失した個人や企業は金融機関や公的機関による救済や回復が可能だが、国家は問題の解決に頼れるところがない。国家の大切な資産を売却したりこれを担保に経済的独立を犠牲にして国際金融機構から支援を受けることができるだけだ。財政が最後の砦という言葉はここから出てくる。
◆小規模開放経済に健全財政は宿命
経済規模が小さく他国との貿易の比率が高い小規模開放経済の韓国は大小の外部の衝撃に露出している。このため安定した経済成長のために2つの宿命的な課題を抱えている。十分な外貨準備高と健全な財政基盤の維持がそれだ。
いつでも使用できる対外支給準備資産の不足がいかなる結果をもたらすかは1997年の通貨危機のつらい経験がよく説明している。韓国銀行(韓銀)が現在保有している530兆ウォン(約59兆円)を超える外貨をただ有事に備えた余裕資金というレベルでなく、マクロ経済の安定性を維持するための番人と見るのは、こうした歴史的教訓のおかげだ。
通貨危機の発生が一時的なドル流動性不足のためだと考えて悔しがる人が少なくない。実際、根本的な理由は国家信用管理問題にあるという点を知る必要がある。当時は国際金融市場に外貨建て国債を発行して資本調達をする正常な国家信用システムが作動しない状態だった。国際金融市場で信用が高い国ならドルを一時的に借り入れて容易に解決できた流動性危機が国家的な混乱に飛び火したのだ。
国家の運命を左右する対外信用度の決定で核心的な役割をするものの一つが財政の健全性だ。小規模開放経済国であり分断状況のため安全保障問題まで抱えている韓国にとって、財政の安定性は国際的な信用確保のために要求される宿命と変わらない。名実ともにグローバル先導国に加わるためには、健全な財政管理は予算をどれほど増やすべきかという単純な政策的選択とは次元が違う問題という点を認識しなければいけない。
◆財政健全性の悪化、金融機関の破綻を招く
国家信用度のほかにも財政健全性が経済的に大きな影響を及ぼす部分は多い。例えば金融部門の健全性は財政状態に大きく依存する。民間銀行発行債券のリスクプレミアムは該当国の国債プレミアムと比例する。財政状態が良好でない国は国債に対する要求収益率が相対的に高い水準であり、民間の金融調達費用もそれだけ高まるため、銀行と企業の収益性を落とす。結局、国際競争力で遅れをとる結果をもたらす。
財政健全性の悪化は予期せぬ金融機関の破綻危機を招いたりもする。昨年秋に英国政府の減税案が招いた年金基金破産危機がよい例だ。新型コロナ期間の大規模な財政投入で負債が大きく増えたが、新首相により財源調達策が欠如した減税案が強行されると、財政健全性の悪化を予想した国際金融市場は英国債と英ポンドの売った。その結果、英国債の価値が大きく落ち、これを大量で保有していた多数の年金基金と銀行が資産価値の下落で破綻危機に直面することになった。緊縮金融の手綱を引いたイングランド銀行総裁が願わない政策への急旋回を通じて緊急救済レベルの流動性を解きながら事態はかろうじて落ちついたが、首相はこうした責任から事実上解任された。先進国のうち最も深刻なインフレを経験している英国の現在の状況は、当時の中央銀行の物価対応基調に一部関連しているとみることができる。財政余力が不足した国が過度に財政赤字を増やす場合、金融部門にいかなる危機をもたらすかは、南欧の財政金融危機事例でもよく確認される。
財政余力が十分でなければ銀行の問題に政府が適切に対応する手段がなく深刻な金融危機に拡大するケースが共通して見られる。金融部門に対する財政健全性悪化の副作用は韓国のように非基軸通貨国であり国内総生産(GDP)に対する民間信用比率が非常に高い場合、はるかに大きく表れるという点が多くの実証研究の結果であるだけに注意する必要がある。
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