[イラスト キム・ジユン記者]
最近の経済ニュースを見ると「革命的変化がないならゼロ成長や逆成長を覚悟しなければならない」という暗鬱な展望が現実になるかのようだ。なぜこのような「成長失踪の時代」を迎えることになったのだろうか。どのようにすれば成長停滞のドロ沼を抜け出して再び成長の時代に進むことができるのだろうか。
頭の切れる政府官僚がいち早く先進制度を組み合わせて勤勉な企業家が模倣と応用で世界市場を切り開いてきた「模倣型資本主義」はこれ以上通じず、むしろそれが一番の核心的障害要因になっているようだ。急激な技術革新と急速な社会変化によって世の中はより一層複雑になって不確実性が大きくなった。ところで国家の人材養成と資源配分方式は本質的な変化なく数十年前そのまま維持してきた。
OECD(経済協力開発機構)によると、複雑で不確実性が高い世の中で取引費用削減中心の従来の産業政策と企業政策は限界を露呈した。今日、全世界は高成長スタートアップ育成のためのエコシステムを作ろうとする「創業の時代」に変わった。特に人工知能(AI)技術の発展でさまざまな意志決定をより効率的にできるようになるにつれ、今後経済のスタートアップ化傾向はさらに強化されるだろう。
このようなスタートアップ経済は、経済主導者の相互作用で作り出す非線形性、変化する環境に適応しようとする自己組織化過程から創発される変化の激しい新しい秩序であり複雑系だ。複雑系は多多益善(多ければ多いほどよい)の論理が通じる複合した体系ではない。本質上、外部の人為的介入に適応し、意図しない副作用を作り出すことがある。
スタートアップ起業家本人こそ、問題の定義と仮説検証を通じて素早い試行錯誤と学習という企業家的方法論に長けていた人々だ。そのため政府の目先の資源投入政策だけではスタートアップ・エコシステムの質的成果を引き出すのは難しい。身近な例として韓国の「スタートアップ・アクセラレーター」の事例を見てみよう。
Y-CombinatorやTech starsなど米国に出現したアクセラレーターは、もともと成功したベンチャー企業家が資金・経験・ネットワークを用いて後輩スタートアップを早期に成長させるプログラムだ。そのため「スタートアップ工場」と呼ぶことができる。
韓国はベンチャー投資促進法に基づき1億ウォン(約1056万円)以上の資本金と専門人材を保有すればアクセラレーターとして登録することができる。2017年制度導入以降、6年余りとなる今年2月末基準で、アクセラレーター421カ所がスタートアップ5152件を育てている。だが、アクセラレーターとスタートアップの外形は急激に増加したが、アクセラレーターの大部分がグローバル力量を確保しているケースは珍しい。さらに形だけアクセラレーターであることが韓国の現実だ。「民間投資主導型技術創業支援(TIPS)プログラム」もグローバル市場を狙うスタートアップの育成を目指している。
だが、国内Eコマース市場中心のユニコーン誕生に寄与したことを除けば明確なグローバル成功事例が見られない。
大きくなる不確実性が持つ危険要因は創意性と敏捷性を発揮すれば逆に機会要因となる。結局、素早い変化と高い不確実性に対応するための核心的な競争要因である敏捷性とボトムアップ式アプローチがカギだ。
スタートアップ・エコシステムは本質で複雑性に対する機敏な対応と創意性を意味する。部分を凌駕する全体を把握するシステム思考とともに多様性や試行錯誤を容認する確率的思考を組み合わせなければならない。そうしてこそ目先の政府介入方式から抜け出して長期的なスタートアップ・エコシステムの質的成長を実現することができるだろう。
尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領の米国ボストン訪問は韓米両国の先端産業革新クラスター同士の協力を通じて大韓民国スタートアップがグローバルスタートアップ・エコシステムに進入する本格的契機とすることができるはずだ。韓国スタートアップのグローバル化のための歩みが、大韓民国が再び成長の時代に進むパラダイム転換点になることを期待する。
キム・ヨンテ/KAIST(韓国科学技術院)教授、技術経営専門大学院企業家精神研究センター長
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