3月6日に韓国政府が強制徴用工賠償問題に対して第三者代位弁済による解決策を提示して以降、韓日関係が改善に向かっている。韓国政府の果敢な決定を眺める日本政府の反応よりも目を引いたのは米国政府の呼応だった。当日、バイデン大統領は「協力とパートナーシップの革新的な新たな1ページ」と評価した。ブリンケン国務長官も韓日米関係について「自由で開かれたインド太平洋ビジョンの中心」と述べた。
韓日関係改善を歓迎するワシントンの雰囲気の中で行われた尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領の米国賓訪問は過去のどの首脳会談よりも成功した。ワシントンポストとニューヨークタイムズが共に韓米首脳会談を写真と共に詳細に報道したのは異例だ。北朝鮮の核の脅威に対処するための「拡大抑止」(核の傘)強化に向けたワシントン宣言は韓米同盟関係を新しいレベルに引き上げた。韓国がワシントンを動かすには日本との関係改善が最も効果的な手段になるという尹大統領の地政学的判断が成功したのだ。
東京で韓米首脳会談を見守った岸田首相は広島G7サミット(主要7カ国首脳会談)を控えた状況にもかかわらず7日に訪韓した。韓日間の復元を約束した「シャトル外交」の一環だが、バイデン大統領の意中を念頭に置いた決定と見ることができる。
21日に広島G7サミットで会った韓日米首脳がバイデン大統領の招請で近く米国で会談することにした。北朝鮮の核の脅威に対処するための拡大抑止協議体を拡大し、日本を含める案が議論されると予想される。韓国が直面している北東アジアの地政学的安保環境は非常に流動的だ。米中の構造的葛藤と台湾問題、ウクライナ戦争をきっかけにロシア・中国が連携するのは不吉だ。国連安保理での中露連携を核・ミサイル開発に利用しようとする北朝鮮の動きも放置できない。
自由民主主義の価値に基づいた尹大統領の韓米同盟強化と韓日米連携の努力が中露を刺激することを懸念する声もある。こうした主張に一理ないわけではないが、韓国が直面した地政学的なリスクはさらに深刻だ。今の情勢で「安米経中(安保は米国、経済は中国)」パラダイムの維持は難しい。中間者的な立場での均衡者論は双方から不信感を招くリスクが高い。米中半導体戦争に見られるように経済と安保を分離しにくい状況だ。「経済安全保障」という概念が意味するように、先端技術の取引が招く安保的リスク要因を無視できない。
韓国は半導体分野で大きな危機を迎えている。韓日が歴史認識問題で争う間、米国・日本・台湾は半導体関連の対中国連合戦線を形成した。ここから韓国が除外される状況を招いたのは極めて遺憾だ。日米の立場で見ると、韓国が中国の軌道に引き込まれるかもしれないという懸念があったはずだ。台湾半導体企業TSMCが韓国に投資する当初の計画をやめて熊本に大規模な工場を建設するのは、韓国半導体産業には大きな挑戦だ。日本は米国の積極的な支援と協力でまた半導体強国になるために大規模な投資をしている。
4大強国に囲まれた韓半島(朝鮮半島)の地政学と、勢力均衡の変化に鈍感で20世紀初めに国を失った旧韓末の悲劇を忘れてはいけない。ロシアの東アジア進出を牽制しようという米英の支援で日本は1905年にロシアとの戦争で勝利し、韓半島で優越的地位を確立することができた。日本は列強間の勢力変化の推移を地政学的な観点で綿密に把握して英国と同盟関係を締結し、これをうまく活用した。半面、大韓帝国は独立を守るのに必要な同盟パートナー確保に失敗し、結局、日本の植民支配を受ける運命になった。
韓日関係改善と安保協力は日本の立場でも重要な地政学的課題だ。尹大統領の勇気ある政治的決断が実を結ぶよう岸田首相もより一層積極的に動くべきだ。韓国の国内政治的状況が悪化して韓日関係がまた緊張局面を迎えれば、日本も戦略的損失が避けられないだろう。未来志向的で長期的な戦略的思考が両国の政治リーダーシップに強く求められる。
柳明桓(ユ・ミョンファン)元外交通商部長官/韓半島平和構築理事
◇外部執筆者のコラムは中央日報の編集方針と異なる場合があります。
韓日関係改善を歓迎するワシントンの雰囲気の中で行われた尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領の米国賓訪問は過去のどの首脳会談よりも成功した。ワシントンポストとニューヨークタイムズが共に韓米首脳会談を写真と共に詳細に報道したのは異例だ。北朝鮮の核の脅威に対処するための「拡大抑止」(核の傘)強化に向けたワシントン宣言は韓米同盟関係を新しいレベルに引き上げた。韓国がワシントンを動かすには日本との関係改善が最も効果的な手段になるという尹大統領の地政学的判断が成功したのだ。
東京で韓米首脳会談を見守った岸田首相は広島G7サミット(主要7カ国首脳会談)を控えた状況にもかかわらず7日に訪韓した。韓日間の復元を約束した「シャトル外交」の一環だが、バイデン大統領の意中を念頭に置いた決定と見ることができる。
21日に広島G7サミットで会った韓日米首脳がバイデン大統領の招請で近く米国で会談することにした。北朝鮮の核の脅威に対処するための拡大抑止協議体を拡大し、日本を含める案が議論されると予想される。韓国が直面している北東アジアの地政学的安保環境は非常に流動的だ。米中の構造的葛藤と台湾問題、ウクライナ戦争をきっかけにロシア・中国が連携するのは不吉だ。国連安保理での中露連携を核・ミサイル開発に利用しようとする北朝鮮の動きも放置できない。
自由民主主義の価値に基づいた尹大統領の韓米同盟強化と韓日米連携の努力が中露を刺激することを懸念する声もある。こうした主張に一理ないわけではないが、韓国が直面した地政学的なリスクはさらに深刻だ。今の情勢で「安米経中(安保は米国、経済は中国)」パラダイムの維持は難しい。中間者的な立場での均衡者論は双方から不信感を招くリスクが高い。米中半導体戦争に見られるように経済と安保を分離しにくい状況だ。「経済安全保障」という概念が意味するように、先端技術の取引が招く安保的リスク要因を無視できない。
韓国は半導体分野で大きな危機を迎えている。韓日が歴史認識問題で争う間、米国・日本・台湾は半導体関連の対中国連合戦線を形成した。ここから韓国が除外される状況を招いたのは極めて遺憾だ。日米の立場で見ると、韓国が中国の軌道に引き込まれるかもしれないという懸念があったはずだ。台湾半導体企業TSMCが韓国に投資する当初の計画をやめて熊本に大規模な工場を建設するのは、韓国半導体産業には大きな挑戦だ。日本は米国の積極的な支援と協力でまた半導体強国になるために大規模な投資をしている。
4大強国に囲まれた韓半島(朝鮮半島)の地政学と、勢力均衡の変化に鈍感で20世紀初めに国を失った旧韓末の悲劇を忘れてはいけない。ロシアの東アジア進出を牽制しようという米英の支援で日本は1905年にロシアとの戦争で勝利し、韓半島で優越的地位を確立することができた。日本は列強間の勢力変化の推移を地政学的な観点で綿密に把握して英国と同盟関係を締結し、これをうまく活用した。半面、大韓帝国は独立を守るのに必要な同盟パートナー確保に失敗し、結局、日本の植民支配を受ける運命になった。
韓日関係改善と安保協力は日本の立場でも重要な地政学的課題だ。尹大統領の勇気ある政治的決断が実を結ぶよう岸田首相もより一層積極的に動くべきだ。韓国の国内政治的状況が悪化して韓日関係がまた緊張局面を迎えれば、日本も戦略的損失が避けられないだろう。未来志向的で長期的な戦略的思考が両国の政治リーダーシップに強く求められる。
柳明桓(ユ・ミョンファン)元外交通商部長官/韓半島平和構築理事
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