わずか30年前まで、韓国は「人が資源」の若く密度の高い国だった。1992年、韓国には73万678人の新生児が誕生し、すべての韓国人を年齢順に並べると、最も中央に位置する人の年齢である「中位年齢」は27.9歳にすぎなかった。しかし、少子高齢化現象が深刻化し、今ではまるで伝説の中にしか存在しないような数字になってしまった。昨年の出生児数は24万9031人で、この30年間で3分の1に減り、中位年齢は45歳に急上昇した。
人口が減り、若者はさらに減少しているため、働ける労働力も深刻なほど減少している。このため農漁業や製造業などの生産現場では、すでに外国人なしでは回らない状態になっている。狭義には労働力不足の解決、広義には韓国経済の持続的成長と韓国社会の持続可能性維持のために、移民拡大が不可避だという声が高まっているのはこのためだ。
しかし、韓国はまだ移民庁すら設立できてない上に、外国人労働力の受け入れも20年前に作られた雇用許可制に基づいているのが現状だ。このままでは、近いうちに到来する「移民誘致競争」に勝てないという危機感が高まっている。
実際に程度の差はあるが、経済が一定の軌道に乗った国々は例外なく少子高齢化の問題に直面し、これを解決するために積極的な移民誘致政策を展開している。中央日報は、予見される「移民時代」に適切に備えようという観点から、韓国の現状を振り返り、主要な移民誘致競争国と人材送出国、移民誘致に成功した先進国の現場を取材した。
まず、韓国と最も似た人口構造と国民感情を持ち、将来的に韓国の移民誘致競争国になると考えられる日本の状況と取り組みを現地取材を通じて紹介する。外国人に対する閉鎖性で有名だった日本は、「制度面では韓国を追い越した」と評価されるほど革新的な変化を遂げていた。
◇都内の介護施設で外国人採用…日本「鎖国」の柵を取り払った
「おいしかったですか?」(うなずく)「よかったね」
先月12日、東京都新宿区の介護施設「ナーシングヴィラ・ルネッサ四谷」。20代の女性が70代の女性に「昼食はおいしかったか」と尋ねた。入れ歯を外していたおばあさんは、車椅子に座ったまま気持ち良さそうにうなずいた。その手には、その日午前中に介護施設のアクティビティで作った風車が握られていた。それを見た若い女性は「楽しかった?」と声をかけ、会話を続けた。おばあさんに日本語で温かい言葉をかけたのは日本人ではなく、フィリピン人労働者だった。
アクセル・ネイディンさん(21、フィリピン)は、昨年2月に日本の介護施設に就職した。現在、同施設の職員25人のうち5人は外国人だ。近年、新型コロナウイルス感染症の影響で外国人採用が難しくなったが、2月に4人(ミャンマー2人、フィリピン2人)を採用した。ナーシングヴィラの伊奈義将・事業本部長は「施設は東京にあるにもかかわらず、日本人は採用が難しいのが現状」とし「外国人でもここで働いてくれるだけで感謝するくらいだが、患者や保護者の満足度も高く、もっと採用したい」と話した。
◇日本初代入国管理局長「選ばれる国にする」
日本の高齢者の介護を外国人が担っているのは、日本の労働力がそれだけ不足しているからだ。最近はこの問題が地方を越えて東京まで広がっている。30年近く続く高齢化の余波だ。日本は1995年に高齢社会(総人口のうち65歳以上の割合が7%以上)に入り、2006年には65歳以上の人口が20.2%を超え、超高齢社会となった。1995年に8700万人でピークを迎えた日本の生産可能人口(15歳以上64歳以下の人口)は現在7420万人(2022年基準)まで減少した。韓国京畿道(キョンギド)の人口(1360万人)に達する労働力が蒸発したことになる。日本経済の「失われた30年」もこれと無関係ではない。
状況が深刻化すると、外国人に対する閉鎖性で有名だった日本も変わり、外国人人材を受け入れるために積極的に移民政策を変え、人材の門戸を開放し始めた。
日本の移民政策の変化が注目されるのは、日本が高齢人口の増加速度や産業発展過程、政府政策などの面で韓国と最も類似している国だからだ。中央日報は先月、「グローバル移民時代」の参考事例にもなり競争対象にもなり得る日本の移民政策を取材するために日本を訪れ、初代出入国在留管理庁長官をはじめ、国会議員や教授などにも会った。日本人よりも外国人のほうが多く暮らしているアパート団地や積極的に外国人労働者を採用している介護施設などの現場を訪問することができ、有意義な時間となった。
先月10日に会った初代出入国在留管理庁長官である佐々木聖子氏は、「今の日本を(外国人に)『選ばれる国』にするという覚悟」と強調した。出入国在留管理庁は日本の移民局格の機関だ。日本は2019年にこの機関を新設し、まだ移民庁がない韓国を一歩リードした。
◇閉鎖国・日本、30年ぶりに変化…技能実習制度見直しを念頭に
日本は特に「外国人を受け入れる入り口」そのものを変えるほど積極的だ。「技能実習制度」廃止計画が代表的だ。この制度は、日本が1993年から30年間運用してきた海外の低熟練労働者の採用窓口だ。開発途上国の外国人が日本で一定レベルの技術を研修すれば就職できるようにしているのが骨子だ。
昨年基準で日本の外国人数は307万5213人で史上初めて300万人を超えた。留学生と永住者を除く150万人の外国人のうち、約20%(32万5000人)が技能実習制度を通じて入国した。
しかし、日本国内ではこの制度が「時代遅れの制度」と批判されてきた。実際、この制度は「国際貢献」というやや奇妙な目的を持っている。外国人労働者を受け入れるためではなく、しっかりと教育して本国に帰国させ、国際社会に貢献するための制度だというのが日本政府の主張だった。この制度を通じて就職した外国人は、数回の在留延長に成功しても、最大5年までしか日本に滞在できない。身分も「労働者」ではなく「実習生」にすぎない。日本政府がこの制度を導入する際、外国人に対する反感が大きい国民感情に配慮したため、このような「中途半端な制度」が作られ、これまで存在してきた。
このため、日本国内でも「実際の目的と乖離した偽善的な制度」という批判がつきまとう。苦労して外国人を教育して熟練人材に育てても、継続的な雇用につなげることができないという限界も明らかだった。外国人を「仲間」として認めないため、長時間労働や低賃金など人権侵害問題も多く聞かれた。米国務省が2021年に発表した人身売買報告書も「外国を拠点とする人身売買業者と国内業者が外国人労働者を搾取するためにこの制度を悪用している」と批判した。
日本はこのような批判や労働力不足などを考慮し、昨年4月からこの制度に対する廃止手続きに着手した。読売新聞など現地メディアによると、日本国際協力機構(JICA)の田中明彦理事長が座長を務めた有識者会議は先月10日、「技能実習制度実習生の労働力を(日本が)活用しているという事実を認める必要がある。もはや『国際貢献』だけを掲げることは望ましくない」という内容を盛り込んだ廃止案の草案を作成した。最終案は今年秋ごろに出る予定だ。
「日本はすでに韓国を追い越した」…鎖国主義も捨て、移民受け入れに一歩(2)
人口が減り、若者はさらに減少しているため、働ける労働力も深刻なほど減少している。このため農漁業や製造業などの生産現場では、すでに外国人なしでは回らない状態になっている。狭義には労働力不足の解決、広義には韓国経済の持続的成長と韓国社会の持続可能性維持のために、移民拡大が不可避だという声が高まっているのはこのためだ。
しかし、韓国はまだ移民庁すら設立できてない上に、外国人労働力の受け入れも20年前に作られた雇用許可制に基づいているのが現状だ。このままでは、近いうちに到来する「移民誘致競争」に勝てないという危機感が高まっている。
実際に程度の差はあるが、経済が一定の軌道に乗った国々は例外なく少子高齢化の問題に直面し、これを解決するために積極的な移民誘致政策を展開している。中央日報は、予見される「移民時代」に適切に備えようという観点から、韓国の現状を振り返り、主要な移民誘致競争国と人材送出国、移民誘致に成功した先進国の現場を取材した。
まず、韓国と最も似た人口構造と国民感情を持ち、将来的に韓国の移民誘致競争国になると考えられる日本の状況と取り組みを現地取材を通じて紹介する。外国人に対する閉鎖性で有名だった日本は、「制度面では韓国を追い越した」と評価されるほど革新的な変化を遂げていた。
◇都内の介護施設で外国人採用…日本「鎖国」の柵を取り払った
「おいしかったですか?」(うなずく)「よかったね」
先月12日、東京都新宿区の介護施設「ナーシングヴィラ・ルネッサ四谷」。20代の女性が70代の女性に「昼食はおいしかったか」と尋ねた。入れ歯を外していたおばあさんは、車椅子に座ったまま気持ち良さそうにうなずいた。その手には、その日午前中に介護施設のアクティビティで作った風車が握られていた。それを見た若い女性は「楽しかった?」と声をかけ、会話を続けた。おばあさんに日本語で温かい言葉をかけたのは日本人ではなく、フィリピン人労働者だった。
アクセル・ネイディンさん(21、フィリピン)は、昨年2月に日本の介護施設に就職した。現在、同施設の職員25人のうち5人は外国人だ。近年、新型コロナウイルス感染症の影響で外国人採用が難しくなったが、2月に4人(ミャンマー2人、フィリピン2人)を採用した。ナーシングヴィラの伊奈義将・事業本部長は「施設は東京にあるにもかかわらず、日本人は採用が難しいのが現状」とし「外国人でもここで働いてくれるだけで感謝するくらいだが、患者や保護者の満足度も高く、もっと採用したい」と話した。
◇日本初代入国管理局長「選ばれる国にする」
日本の高齢者の介護を外国人が担っているのは、日本の労働力がそれだけ不足しているからだ。最近はこの問題が地方を越えて東京まで広がっている。30年近く続く高齢化の余波だ。日本は1995年に高齢社会(総人口のうち65歳以上の割合が7%以上)に入り、2006年には65歳以上の人口が20.2%を超え、超高齢社会となった。1995年に8700万人でピークを迎えた日本の生産可能人口(15歳以上64歳以下の人口)は現在7420万人(2022年基準)まで減少した。韓国京畿道(キョンギド)の人口(1360万人)に達する労働力が蒸発したことになる。日本経済の「失われた30年」もこれと無関係ではない。
状況が深刻化すると、外国人に対する閉鎖性で有名だった日本も変わり、外国人人材を受け入れるために積極的に移民政策を変え、人材の門戸を開放し始めた。
日本の移民政策の変化が注目されるのは、日本が高齢人口の増加速度や産業発展過程、政府政策などの面で韓国と最も類似している国だからだ。中央日報は先月、「グローバル移民時代」の参考事例にもなり競争対象にもなり得る日本の移民政策を取材するために日本を訪れ、初代出入国在留管理庁長官をはじめ、国会議員や教授などにも会った。日本人よりも外国人のほうが多く暮らしているアパート団地や積極的に外国人労働者を採用している介護施設などの現場を訪問することができ、有意義な時間となった。
先月10日に会った初代出入国在留管理庁長官である佐々木聖子氏は、「今の日本を(外国人に)『選ばれる国』にするという覚悟」と強調した。出入国在留管理庁は日本の移民局格の機関だ。日本は2019年にこの機関を新設し、まだ移民庁がない韓国を一歩リードした。
◇閉鎖国・日本、30年ぶりに変化…技能実習制度見直しを念頭に
日本は特に「外国人を受け入れる入り口」そのものを変えるほど積極的だ。「技能実習制度」廃止計画が代表的だ。この制度は、日本が1993年から30年間運用してきた海外の低熟練労働者の採用窓口だ。開発途上国の外国人が日本で一定レベルの技術を研修すれば就職できるようにしているのが骨子だ。
昨年基準で日本の外国人数は307万5213人で史上初めて300万人を超えた。留学生と永住者を除く150万人の外国人のうち、約20%(32万5000人)が技能実習制度を通じて入国した。
しかし、日本国内ではこの制度が「時代遅れの制度」と批判されてきた。実際、この制度は「国際貢献」というやや奇妙な目的を持っている。外国人労働者を受け入れるためではなく、しっかりと教育して本国に帰国させ、国際社会に貢献するための制度だというのが日本政府の主張だった。この制度を通じて就職した外国人は、数回の在留延長に成功しても、最大5年までしか日本に滞在できない。身分も「労働者」ではなく「実習生」にすぎない。日本政府がこの制度を導入する際、外国人に対する反感が大きい国民感情に配慮したため、このような「中途半端な制度」が作られ、これまで存在してきた。
このため、日本国内でも「実際の目的と乖離した偽善的な制度」という批判がつきまとう。苦労して外国人を教育して熟練人材に育てても、継続的な雇用につなげることができないという限界も明らかだった。外国人を「仲間」として認めないため、長時間労働や低賃金など人権侵害問題も多く聞かれた。米国務省が2021年に発表した人身売買報告書も「外国を拠点とする人身売買業者と国内業者が外国人労働者を搾取するためにこの制度を悪用している」と批判した。
日本はこのような批判や労働力不足などを考慮し、昨年4月からこの制度に対する廃止手続きに着手した。読売新聞など現地メディアによると、日本国際協力機構(JICA)の田中明彦理事長が座長を務めた有識者会議は先月10日、「技能実習制度実習生の労働力を(日本が)活用しているという事実を認める必要がある。もはや『国際貢献』だけを掲げることは望ましくない」という内容を盛り込んだ廃止案の草案を作成した。最終案は今年秋ごろに出る予定だ。
「日本はすでに韓国を追い越した」…鎖国主義も捨て、移民受け入れに一歩(2)
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