◆ユーロ・円・人民元、トップ基軸通貨には限界
なぜか。米ドルのような基軸通貨になるためには強力な軍事力と経済力が伴わなければいけない。こうした点でどの国もまだ米国の相手にはならない。開放されて信頼されるほどの資本市場も必須だ。
米ドルの最大の強みは豊富な流動性だ。米ドルは地球のどこでも通用する。北朝鮮でも使用される。しかし苦労なくこのような状況になったのではない。米国政府が長い財政赤字と経常赤字を覚悟しながら米ドルを世界に広めた結果だ。米国のほかにはこれに耐えられる国が現在のところ見られない。
さらに米ドル覇権に挑戦する他の通貨にはそれぞれ弱点がある。2位の基軸通貨のユーロは欧州連合(EU)の通貨だ。EUはECBという通貨当局を持つが、単一財政当局がないという限界がある。日本円の場合、通貨の価値に問題がある。長期デフレから抜け出すためにマイナス金利と量的緩和を続けたことで円安が定着した。人民元は中国当局の資本統制が障害だ。当局が為替市場に介入し、金融市場と財政が透明でない。
米国際分野のシンクタンク「アトランティックカウンシル」は「当分は他のどの国も(米国のような)基軸通貨国になるために必要なことをする意志もなく、そうすることもできない」と評価した。
通貨専門家の結論は、「脱米ドル」の動きは増えているが、ドル覇権時代はまだ幕を閉じないということだ。ブルームバーグは「キングドルが本当に王冠を失うまでは数十年かかるだろう」と予想した。
◆ロシア・イラン、米ドルの代案を摸索
ところが注目すべき点がある。基軸通貨として米ドルの代案を探す、すなわちドル覇権に対する挑戦の一部は米国が自ら招いたという事実だ。近い事例が昨年のロシアによるウクライナ侵攻直後、米国とEUがロシア主要銀行をSWIFT決済網から排除した事件だ。ロシアは国際金融・貿易取引で大きな打撃を受け、その後、人民元やトルコ・リラなど第3の通貨に目を向けた。ロシア輸出代金の人民元決済比率は西側の制裁前の0.5%から16%まで高まった。
英フィナンシャルタイムズ(FT)は早くから「こうした制裁はドル支配力に対する反発を触発するかもしれない」と指摘してきた。中国国営グローバルタイムズは「米国がイランとロシアに深刻な金融・経済制裁を加えてドル使用を制限した中、イランとロシアおよびその他の国が『脱米ドル』に着手した」と分析した。これは米国も認めている。イエレン米財務長官は最近、CNNのインタビューで「ドルの役割と連結する金融制裁を使用すれば、ドルのヘゲモニーを毀損する危険性がある」とし「(こうした制裁は)中国、ロシア、イランにドルの代案を出そうという欲求を呼び起こす」と述べた。
米国の覇権維持のために使用された「ドル武器化」がドル覇権の弱化というブーメランとして戻ってきたのだ。軍事介入が国内外の難関にぶつかり、その空席の相当部分を金融制裁が埋めたが、これに代価を払うことになったのだ。それでもイエレン長官は金融制裁について「極めて重要であり効果的な道具」と強調した。米国にドル武器化をやめる考えがないという声として聞こえる。半面、米国が米ドルを覇権維持の道具として繰り返し活用するほど、制裁対象国の「脱米ドル」の動きは加速するだろう。「ドル覇権」の運命は結局、グローバル覇権競争にかかっている。
イ・サンリョル/論説委員
【コラム】まだドルに代わる通貨は見えない(1)
なぜか。米ドルのような基軸通貨になるためには強力な軍事力と経済力が伴わなければいけない。こうした点でどの国もまだ米国の相手にはならない。開放されて信頼されるほどの資本市場も必須だ。
米ドルの最大の強みは豊富な流動性だ。米ドルは地球のどこでも通用する。北朝鮮でも使用される。しかし苦労なくこのような状況になったのではない。米国政府が長い財政赤字と経常赤字を覚悟しながら米ドルを世界に広めた結果だ。米国のほかにはこれに耐えられる国が現在のところ見られない。
さらに米ドル覇権に挑戦する他の通貨にはそれぞれ弱点がある。2位の基軸通貨のユーロは欧州連合(EU)の通貨だ。EUはECBという通貨当局を持つが、単一財政当局がないという限界がある。日本円の場合、通貨の価値に問題がある。長期デフレから抜け出すためにマイナス金利と量的緩和を続けたことで円安が定着した。人民元は中国当局の資本統制が障害だ。当局が為替市場に介入し、金融市場と財政が透明でない。
米国際分野のシンクタンク「アトランティックカウンシル」は「当分は他のどの国も(米国のような)基軸通貨国になるために必要なことをする意志もなく、そうすることもできない」と評価した。
通貨専門家の結論は、「脱米ドル」の動きは増えているが、ドル覇権時代はまだ幕を閉じないということだ。ブルームバーグは「キングドルが本当に王冠を失うまでは数十年かかるだろう」と予想した。
◆ロシア・イラン、米ドルの代案を摸索
ところが注目すべき点がある。基軸通貨として米ドルの代案を探す、すなわちドル覇権に対する挑戦の一部は米国が自ら招いたという事実だ。近い事例が昨年のロシアによるウクライナ侵攻直後、米国とEUがロシア主要銀行をSWIFT決済網から排除した事件だ。ロシアは国際金融・貿易取引で大きな打撃を受け、その後、人民元やトルコ・リラなど第3の通貨に目を向けた。ロシア輸出代金の人民元決済比率は西側の制裁前の0.5%から16%まで高まった。
英フィナンシャルタイムズ(FT)は早くから「こうした制裁はドル支配力に対する反発を触発するかもしれない」と指摘してきた。中国国営グローバルタイムズは「米国がイランとロシアに深刻な金融・経済制裁を加えてドル使用を制限した中、イランとロシアおよびその他の国が『脱米ドル』に着手した」と分析した。これは米国も認めている。イエレン米財務長官は最近、CNNのインタビューで「ドルの役割と連結する金融制裁を使用すれば、ドルのヘゲモニーを毀損する危険性がある」とし「(こうした制裁は)中国、ロシア、イランにドルの代案を出そうという欲求を呼び起こす」と述べた。
米国の覇権維持のために使用された「ドル武器化」がドル覇権の弱化というブーメランとして戻ってきたのだ。軍事介入が国内外の難関にぶつかり、その空席の相当部分を金融制裁が埋めたが、これに代価を払うことになったのだ。それでもイエレン長官は金融制裁について「極めて重要であり効果的な道具」と強調した。米国にドル武器化をやめる考えがないという声として聞こえる。半面、米国が米ドルを覇権維持の道具として繰り返し活用するほど、制裁対象国の「脱米ドル」の動きは加速するだろう。「ドル覇権」の運命は結局、グローバル覇権競争にかかっている。
イ・サンリョル/論説委員
【コラム】まだドルに代わる通貨は見えない(1)
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