中国の国旗
米国が半導体輸出統制を武器に経済安全保障を強化する中で中国が持ち出す反撃カードとして「レアアース」が注目されている。過去にレアアースの輸出を制限した前歴がある中国政府が最近再び輸出統制の可能性に言及してだ。
欧州連合(EU)は16日、中国産原材料への依存度を低くするための核心原材料法草案を公開した。2030年までに中国をはじめとする第三国から戦略的原材料を輸入する割合を域内全体消費量の65%未満に制限する内容だ。レアアースもここに含まれた。
レアアースは「レア(希少な)」という名前と違い地球上に広く分布する鉱物だ。ただ製錬・分離・精製が難しく、処理過程での環境汚染問題で生産国が限定されるため希少価値が大きい。レアアースは半導体やスマートフォン、電気自動車バッテリーからレーザー、戦闘機まで先端産業に幅広く使われる。「産業のビタミン」と呼ばれる理由だ。
問題は中国がレアアース生産を意のままにするという点だ。米地質調査局によると、2021年基準で世界のレアアース生産の60%を中国が占めた。続けて米国が15.4%、ミャンマーが9.3%、オーストラリアが7.9%の順だ。韓国の中国産レアアース輸入依存度も70%以上だ。
こうした中国の最近の動きが尋常でない。中国政府はトランプ米大統領が在任した2019年5月に米国との貿易戦争が最高潮に達すると「レアアース武器化」を公式に言及した。2021年にはレアアース国有企業3カ所と研究所2カ所を統合した中国稀土グループを設立した。レアアース生産量の70%を1社に集めて市場支配力を高めた。
中国稀土グループ高位関係者は昨年10月、中国の国営英字紙グローバルタイムズを通じ「サマリウムコバルトを抽出できる国は中国だけだ。米国が戦闘機から中国産レアアースを排除できるのか」と警告した。
先月には中国商務部が「中国輸出禁止・輸出制限技術目録」命令修正案に関する公開ヒアリング通知を公告したが輸出禁止項目にレアアースを含めた。
尻に火がついた米国もレアアース輸入依存を低くするための対応案をまとめているが力不足だ。資源そのものが少ない上に生産しても環境破壊、水資源汚染への懸念で住民の反対が激しい。
漢陽(ハニャン)大学国際学部のキム・ヨンギュ教授は、「米中覇権競争が激化してコーナーに追い詰められれば中国はいつでもレアアース輸出制限カードを切ることができる。特に韓国は米国と同盟で絡まる上に、バッテリーや防衛産業など最近力を入れている産業にレアアースが必須資源のためさらに脆弱になりかねない」と診断した。
実際に中国は2010年に日本と尖閣諸島をめぐる紛争が起きた時に日本へのレアアース輸出を統制した前例がある。日本はオーストラリア、インド、カザフスタン、ベトナムなどでレアアース開発権を獲得するなどして2012年までにレアアースの中国からの輸入割合を49%に引き下げた。
韓国産業通商資源部は先月、「核心鉱物確保戦略」を発表するなど対応に出た。レアアースを含んだ核心鉱物の中国依存度を2030年までに50%まで引き下げ、備蓄日数は2倍に増やすことにした。
産業通商資源部エネルギー政策室のチョン・ヨンギル室長は「海外資源開発が民間中心だが政府支援を増やして企業の負担を減らしたい」と話した。大韓商工会議所のウ・テヒ常勤副会長は「韓中自由貿易協定(FTA)のエネルギーと資源協力条項を根拠に中国と『レアアース協議体』を作って供給を確保しなければならない」と助言した。
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