「ご苦労だった。ベンチに戻りなさい」(金寅植コーチ)
「だめです。安打を打たれたら交代してください」(具台晟投手)
「あまりにもリスクが高いからだめだ」 (金コーチ)
「では、打たれないようにします」(具台晟)
2000年9月27日、豪シドニーベースボールスタジアムでシドニーオリンピック(五輪)野球の韓日戦が行われた。9回表にマウンドに向かった金寅植(キム・インシク)コーチが降板を指示すると、具台晟(ク・デソン)は続投を望んだ。韓国と日本にとって共に負けられない試合だった。銅メダルがかかる3位決定戦だった。球場では1万4058人の観客が息をのんで試合を観戦していた。現場には日本最高の作家の一人、村上春樹もいた。
韓国はこの試合を3-1で終え、劇的な勝利をつかんだ。先発投手の具台晟はこの日、なんと155球を投げて完投勝利した。日本が誇る剛速球投手の松坂大輔も160球を投げ、3失点で「完投負け」した。
韓国野球史上最高の名勝負に挙げられるほどの試合だった。運命の8回裏、二死二、三塁のチャンスで李承ヨプ(イ・スンヨプ)が打席に入った。それまで3打席3三振だった李承ヨプはフルカウントから力強くスイングし、2打点二塁打を放った。観客席に座っていた村上春樹の表情がはっきりと目に浮かぶ。彼は悔しさからテーブルを手で叩いた。村上春樹は後にエッセイ集『シドニー!』でこのように書いた。
「松坂から普段の威圧感が感じられなかった。ライオンでなく借りてきた猫のように見えた」。
一方、具台晟はこう振り返った。「一度も私が酷使されたと思ったことはない。1イニングでも多く投げられるのがよかった」( 『具台晟は負けない』 2021年、サルリム出版社)
「野球ワールドカップ」と呼ばれるワールドベースボールクラシック(WBC)に出場した韓国代表の試合を見ながら、23年前にシドニー五輪の現場で見たこの試合を思い出した。選手たちの顔、規則が変わったとはいえ、野球の本質は変わらない。真摯かつ誠実な姿勢でボール1球に最善を尽くすことだ。金星根(キム・ソングン)監督がいう「一球二無」も同じだ。「一球にすべてを賭ける、2度目はない」ということだ。
今年のWBCに出場した韓国代表チームにはこのような姿が見られなかった。23年前の先輩たちの闘魂は期待もしない。投手はストライクが入らず、打者は次々と倒れた。集中力は乱れ、ミスが続いた。二塁打を打ちながらも拍手を誘導してタッチアウトになった場面は海外トピックになった。
拙戦をして1次リーグ敗退となった韓国代表を見ながら失望した人は少なくない。スポーツの試合では勝つことも負けることもあるが、2021年東京五輪に続いて今大会で見せた野球代表チームの態度と競技力は国民の期待に及ばなかった。3年前には敗色濃厚の状況でベンチでもたれながらガムを噛み、今度はヒットを打った後にパフォーマンスをしてベースから足を離し、タッチアウトになった。いくら血気旺盛な若い選手とはいえ、これがミスで済むだろうか。
2000年シドニー五輪当時、具台晟は一球一球に闘魂を込めて投げた。試合後にスパイクを脱ぐと足から血が流れるほどだった。もちろん最近はこれほど多くの球を投げない。先発投手と中継ぎ、抑えの分業が徹底していて、100球を超えるケースは少ない。
そうだとしても野球に対する具台晟の態度と闘魂は後輩たちに手本となる。具台晟はスポーツ選手というよりも求道者に近い。体重が増えないよう一日2食にして練習を怠らない。それで具台晟は2023年にもマウンドに立って投球する。54歳の年齢でも先月オーストラリアリーグで登板し、1イニングを投げて2三振を奪った。
具台晟は言う。「私の練習は実戦と変わらない。練習を100%でしなければ実戦で満足な投球ができない」「無限の努力と練習の繰り返しだけが完ぺきに近づく答えだということを悟った」(『具台晟は負けない』)。
野球韓国代表は東京五輪で6カ国のうち4位に終わった。今回のWBCでも1次リーグ敗退となり、14日に帰国した。23年前の村上春樹の言葉を借りればこのようになる。
「韓国チームから普段の威圧感が感じられなかった。虎でなく借りてきた猫のように見えた」。
チョン・ジェウォン/スポーツディレクター
「だめです。安打を打たれたら交代してください」(具台晟投手)
「あまりにもリスクが高いからだめだ」 (金コーチ)
「では、打たれないようにします」(具台晟)
2000年9月27日、豪シドニーベースボールスタジアムでシドニーオリンピック(五輪)野球の韓日戦が行われた。9回表にマウンドに向かった金寅植(キム・インシク)コーチが降板を指示すると、具台晟(ク・デソン)は続投を望んだ。韓国と日本にとって共に負けられない試合だった。銅メダルがかかる3位決定戦だった。球場では1万4058人の観客が息をのんで試合を観戦していた。現場には日本最高の作家の一人、村上春樹もいた。
韓国はこの試合を3-1で終え、劇的な勝利をつかんだ。先発投手の具台晟はこの日、なんと155球を投げて完投勝利した。日本が誇る剛速球投手の松坂大輔も160球を投げ、3失点で「完投負け」した。
韓国野球史上最高の名勝負に挙げられるほどの試合だった。運命の8回裏、二死二、三塁のチャンスで李承ヨプ(イ・スンヨプ)が打席に入った。それまで3打席3三振だった李承ヨプはフルカウントから力強くスイングし、2打点二塁打を放った。観客席に座っていた村上春樹の表情がはっきりと目に浮かぶ。彼は悔しさからテーブルを手で叩いた。村上春樹は後にエッセイ集『シドニー!』でこのように書いた。
「松坂から普段の威圧感が感じられなかった。ライオンでなく借りてきた猫のように見えた」。
一方、具台晟はこう振り返った。「一度も私が酷使されたと思ったことはない。1イニングでも多く投げられるのがよかった」( 『具台晟は負けない』 2021年、サルリム出版社)
「野球ワールドカップ」と呼ばれるワールドベースボールクラシック(WBC)に出場した韓国代表の試合を見ながら、23年前にシドニー五輪の現場で見たこの試合を思い出した。選手たちの顔、規則が変わったとはいえ、野球の本質は変わらない。真摯かつ誠実な姿勢でボール1球に最善を尽くすことだ。金星根(キム・ソングン)監督がいう「一球二無」も同じだ。「一球にすべてを賭ける、2度目はない」ということだ。
今年のWBCに出場した韓国代表チームにはこのような姿が見られなかった。23年前の先輩たちの闘魂は期待もしない。投手はストライクが入らず、打者は次々と倒れた。集中力は乱れ、ミスが続いた。二塁打を打ちながらも拍手を誘導してタッチアウトになった場面は海外トピックになった。
拙戦をして1次リーグ敗退となった韓国代表を見ながら失望した人は少なくない。スポーツの試合では勝つことも負けることもあるが、2021年東京五輪に続いて今大会で見せた野球代表チームの態度と競技力は国民の期待に及ばなかった。3年前には敗色濃厚の状況でベンチでもたれながらガムを噛み、今度はヒットを打った後にパフォーマンスをしてベースから足を離し、タッチアウトになった。いくら血気旺盛な若い選手とはいえ、これがミスで済むだろうか。
2000年シドニー五輪当時、具台晟は一球一球に闘魂を込めて投げた。試合後にスパイクを脱ぐと足から血が流れるほどだった。もちろん最近はこれほど多くの球を投げない。先発投手と中継ぎ、抑えの分業が徹底していて、100球を超えるケースは少ない。
そうだとしても野球に対する具台晟の態度と闘魂は後輩たちに手本となる。具台晟はスポーツ選手というよりも求道者に近い。体重が増えないよう一日2食にして練習を怠らない。それで具台晟は2023年にもマウンドに立って投球する。54歳の年齢でも先月オーストラリアリーグで登板し、1イニングを投げて2三振を奪った。
具台晟は言う。「私の練習は実戦と変わらない。練習を100%でしなければ実戦で満足な投球ができない」「無限の努力と練習の繰り返しだけが完ぺきに近づく答えだということを悟った」(『具台晟は負けない』)。
野球韓国代表は東京五輪で6カ国のうち4位に終わった。今回のWBCでも1次リーグ敗退となり、14日に帰国した。23年前の村上春樹の言葉を借りればこのようになる。
「韓国チームから普段の威圧感が感じられなかった。虎でなく借りてきた猫のように見えた」。
チョン・ジェウォン/スポーツディレクター
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