国際通貨基金(IMF)によると、昨年、韓国の1人当たりの国内総生産(GDP)は3万3592ドル(現レートで約457万円)と推定され、日本(3万4358ドル)より766ドル少なかった。テレビ・冷蔵庫・洗濯機などの家電では韓国が日本を追い越して久しく、自動車・鉄鋼・造船分野でも日本と対等に競争している。
1985年には世界10大半導体企業の5社が日本企業だったが、今は1社も入っていない。韓国のサムスン電子・SKハイニックスが世界10大半導体企業となった。音楽・映画・ドラマなど文化産業でもK-POPがJ-POPを圧倒し、世界的地位を高めた。
◇韓国半導体の猛追に対策講じる日本
日本はアナログ的製造業中心の戦略に安住し、デジタル・先端技術経済への迅速な切り替えに失敗した。企業の生産性が落ち、労働者の賃金を引き上げることができず、物価上昇の誘導にも失敗したことで、日本人の生活の質は低下した。
最近、日本のNHK放送で、元小学校教師など8人の若い日本人がオーストラリアの農場で集団生活をしながら一日6時間ブルーベリーを収穫する仕事をし、日本の2倍以上に当たる50万円の給料をもらっているという内容を見て衝撃を受けた。日本のバブル経済絶頂期だった1980年代半ばには、日本の資産価値が米国の3.5倍にもなるという評価もあった。このような日本の現実を見ながら、経済と産業の光速の変化を予測して迅速に対応できなければ、いくら難攻不落と見える経済も崩壊しかねないということを痛感することになる。
ところが、IMFの今年の国別経済展望を見ると、世界全体の成長率が2.8%、日本が1.8%、韓国が1.7%だ。1999年以降、成長率で持続的に日本をリードしてきた韓国が、今年は日本に後れを取るという暗鬱な予測だ。
日本政府は韓国の追撃に危機を感じ、対策作りに乗り出した。日本政府は補助金4760億円を投入し、熊本に世界最大のファウンドリー会社の台湾TSMCの工場を誘致し、日本国内の半導体供給不足を軽減させる計画だ。また、日本政府の介入により大手企業8社が共同出資した「ラピダス」という半導体コンソーシアムを結成した。その他、観光・農水産物など多様な分野で、外貨を稼げるのであれば政府が積極的に民間を支援するという姿勢だ。
韓国は日本より人口が少なく資源もない。また、北朝鮮という大きな安保リスクを抱えており、地政学的限界のため世界秩序を先導する国家群に入ることができない。したがって、韓国は経済が崩壊すれば、ほとんどすべてを失ってしまう。国民の生活が疲弊するのはもちろん、安保環境も弱くなり、国際社会での存在感と影響力も墜落せざるを得ない。我々皆が当然視する市場経済と民主主義も揺らぎかねない。
さらに激化する米中覇権競争は経済・安保の両分野であまりにも急激に展開され、思考と戦略の根本的再構成と変化を要求している。もちろん、経済・安保で外交が介入する領域もはるかに広がった。
◇EU離脱の英国、マイナス成長の見通し
韓国外交が国の安定と繁栄を最優先にする極端なほどの実用主義で展開されなければならない厳しい環境だ。そのためには、重要な外交イシューを政争化することを自制し、国民の世論の分裂を改善して実用外交を可能にする外交生態系を作る努力が求められる。
英国はポピュリズムの罠に陥り、2016年の国民投票でEU(欧州連合)離脱を決めたことから、今年主要7カ国(G7)の中で唯一、逆成長(-0.6%)するものとIMFが予測した。英国の家庭が2024年にはスロベニアの家庭より貧しくなるという予測まで出ている。
反面、シンガポールは国民の政治的自由を制限しているが、利益創出最優先の優れた政府統治体制により、昨年基準で1人当たりGDP7万9426ドルを誇る。韓国の2倍を上回る。
作家の金薫(キム・フン)氏は昨年9月16日、中央日報の書面インタビューで、「李舜臣(イ・スンシン)将軍が鳴梁(ミョンリャン)海戦の前に、12隻では勝ち目がないから、逃げようとする部下を説得して従わせるリーダーシップを発揮した」と述べた。また、拍手され票を集めるリーダーシップではなく、多くの人が行くのを憚る道に多くの人を連れて行くことができるリーダーシップの重要性を強調した。
2018年の大法院(最高裁)の判決以降、韓日関係を大きく後退させた強制徴用問題が両国政府間で事実上、妥結した。韓日関係は国内政治において最も分裂的な外交イシューだ。しかも、国民感情が大きく作用する歴史問題のため、政府がこの問題の妥結を決定するのに相当な決断が必要だったことだろう。
日本がこの問題に対して確固たる法理論的立場を堅持してきたため、韓国政府が支持を示さない世論ばかり追従していたならば、この問題を永遠に解決することはできなかっただろう。今回の妥結について多様な利害関係者が多様な評価をするだろう。この問題は長い間、韓日関係だけでなく韓国外交全般の大きな負担となってきた。
◇韓日関係の悪化で貿易量が20兆ウォン減少
全経連によると、大法院の徴用判決による韓日関係の悪化で、両国の貿易規模はそれ以前より10%(20兆ウォン、約2兆円)ほど減少した。また、韓国は日本との戦略的パートナーシップを推進する動力を失い、韓・中関係を健全に推進するレバレッジが減少した。韓米日の三角安保協力関係でも弱い輪になってしまった。インド・太平洋戦略が展開される過程で、韓国が意味のある役割を果たすのも難しい状況だった。
今、韓日関係は協力と競争の未来に向けた新たな出発点に立っている。韓日外交に長く関与した筆者として、今回の妥結を韓国が日本との未来の競争で必ず勝つという覚悟を固める契機にすることを願う。怨恨や怒りは日本に勝つための戦略にはなり得ない。このような姿勢は悪化した韓日関係を永続化し、国益のための実用外交を展開する上で大きな障害となり、国際社会で孤立を招くだけだ。
日本との協力の地平を広げてこそ、日本を越える道が開かれる。昨年の韓・日の国民所得格差は1000ドルにもならなかったが、ここで停滞することはできない。一日も早く日本より豊かに、世界平和と繁栄に貢献する韓国にするための長い道のりに外交力を集中させる時だ。今後、韓国は誇らしい未来史を書いていかなければならない。
イ・ヒョク/元駐ベトナム大使
1985年には世界10大半導体企業の5社が日本企業だったが、今は1社も入っていない。韓国のサムスン電子・SKハイニックスが世界10大半導体企業となった。音楽・映画・ドラマなど文化産業でもK-POPがJ-POPを圧倒し、世界的地位を高めた。
◇韓国半導体の猛追に対策講じる日本
日本はアナログ的製造業中心の戦略に安住し、デジタル・先端技術経済への迅速な切り替えに失敗した。企業の生産性が落ち、労働者の賃金を引き上げることができず、物価上昇の誘導にも失敗したことで、日本人の生活の質は低下した。
最近、日本のNHK放送で、元小学校教師など8人の若い日本人がオーストラリアの農場で集団生活をしながら一日6時間ブルーベリーを収穫する仕事をし、日本の2倍以上に当たる50万円の給料をもらっているという内容を見て衝撃を受けた。日本のバブル経済絶頂期だった1980年代半ばには、日本の資産価値が米国の3.5倍にもなるという評価もあった。このような日本の現実を見ながら、経済と産業の光速の変化を予測して迅速に対応できなければ、いくら難攻不落と見える経済も崩壊しかねないということを痛感することになる。
ところが、IMFの今年の国別経済展望を見ると、世界全体の成長率が2.8%、日本が1.8%、韓国が1.7%だ。1999年以降、成長率で持続的に日本をリードしてきた韓国が、今年は日本に後れを取るという暗鬱な予測だ。
日本政府は韓国の追撃に危機を感じ、対策作りに乗り出した。日本政府は補助金4760億円を投入し、熊本に世界最大のファウンドリー会社の台湾TSMCの工場を誘致し、日本国内の半導体供給不足を軽減させる計画だ。また、日本政府の介入により大手企業8社が共同出資した「ラピダス」という半導体コンソーシアムを結成した。その他、観光・農水産物など多様な分野で、外貨を稼げるのであれば政府が積極的に民間を支援するという姿勢だ。
韓国は日本より人口が少なく資源もない。また、北朝鮮という大きな安保リスクを抱えており、地政学的限界のため世界秩序を先導する国家群に入ることができない。したがって、韓国は経済が崩壊すれば、ほとんどすべてを失ってしまう。国民の生活が疲弊するのはもちろん、安保環境も弱くなり、国際社会での存在感と影響力も墜落せざるを得ない。我々皆が当然視する市場経済と民主主義も揺らぎかねない。
さらに激化する米中覇権競争は経済・安保の両分野であまりにも急激に展開され、思考と戦略の根本的再構成と変化を要求している。もちろん、経済・安保で外交が介入する領域もはるかに広がった。
◇EU離脱の英国、マイナス成長の見通し
韓国外交が国の安定と繁栄を最優先にする極端なほどの実用主義で展開されなければならない厳しい環境だ。そのためには、重要な外交イシューを政争化することを自制し、国民の世論の分裂を改善して実用外交を可能にする外交生態系を作る努力が求められる。
英国はポピュリズムの罠に陥り、2016年の国民投票でEU(欧州連合)離脱を決めたことから、今年主要7カ国(G7)の中で唯一、逆成長(-0.6%)するものとIMFが予測した。英国の家庭が2024年にはスロベニアの家庭より貧しくなるという予測まで出ている。
反面、シンガポールは国民の政治的自由を制限しているが、利益創出最優先の優れた政府統治体制により、昨年基準で1人当たりGDP7万9426ドルを誇る。韓国の2倍を上回る。
作家の金薫(キム・フン)氏は昨年9月16日、中央日報の書面インタビューで、「李舜臣(イ・スンシン)将軍が鳴梁(ミョンリャン)海戦の前に、12隻では勝ち目がないから、逃げようとする部下を説得して従わせるリーダーシップを発揮した」と述べた。また、拍手され票を集めるリーダーシップではなく、多くの人が行くのを憚る道に多くの人を連れて行くことができるリーダーシップの重要性を強調した。
2018年の大法院(最高裁)の判決以降、韓日関係を大きく後退させた強制徴用問題が両国政府間で事実上、妥結した。韓日関係は国内政治において最も分裂的な外交イシューだ。しかも、国民感情が大きく作用する歴史問題のため、政府がこの問題の妥結を決定するのに相当な決断が必要だったことだろう。
日本がこの問題に対して確固たる法理論的立場を堅持してきたため、韓国政府が支持を示さない世論ばかり追従していたならば、この問題を永遠に解決することはできなかっただろう。今回の妥結について多様な利害関係者が多様な評価をするだろう。この問題は長い間、韓日関係だけでなく韓国外交全般の大きな負担となってきた。
◇韓日関係の悪化で貿易量が20兆ウォン減少
全経連によると、大法院の徴用判決による韓日関係の悪化で、両国の貿易規模はそれ以前より10%(20兆ウォン、約2兆円)ほど減少した。また、韓国は日本との戦略的パートナーシップを推進する動力を失い、韓・中関係を健全に推進するレバレッジが減少した。韓米日の三角安保協力関係でも弱い輪になってしまった。インド・太平洋戦略が展開される過程で、韓国が意味のある役割を果たすのも難しい状況だった。
今、韓日関係は協力と競争の未来に向けた新たな出発点に立っている。韓日外交に長く関与した筆者として、今回の妥結を韓国が日本との未来の競争で必ず勝つという覚悟を固める契機にすることを願う。怨恨や怒りは日本に勝つための戦略にはなり得ない。このような姿勢は悪化した韓日関係を永続化し、国益のための実用外交を展開する上で大きな障害となり、国際社会で孤立を招くだけだ。
日本との協力の地平を広げてこそ、日本を越える道が開かれる。昨年の韓・日の国民所得格差は1000ドルにもならなかったが、ここで停滞することはできない。一日も早く日本より豊かに、世界平和と繁栄に貢献する韓国にするための長い道のりに外交力を集中させる時だ。今後、韓国は誇らしい未来史を書いていかなければならない。
イ・ヒョク/元駐ベトナム大使
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