スティーブン・リー元ローンスターコリア代表
2006年に最高検察庁中央捜査部は「官僚が外換銀行の負債を膨らませ、3400億~8200億ウォンほど少ない金額でローンスターに安く売却した」という結論を出し、当時の実務責任者だった辺陽浩(ビョン・ヤンホ)元財政経済部金融政策局長を起訴した。しかし疑惑の核心であるスティーブン・リーは2005年秋にすでに米国に逃避し、疑惑の究明に困難があった。大法院(最高裁)は結局、辺元局長に対して無罪を確定した。
ただ、検察は安価売却疑惑とは別にローンスターの「外換カード株価操作事件」では有罪を引き出した。外換カード株価操作事件の捜査には尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領、韓東勲(ハン・ドンフン)法務部長官、李卜鉉(イ・ボクヒョン)金融監督院長なども参加した。
スティーブン・リーの具体的な身元はベールに包まれている。韓国系だが、韓国語をほとんど話せないという。出生地も米ロサンゼルス、韓国などという情報がある。ハーバード大で経営学修士学位(MBA)を取得し、ローンスター韓国支社が設立された1998年から韓国市場に姿を現した。ローンスター本社で序列3、4位級になったという。スティーブン・リーは2017年8月にイタリアで一度検挙されたが、約10日後に釈放されて潜伏するなど国内送還に失敗した。この過程で法務部がスティーブン・リー釈放から4日も経過した後にイタリアに犯罪人引き渡し請求をした事実が明らかになり、論議を呼んだ。当時、韓国政府がスティーブン・リー検挙を遅く把握したためだ。
そして昨年、韓東勲(ハン・ドンフン)法務部長官の就任後、政府はローンスター事件に対する全面再検討に着手した。検察関係者は「昨年から韓東勲長官らが米国内の高官級チャンネルを通して送還戦略を全面修正した」とし「韓長官が米国出張で『法務部刑事局長に会っただけ』という形で野党が非難するたびにもどかしかった」と話した。
先月、李魯公(イ・ノゴン)法務部次官が日本で開催された「アジア太平洋地域刑事司法フォーラム」に出席した際、米高官級代表団と会議をし、スティーブン・リーに関する犯罪人引き渡し手続きの迅速な進行を要請したのがきっかけになったと、法務部は説明した。
法務部はスティーブン・リーの最新の米国所在地資料を分析して米国当局に提供し、この情報に基づいて米ニュージャージー州連邦検察庁がスティーブン・リーを逮捕した。スティーブン・リーが韓国に送還される場合、韓国政府とローンスター間の投資家・国家紛争解決(ISD)取り消し手続きに新たな動力になるとみられる。これに先立ちローンスターは韓国政府が外換銀行売却手続きを遅延させたとして損害賠償を請求した。国際投資紛争解決センター(ICSID)は昨年8月、韓国政府がローンスターに202億1650万ドル(約2855億ウォン、約290億円)と一部の遅延利子を支払うべきと決定した。
法務部関係者は「スティーブン・リーの送還は米司法当局の刑事司法協力の結果」とし「米国が自国民を株価操作容疑で逮捕してほしいという要求を受け入れたのは極めて異例」と説明した。法務部は米国側と協力してスティーブン・リーの犯罪人引き渡し裁判を進め、迅速に送還されるよう注力すると明らかにした。
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