◇戦争抑止力としての作戦統制権
1976年の板門店(パンムンジョム)ポプラ事件当時の状況も似ていた。2人の米軍将校が北朝鮮軍によって殺害されると、米国はこれを見過ごすことができなかった。韓国軍と在韓米軍に「デフコン3」が発令され、「ポール・バニアン作戦」が計画された。しかし、これは北朝鮮が再び挑発する場合に対応する案を検討したもので、全面戦争を準備したものではなかった。
国連軍の承認なしに韓国軍の単独作戦による葛藤は、すでに李承晩(イ・スンマン)政権時代から存在した。70年前の反共捕虜の釈放はその代表的事例であり、以後韓米間の葛藤がある度に言及された。まだ関連文書が公開されていないが、1983年のラングーン事件、2010年の天安(チョナン)沈没事件と延坪島(ヨンピョンド)砲撃事件の時にも韓米間に類似した葛藤があった可能性がある。
公開された米国の韓国向け政策文書によると、軍事部門での目標は明確だ。まず、北朝鮮による挑発を防ぐということだ。第二に、国連軍の承認なしに行われる韓国軍の反撃を防ぐことだ。韓国軍の反撃が全面戦争に飛び火する可能性があるためだ。そのため1954年の韓米合意議事録を通じて韓国に対する軍事援助を増やしながらも、韓国軍の作戦統制権を掌握しようとした。
公開された米国の政策文書を見れば、米国は何よりも韓半島で戦争抑止を通じてこれ以上大きな費用を支払わないという点を究極的な目標として掲げている。そのため、在韓米軍と韓国軍作戦統制権の最も重要な役割は「抑止力(deterrence power)」だ。軍産複合体による陰謀論は実状資料の中では全く現れていない。
◇事前協議がなければ米国は沈黙
李承晩政府と朴正熙政府初期、東南アジアに韓国軍を派兵すると米国に要請し、ベトナム戦争末期には韓国軍をベトナムの代わりにカンボジアやタイに派兵するとも働きかけた。1970年代初め、沖縄日本の返還が確定した時、沖縄の戦略資産を済州島(チェジュド)に移す案を提案した。米国政府はこのような提案に全く答えなかった。
李承晩政府と朴正熙政府時期の安保に関する韓国政府の提案は、在韓米軍と韓国軍を削減しようとする米国の政策に対応するためのものだったが、大きく見れば米国のアジアに対する軍事安保政策を支援するという韓国政府の提案だった。李承晩の伝記に登場する言及のように、「米国より先んじて米国の利益を守る」という意志だったと解釈できる。しかし、米国が望んだのは事前協議だった。
事前協議を通じてお互いが持っている能力と目標を把握し、これによる対応戦略を立てることだった。事前に協議がなかった問題に対して、米国は沈黙を貫いたり、拒否の意思を示したりした。韓国政府の1970年代の核兵器開発に対する米国の対応に関連した米国の核心文書はまだ公開されていないが、否定的な反応は簡単に察することができる。
◇誤判の根拠を作ってはならない
もしかしたら事前協議は単に韓米関係だけで重要なものではないだろう。韓国がすべての周辺国と協議し、事前協議が行われていたとすれば、不要な葛藤を減らすことができただろう。利害関係が衝突しても事前に意見を交わしてくれれば、それによる不快感も減り、絶交にまではいかないのが友人間の信頼と義理ではないだろうか。
現在の南北関係は安保ジレンマを越えた危機状況に突き進んでいる。こうした中で、韓米同盟を最も重要な安保軸とするなら、韓米間の事前協議と緊密な協力は一層欠かせない条件になるだろう。しかし、現在の状況は事前協議がうまく行われていないようにも見える。
もちろん、同盟国や友好国の間でもそのようなことが起きないという保障はない。しかし、このような状況に対する周辺国の判断が懸念される。北朝鮮のように異常な政府の誤った解釈によって取り返しのつかない状況を作ってはならない。
パク・テギュン/ソウル大学国際大学院教授
【コラム】韓米同盟の共通の目標は結局戦争抑止にある(1)
1976年の板門店(パンムンジョム)ポプラ事件当時の状況も似ていた。2人の米軍将校が北朝鮮軍によって殺害されると、米国はこれを見過ごすことができなかった。韓国軍と在韓米軍に「デフコン3」が発令され、「ポール・バニアン作戦」が計画された。しかし、これは北朝鮮が再び挑発する場合に対応する案を検討したもので、全面戦争を準備したものではなかった。
国連軍の承認なしに韓国軍の単独作戦による葛藤は、すでに李承晩(イ・スンマン)政権時代から存在した。70年前の反共捕虜の釈放はその代表的事例であり、以後韓米間の葛藤がある度に言及された。まだ関連文書が公開されていないが、1983年のラングーン事件、2010年の天安(チョナン)沈没事件と延坪島(ヨンピョンド)砲撃事件の時にも韓米間に類似した葛藤があった可能性がある。
公開された米国の韓国向け政策文書によると、軍事部門での目標は明確だ。まず、北朝鮮による挑発を防ぐということだ。第二に、国連軍の承認なしに行われる韓国軍の反撃を防ぐことだ。韓国軍の反撃が全面戦争に飛び火する可能性があるためだ。そのため1954年の韓米合意議事録を通じて韓国に対する軍事援助を増やしながらも、韓国軍の作戦統制権を掌握しようとした。
公開された米国の政策文書を見れば、米国は何よりも韓半島で戦争抑止を通じてこれ以上大きな費用を支払わないという点を究極的な目標として掲げている。そのため、在韓米軍と韓国軍作戦統制権の最も重要な役割は「抑止力(deterrence power)」だ。軍産複合体による陰謀論は実状資料の中では全く現れていない。
◇事前協議がなければ米国は沈黙
李承晩政府と朴正熙政府初期、東南アジアに韓国軍を派兵すると米国に要請し、ベトナム戦争末期には韓国軍をベトナムの代わりにカンボジアやタイに派兵するとも働きかけた。1970年代初め、沖縄日本の返還が確定した時、沖縄の戦略資産を済州島(チェジュド)に移す案を提案した。米国政府はこのような提案に全く答えなかった。
李承晩政府と朴正熙政府時期の安保に関する韓国政府の提案は、在韓米軍と韓国軍を削減しようとする米国の政策に対応するためのものだったが、大きく見れば米国のアジアに対する軍事安保政策を支援するという韓国政府の提案だった。李承晩の伝記に登場する言及のように、「米国より先んじて米国の利益を守る」という意志だったと解釈できる。しかし、米国が望んだのは事前協議だった。
事前協議を通じてお互いが持っている能力と目標を把握し、これによる対応戦略を立てることだった。事前に協議がなかった問題に対して、米国は沈黙を貫いたり、拒否の意思を示したりした。韓国政府の1970年代の核兵器開発に対する米国の対応に関連した米国の核心文書はまだ公開されていないが、否定的な反応は簡単に察することができる。
◇誤判の根拠を作ってはならない
もしかしたら事前協議は単に韓米関係だけで重要なものではないだろう。韓国がすべての周辺国と協議し、事前協議が行われていたとすれば、不要な葛藤を減らすことができただろう。利害関係が衝突しても事前に意見を交わしてくれれば、それによる不快感も減り、絶交にまではいかないのが友人間の信頼と義理ではないだろうか。
現在の南北関係は安保ジレンマを越えた危機状況に突き進んでいる。こうした中で、韓米同盟を最も重要な安保軸とするなら、韓米間の事前協議と緊密な協力は一層欠かせない条件になるだろう。しかし、現在の状況は事前協議がうまく行われていないようにも見える。
もちろん、同盟国や友好国の間でもそのようなことが起きないという保障はない。しかし、このような状況に対する周辺国の判断が懸念される。北朝鮮のように異常な政府の誤った解釈によって取り返しのつかない状況を作ってはならない。
パク・テギュン/ソウル大学国際大学院教授
【コラム】韓米同盟の共通の目標は結局戦争抑止にある(1)
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