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【コラム】「目に見えぬ侵略」諜報活動が活発…防ぐ「盾」は穴だらけ=韓国(1)

ⓒ 中央日報/中央日報日本語版

2021年6月、新しい院訓石の除幕式の後、朴智元(パク・ジウォン)国家情報院長が文在寅(ムン・ジェイン)大統領に改正された国家情報院法を刻んだ銅版を贈呈した。 [青瓦台]

大韓民国の国家安全保障を脅かすのは核・ミサイルなど北朝鮮の戦略武器だけではない。昨年12月26日にソウル上空を飛行した北朝鮮の無人機は目に見える非対称軍事脅威だ。目に見えにくく、国家安全保障を徐々に蚕食する勢力もある。国内人、外国人を問わず活動するスパイだ。

隠密な諜報活動は進化している。「霧雨に服が濡れるのも分からない」ということわざのように、最近のスパイは密かに弱点をつく。2021年6月に韓国で翻訳出版された豪チャールズスタート大のクライブ・ハミルトン教授の著書『中国の目に見えぬ侵略(Silent Invasion)』というタイトルが端的に表現している。

◆尹政権に入って浮き彫りになるスパイ事件


存在を捕らえにくいほどスパイの「矛」は鋭利になったが、これを防御する「盾」は鈍くて穴が多い。文在寅(ムン・ジェイン)前政権が書き込み捜査を政治的に利用しながらサイバー安全保障はほとんど犯罪視され、スパイを捕まえる国家情報院の対共捜査は事実上中断した。過去5年間のスパイ捜査は「忠北(チュンブク)同志会事件」がほとんど唯一だ。

昨年5月に尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権に入り、国家情報院のスパイ捜査がまた部分的に再開され、あちこちで暗躍したスパイの尾が次々と表れている。済州ハンギル会、昌原民衆自主統一前衛、全州全北民衆行動などが言及され、民主党出身無所属の尹美香(ユン・ミヒャン)国会議員の補佐官までが登場した。公安当局によると、この人たちはほとんどが「政権の捏造」と反論したり、黙秘権を行使中という。

北朝鮮の南派スパイや自然発生的な従北主体思想派の諜報だけが問題ではない。最近は外国人スパイの「目に見えぬ侵略」と「影響力工作」が国家安全保障と国益を脅かすという懸念が強い。例えばスペインに本部を置いた非営利人権団体「セーフガード・ディフェンダーズ」の昨年12月の暴露内容が衝撃的だ。同団体は「中国が『海外110服務中心』という名の秘密警察署を韓国・日本など少なくとも53カ国に102カ所以上を運営している」と主張した。ソウル蚕室(チャムシル)の中華料理店「東方明珠」などに対し、公安当局がウィーン条約と実定法違反について調べている。

韓国が世界10位圏の経済大国に成長し、サムスン電子に代表される情報通信技術(ICT)強国になったことで、産業スパイも増えている。アイドルグループBTS(防弾少年団)とドラマ『イカゲーム』など韓流ブームで韓国が魅力国家として注目されると、各国の在韓大使館にも韓国勤務を希望する人が増えている。これは同時に韓国を狙うグローバルスパイをソウルに呼び込む要因になっている。

スパイは韓国の先端技術と各種情報を狙うだけでなく、韓国の世論を自国の利益を最大化する方向に導き、さらには歪曲しようという動機と意図を持つ。では、標的になった韓国の国益を守るための手段、すなわち盾はどれほど丈夫なのだろうか。残念ながら韓国の国益を守るための防諜対策は十分でなく、死角地帯が非常に多い。

◆時代に追いつけない「刑法98条」

最も大きな問題は、1953年の制定から70年間にわたり時代の変化を反映できていない「刑法98条」だ。98条第1項は「敵国のために間諜行為をしたり敵国の間諜をほう助した者は死刑、無期または7年以上の懲役に処する」と規定している。北朝鮮のような明示的な「敵国」に制限するため、中国はもちろんで米国・日本など外国または外国団体のための間諜行為を処罰するのが難しい。実際、2015年に中国に機密を流出した海軍に間諜罪を適用できなかった。

半面、権威主義国家の中国は反間諜法に「外国機構・組織」を明示し、ロシアの刑法も「外国と外国団体およびその団体の代表者」と規定している。自由民主主義国家の米国は連邦法に「敵国」でなく「外国政府や外国の敵」と、フランスの刑法は外国政府・団体・要員などと、ドイツ刑法は「他国」と、間諜罪の対象を明示している。

建国大のソク・ジェワン安保災難管理学科教授(国家情報フォーラム代表)は「中国はもちろん米国など友邦も韓国企業の半導体・人工知能(AI)・バッテリーなど先端技術を狙う」とし「こうした状況であるにもかかわらず防諜法制化水準が低く、まともに対応できていないのが実情」と指摘した。国家情報院で26年間活動したソク教授は「進歩政府が北を和解の対象と見なせば『敵国』ではないため、スパイが活動しても処罰を受けず、むしろスパイと協力した韓国人だけが処罰を受けるというあきれる状況が発生する」とし「敵国の範疇に入らない国や外国人・外国団体による間諜行為を処罰できるよう刑法上間諜罪構成要件を『敵国』でなく『外国』に早期に改めなければいけない」と強調した。

韓国人が国益に背く形で外国を助ける情報活動をしても現行法では処罰の根拠が十分でない点も問題だ。慶尚国立大のホン・ジョンヒョン法学科教授は「友好的な国でも韓国で自国に有利になるよう韓国の世論を歪曲したり、さらに選挙で有利な候補の当選のために世論を操作する『影響力工作』活動をしても、現行法では処罰の死角地帯が存在する」とし「米国・オーストラリア・シンガポールのように韓国も『外国代理人登録法』を制定する必要がある」と指摘した。


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