俳優ケビン・スペイシーが出演したドラマ『ハウス・オブ・カード 野望の階段』のイメージ。[写真 ネットフリックス]
しかし、奈落に落ちたスペイシーは最近、映画の一部に声優として機会をつかむなど、復活の兆しを見せている。トゥジマン元大統領役で主演を務めるのは、彼の本格的なスクリーン復帰になる見通しだ。
フラニョ・トゥジマンという人物は論争的だ。1922年生まれの彼はクロアチア分離独立に赫々たる功績を立て、91年にその功労でクロアチア初代大統領に選出された。クロアチア国際空港の名前も彼にちなんで「フラニョ・トゥジマン国際空港」であるほどだ。しかし、「クロアチア建国の父」として崇められていた彼は権力の座に就いた後、独裁者の道を歩む。マスコミを統制し、野党を弾圧し、独裁を越えて王権に近い権力を振るっているという批判を国内外から浴びた。辛うじて97年の再選に成功したものの、権不十年。翌年がんで病死した。
このようなトゥジマンを題材にした映画のタイトルは『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・クロアチア』(仮題)であり、90分に達する長編になる見通しだとNYTは伝えた。映画の撮影と制作はかなり進んでおり、クロアチアでは早ければ2月に公開される予定だ。米国を含む全世界公開も念頭に置いているとNYTは報じた。この映画のメガホンを握るヤコブ・セドラー監督(70)はクロアチアメディアとのインタビューで、「今日の若者たちはトゥジマン元大統領についてあまりにも知らない」とし、「国の独立には貢献したが、その後は分裂を助長する独裁者になった彼の魅力的でない現実をそのまま描きたかった」と語った。その主人公に選ばれたのがスペイシーだ。
スペイシーのセクハラ疑惑にもかかわらず、彼の演技力に対する需要は依然として存在する。スペイシーが声優として登場する映画のタイトルは『コントロール』(原題)で、政治と警察権力の葛藤と衝突を扱ったサスペンス映画だ。この映画の監督を務めるジーン・ファライズは米国映画専門メディア「バラエティ」とのインタビューで「誰が何と言おうがスペイシーはわが時代の最高の俳優の一人」とし、「彼の私生活は私が全く知らず、コメントすることもできない。重要なのは優れた演技を披露する俳優と仕事をすること」と話した。しかし、これは彼の容疑による被害者や時代の流れに背を向けることでもあるとNYTは伝えた。
スペイシーは『ハウス・オブ・カード 野望の階段』の撮影現場でも多数の制作チームおよび関係者にセクハラをした疑いが持たれ、損害賠償請求訴訟などが多数提起された状態だ。彼が追い出された後、『ハウス・オブ・カード 野望の階段』は彼の妻役クレアを演じた女優ロビン・ライトが主演を引き受けた。
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