日本はこれまで米国が金利を上げるたびに低金利を守ってきた。策略があった。米国との金利格差が広がるほど対ドルで円が急落する。いわゆる円安政策のためだ。円安は輸出競争力を高めてくれる。日本は円高に対するトラウマが深い。1985年に米国など先進5カ国は日本の経済力を統制するためにプラザ合意を押しつけ当時1ドル=300円を行き来した為替相場を100円近くまで急激に引き下げた。
この時から日本経済は力が抜け始めた。円高状況では日本企業の輸出競争力が落ちる。しかもちょうど韓国が強力な製造業国として浮上し日本は円高の恐怖に苦しめられなければならなかった。日本の財界は終わることなく円高脱皮を要求し日本政府と日本銀行はこの要求に応じて円安を誘導していき始めた。
◇円安放置時は韓国がGDP逆転することも
米国が金利を上げれば世界が追随して金利を上げる。米国との金利格差が広がれば、世界的投資資金が米国に流れ新興国の通貨価値が下落するためだ。開放体制の韓国が代表的だ。為替急落を避けるために泣く泣く金利を上げるほかない。だが日本は微動だにしなかった。
日本は1990年代後半からは最初からゼロ金利を金融政策として採択した。米国が金利を上げても日本はゼロ金利を維持することによりむしろ円安を楽しんだ。円安になり日本の輸出競争力が高まった。
だが最近日本は低金利の限界に直面した。米中経済戦争の余波で世界的供給網にひびが入り円安にともなう効果をみられなくなってだ(キム・ジョンシク延世大学経済学部名誉教授)。しかも日本はこの30年間に中国投資ブームに便乗して円高の苦痛も減らすため海外進出に熱を上げた。その結果円安の状況が訪れても輸出に何の効果も得られなくなった。
円安でも輸出は振るわず輸入物価だけ高騰すると物価が跳ね上がり国民の苦痛だけが増えるとんでもない状況が展開した。ついに10月20日に円相場が1ドル=150円台を超え円は急落した。日本政府は慌てた様子を隠すことができなかった。日本銀行は米財務省の容認を受けすぐ外国為替市場に介入し、円相場が150円を超えないよう総力を注いだ。
日本銀行が18日に電撃的に国債10年物利回りの上限を0.25%から0.5%に引き上げたのはこうした悩みの結果だと解釈できる。岸田文雄首相が超低金利政策を修正するだろうというシグナルを送ってから数日目に断行された措置だった。
来年4月の黒田東彦日本銀行総裁の退任後と予想されたゼロ金利政策の転換が大幅に前倒しされたのは、ゼロ金利を守る理由がなくなったという判断に至ったためとみられる。スウェーデンの場合もマイナス金利まで行く超低金利政策を施行したが成長率鈍化と住宅価格上昇だけを招くなど、効果よりも副作用が大きくなり2019年に超低金利政策から脱出した。
しかも日本が円安を放置すれば1~2年以内に1人当たり国民所得(GDP)が韓国に逆転される状況を繰り上げかねない。国民所得はドルで換算するため自国通貨が過度に下がれば国民所得は減ることになる。こうしたシナリオが現実になれば日本の政府与党は経済だけでなく政治的にも大きな打撃を受けることになる。ゼロ金利を捨てるほかないもうひとつの理由だ。
肯定的な側面もある。日本のゼロ金利脱出は日本の眠れる本能を起こすかもしれないという点でも注目される。円安に依存してきた日本は失われた30年の間、革新と変化に消極的だった。だがゼロ金利を捨てるならば日本企業の「アニマルスピリット」がよみがえる可能性がある。円安に依存できなくなっただけに日本企業は真剣勝負に出なければならない。
製造業でもそうした変化が感知されている。韓国に半導体主導権を渡した日本は捲土重来を模索している。日米両国の最高企業が力を合わせて日本の半導体ドリームチームであるラピダスを設立し、2027年から2ナノメートル(1ナノメートルは10億分の1メートル)の先端半導体を生産することにした。韓国は24日に半導体法が通過したが、設備投資に対する税額控除が当初の20%から8%に縮小した。
◇「財政健全性なくしては金利正常化政策限界」
ただ日本のゼロ金利脱出が順調かは未知数だ。金利が上がれば国債価格下落を刺激しかねないためだ。日本は国内総生産(GDP)比264%に達する国の債務を抱えている。金利が上がれば、場合によっては過度な減税政策により投機筋の攻撃を受けた英国のポンド・国債投げ売りの日本版を心配しなくてはならなくなるかも知れない。みずほフィナンシャルグループの木原正裕社長は25日、日本経済新聞に「(長期金利が)3%とか4%になったら、ディザスター(大災害)になる可能性がある」と懸念を示した。同紙は、結局財政健全性の確保なくして日本の金利正常化政策も限界にぶつかりかねないと指摘した。日本の進退両難は国の経営に財政健全性がどれだけ重要なのかを示している。
この時から日本経済は力が抜け始めた。円高状況では日本企業の輸出競争力が落ちる。しかもちょうど韓国が強力な製造業国として浮上し日本は円高の恐怖に苦しめられなければならなかった。日本の財界は終わることなく円高脱皮を要求し日本政府と日本銀行はこの要求に応じて円安を誘導していき始めた。
◇円安放置時は韓国がGDP逆転することも
米国が金利を上げれば世界が追随して金利を上げる。米国との金利格差が広がれば、世界的投資資金が米国に流れ新興国の通貨価値が下落するためだ。開放体制の韓国が代表的だ。為替急落を避けるために泣く泣く金利を上げるほかない。だが日本は微動だにしなかった。
日本は1990年代後半からは最初からゼロ金利を金融政策として採択した。米国が金利を上げても日本はゼロ金利を維持することによりむしろ円安を楽しんだ。円安になり日本の輸出競争力が高まった。
だが最近日本は低金利の限界に直面した。米中経済戦争の余波で世界的供給網にひびが入り円安にともなう効果をみられなくなってだ(キム・ジョンシク延世大学経済学部名誉教授)。しかも日本はこの30年間に中国投資ブームに便乗して円高の苦痛も減らすため海外進出に熱を上げた。その結果円安の状況が訪れても輸出に何の効果も得られなくなった。
円安でも輸出は振るわず輸入物価だけ高騰すると物価が跳ね上がり国民の苦痛だけが増えるとんでもない状況が展開した。ついに10月20日に円相場が1ドル=150円台を超え円は急落した。日本政府は慌てた様子を隠すことができなかった。日本銀行は米財務省の容認を受けすぐ外国為替市場に介入し、円相場が150円を超えないよう総力を注いだ。
日本銀行が18日に電撃的に国債10年物利回りの上限を0.25%から0.5%に引き上げたのはこうした悩みの結果だと解釈できる。岸田文雄首相が超低金利政策を修正するだろうというシグナルを送ってから数日目に断行された措置だった。
来年4月の黒田東彦日本銀行総裁の退任後と予想されたゼロ金利政策の転換が大幅に前倒しされたのは、ゼロ金利を守る理由がなくなったという判断に至ったためとみられる。スウェーデンの場合もマイナス金利まで行く超低金利政策を施行したが成長率鈍化と住宅価格上昇だけを招くなど、効果よりも副作用が大きくなり2019年に超低金利政策から脱出した。
しかも日本が円安を放置すれば1~2年以内に1人当たり国民所得(GDP)が韓国に逆転される状況を繰り上げかねない。国民所得はドルで換算するため自国通貨が過度に下がれば国民所得は減ることになる。こうしたシナリオが現実になれば日本の政府与党は経済だけでなく政治的にも大きな打撃を受けることになる。ゼロ金利を捨てるほかないもうひとつの理由だ。
肯定的な側面もある。日本のゼロ金利脱出は日本の眠れる本能を起こすかもしれないという点でも注目される。円安に依存してきた日本は失われた30年の間、革新と変化に消極的だった。だがゼロ金利を捨てるならば日本企業の「アニマルスピリット」がよみがえる可能性がある。円安に依存できなくなっただけに日本企業は真剣勝負に出なければならない。
製造業でもそうした変化が感知されている。韓国に半導体主導権を渡した日本は捲土重来を模索している。日米両国の最高企業が力を合わせて日本の半導体ドリームチームであるラピダスを設立し、2027年から2ナノメートル(1ナノメートルは10億分の1メートル)の先端半導体を生産することにした。韓国は24日に半導体法が通過したが、設備投資に対する税額控除が当初の20%から8%に縮小した。
◇「財政健全性なくしては金利正常化政策限界」
ただ日本のゼロ金利脱出が順調かは未知数だ。金利が上がれば国債価格下落を刺激しかねないためだ。日本は国内総生産(GDP)比264%に達する国の債務を抱えている。金利が上がれば、場合によっては過度な減税政策により投機筋の攻撃を受けた英国のポンド・国債投げ売りの日本版を心配しなくてはならなくなるかも知れない。みずほフィナンシャルグループの木原正裕社長は25日、日本経済新聞に「(長期金利が)3%とか4%になったら、ディザスター(大災害)になる可能性がある」と懸念を示した。同紙は、結局財政健全性の確保なくして日本の金利正常化政策も限界にぶつかりかねないと指摘した。日本の進退両難は国の経営に財政健全性がどれだけ重要なのかを示している。
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