◇韓日国交正常化60周年のロードマップ
韓日首脳が13日、カンボジア・プノンペンで会談を行った。2019年12月以来、約3年ぶりに開かれた正式な首脳会談だ。会談後、大統領室は報道資料を出し、「両首脳が両国間の懸案に関して外交当局間で活発な意志疎通が行われていることを評価し、早急な解決に向けて引き続き協議していくことにした」と述べた。同会談で懸案の徴用問題について具体的な成果を出すことはできなかったが、大統領室は両国の実務陣の間で徴用問題の解決策が1~2案に絞られており、これによって両国首脳は問題を迅速に解決していこうということで意気投合したと説明した。
5月の発足以来、韓日関係改善のための尹錫悦(ユン・ソクヨル)政府の不断の努力が終着点に達したという希望が垣間見えた。今年が終わる前に「徴用者合意」が発表されるような印象を受けた。明らかに、徴用問題は解決の敷居に迫っている。しかし、敷居越しに現れた門が「天国の門」なのか「地獄の門」なのかは予断し難い。2015年12月の慰安婦合意の悪夢がなかなか脳裏を離れないためだ。
◇「天国の門」vs「地獄の門」
文在寅(ムン・ジェイン)政府の時に閉ざされてしまった韓日外交を再開しようと、尹錫悦政府は真心を込めて多くの努力を傾けた。被害者側の見解を確認し、彼らとの情緒的距離を縮めようと努力する一方、日本に対して頻繁な実務者交渉と高官級会談を重ね、相互信頼の基盤を着実に築き、ついに首脳会談に至った。 この過程で官民協議会が重要な役割を果たした。
政府は4回にわたる協議会を通じて基本案をまとめた。既存の日帝強制動員被害者支援財団が主体になり、韓日両国企業から基金を集めて代位弁済するということだ。この案が合意に至るには、2つの条件が求められる。1つは日本政府・企業の謝罪表明と日本企業の基金参加で、もう1つは被害者の同意だ。まさにこの2つの条件が敷居の前にあり、両国首脳はプノンペン首脳会談で合意に至らなかったのだ。敷居を越えたい尹大統領と敷居を越えるかどうか悩む岸田首相の2人が共有した認識の産物が、首脳会談直後に提供された報道資料の短い文案だ。
尹大統領は日本側の基金参加と謝罪表明を持って被害者の同意を得て最高裁判決問題を解決すると同時に、輸出規制、韓日軍事情報包括保護協定(GSOMIA)、慰安婦問題などを包括的に解決し、韓米日の三角協力体制を構築することで、その成果を土台に乱脈のように散らばった内治に邁進しようという期待を持っている。
一方、岸田首相は、韓国側の真心を込めた和解の手を容易に取れずにいる。岸田首相が悩む理由は、日本の一貫した既存の主張を撤回しなければならないだけでなく、たとえ譲歩して合意がなされるとしても、韓国の政権が変われば覆されかねないという慰安婦合意のトラウマがあるためだ。尹大統領に岸田首相の懸念を払拭させる妙案がない限り、徴用者合意は期待し難い。
◇曖昧な妥協はさらなる葛藤を生む
「至誠感天(真心は天に通じる)」、「10回切り付けて倒れない木はない」ということわざがあるように、韓国側の持続的な求愛に結局日本が応じることもあり得る。しかし、日本が決断しても問題はディテールに残っている。合意内容を各自恣意的に解釈できる余地を残す曖昧な妥協になれば、葛藤の種になる。被害者が快く受け入れることができる明白な表現でなければならず、裏の合意が存在してもならない。
千辛万苦の末に合意に至ったとしても、また別の問題が我々の中に残っている。 10月25日、国会で開かれたある懇談会で大韓弁護士協会日帝被害者人権特委副委員長のパク・ヒョンネ弁護士が併存的債務引受による代位弁済も、債権者である被害者の同意が必要だという見解を述べた。民官協議会に参加したパク弁護士のこのような主張は、被害者の同意なしに代位弁済を施行しようとする政府案に反する。懇談会で政府間合意自体を否定できる論理と名分が提示されたと見ることができる。
現在の韓国の政治状況は、共に民主党の李在明(イ・ジェミョン)代表を巡る与野党間の司法戦争、梨泰院(イテウォン)事故の処理を巡る政権退陣デモなど、陣営間の対立が激化している。もし、ここに徴用問題が陣営間の歴史戦争に飛び火すれば、その爆発力は莫大だろう。
私はこの時点で尹政府に性急に可視的な成果を出そうとする誘惑に陥ってはならないと助言したい。下手に敷居を越えるよりは、急いでいた足取りをしばらく止めて深く呼吸を整えて考えてみてもらいたい。韓国は日本に十分誠意を尽くした。韓国側の立場と誠意ある呼応要請を多様なチャンネルを介して持続的に伝えた。低姿勢という非難を甘受しつつも、ニューヨークで岸田首相と略式会談を行い、旭日旗への敬礼が屈辱的だという物議を乗り越えつつ、日本で開かれた国際観艦式にも参加した。
◇国民全体に対する説明過程が必須
しかし、いざ国内構成員に向けてどれほど誠意を傾けたかを振り返ってみる必要がある。真正性を持って最善を尽くして被害者を説得したのか。野党に協力を要請したのか。国民に説明したのか。今は日本を説得して問題を一気に解決するという誘惑からしばらく距離を置き、方向を国内に戻し、次のように説明して説得し、訴えてみることを勧める。
「親愛なる被害者の皆様、野党議員、そして国民の皆様、政府発足後、徴用問題の解決のために死力を尽くした結果、ついに首脳会談まで行いました。しかし、残念ながら、未だ日本からは誠意ある呼応がありません。依然として日本の呼応を期待しつつも、一方では韓国政府が自らできることをしてみようと思います。 過去に、韓国政府が至らず、微々たる力で、被害者の恨(ハン)を十分に晴らすことができませんでした。今、胸に残っているその恨を韓国政府が真心を込めて晴らすために『ポスコ歴史記念儀式』を構想しました。請求権資金と日本企業の技術支援により建設されたポスコの現場は、克日の誇らしい場です。ポスコの偉大さが被害者の方々の汗と血と涙の代価で成り立ったことを宣言したいと思います。ポスコ内に追慕空間を作り、宣言文と被害者の名前を刻んだ記念碑を建て、被害者の皆様をお迎えして全国民が慶祝しようと思います。政治交渉を通じて総額決定方式で受け取った請求権資金には強制動員被害補償問題を解決するための資金が包括されています。無償資金のうち相当な金額を被害者の救済に用いる道義的責任により1975年に朴正熙(パク・ジョンヒ)政府で初めて被害者補償を行い、盧武鉉(ノ・ムヒョン)政府は長い間苦痛を受けてきた強制動員被害者の痛みを治癒するために道義的・援護的次元と国民統合の側面で2次補償を行いました。今後、尹政府は歴代政府の方針を継承して3次補償を行おうと思います。3次補償が施行されれば、被害者の方々は大法院(最高裁)の判決で獲得した債権を政府に譲渡してください。政府は日本と協議しながら、正義と堂々と処理し、決して被害者の方々に恨を残さないように致します」
◇文在寅政府の「ツートラック」成果なし
2017年に文在寅(ムン・ジェイン)政府が発足すると、文喜相(ムン・ヒサン)元国会副議長を日本特使として派遣した。当時、文特使は岸田外相に韓国国民の大多数が情緒的に慰安婦合意を受け入れることはできないが、戦略的利益を共有する韓日が未来指向的な関係を結んでいくことを希望すると伝え、ツートラックで韓日関係に臨むという方針を伝えた。しかし、文在寅政府の間、終始ツートラックは作動しなかった。
プノンペン首脳会談で経済・安保・人的交流という車輪の一方が回っていることを確認した。これを通じてホワイトリストとGSOMIA問題を終結させ、全分野にわたる協力を拡大していこう。同時に、国内の説得を土台に歴史和解というもう一方の車輪も徐々に転がしてみよう。
2025年は韓日国交正常化60周年を迎える年だ。金大中(キム・デジュン)-小渕パートナーシップ宣言があった1998年からも一世代が過ぎた。中長期ロードマップを持って新たな韓日時代を切り開いていこう。そのために、大統領または首相の傘下に「韓日和解委員会」を設置し、日本と緊密に協議し、歴史和解を推進していこう。被害者の願いを深く肝に銘じ、必ず与野党の合意を基盤にして両国の未来の世代に道を開く方向で歴史問題を処理しよう。あれほど高く見えるばかりだった敷居の前で躊躇し葛藤していた両国が、その敷居を大きく越えて東アジア地域の協力と世界平和と繁栄のために協力する成熟した姿を見ることを願う。
朴鴻圭(パク・ホンギュ)/高麗(コリョ)大学政治外交学科教授
韓日首脳が13日、カンボジア・プノンペンで会談を行った。2019年12月以来、約3年ぶりに開かれた正式な首脳会談だ。会談後、大統領室は報道資料を出し、「両首脳が両国間の懸案に関して外交当局間で活発な意志疎通が行われていることを評価し、早急な解決に向けて引き続き協議していくことにした」と述べた。同会談で懸案の徴用問題について具体的な成果を出すことはできなかったが、大統領室は両国の実務陣の間で徴用問題の解決策が1~2案に絞られており、これによって両国首脳は問題を迅速に解決していこうということで意気投合したと説明した。
5月の発足以来、韓日関係改善のための尹錫悦(ユン・ソクヨル)政府の不断の努力が終着点に達したという希望が垣間見えた。今年が終わる前に「徴用者合意」が発表されるような印象を受けた。明らかに、徴用問題は解決の敷居に迫っている。しかし、敷居越しに現れた門が「天国の門」なのか「地獄の門」なのかは予断し難い。2015年12月の慰安婦合意の悪夢がなかなか脳裏を離れないためだ。
◇「天国の門」vs「地獄の門」
文在寅(ムン・ジェイン)政府の時に閉ざされてしまった韓日外交を再開しようと、尹錫悦政府は真心を込めて多くの努力を傾けた。被害者側の見解を確認し、彼らとの情緒的距離を縮めようと努力する一方、日本に対して頻繁な実務者交渉と高官級会談を重ね、相互信頼の基盤を着実に築き、ついに首脳会談に至った。 この過程で官民協議会が重要な役割を果たした。
政府は4回にわたる協議会を通じて基本案をまとめた。既存の日帝強制動員被害者支援財団が主体になり、韓日両国企業から基金を集めて代位弁済するということだ。この案が合意に至るには、2つの条件が求められる。1つは日本政府・企業の謝罪表明と日本企業の基金参加で、もう1つは被害者の同意だ。まさにこの2つの条件が敷居の前にあり、両国首脳はプノンペン首脳会談で合意に至らなかったのだ。敷居を越えたい尹大統領と敷居を越えるかどうか悩む岸田首相の2人が共有した認識の産物が、首脳会談直後に提供された報道資料の短い文案だ。
尹大統領は日本側の基金参加と謝罪表明を持って被害者の同意を得て最高裁判決問題を解決すると同時に、輸出規制、韓日軍事情報包括保護協定(GSOMIA)、慰安婦問題などを包括的に解決し、韓米日の三角協力体制を構築することで、その成果を土台に乱脈のように散らばった内治に邁進しようという期待を持っている。
一方、岸田首相は、韓国側の真心を込めた和解の手を容易に取れずにいる。岸田首相が悩む理由は、日本の一貫した既存の主張を撤回しなければならないだけでなく、たとえ譲歩して合意がなされるとしても、韓国の政権が変われば覆されかねないという慰安婦合意のトラウマがあるためだ。尹大統領に岸田首相の懸念を払拭させる妙案がない限り、徴用者合意は期待し難い。
◇曖昧な妥協はさらなる葛藤を生む
「至誠感天(真心は天に通じる)」、「10回切り付けて倒れない木はない」ということわざがあるように、韓国側の持続的な求愛に結局日本が応じることもあり得る。しかし、日本が決断しても問題はディテールに残っている。合意内容を各自恣意的に解釈できる余地を残す曖昧な妥協になれば、葛藤の種になる。被害者が快く受け入れることができる明白な表現でなければならず、裏の合意が存在してもならない。
千辛万苦の末に合意に至ったとしても、また別の問題が我々の中に残っている。 10月25日、国会で開かれたある懇談会で大韓弁護士協会日帝被害者人権特委副委員長のパク・ヒョンネ弁護士が併存的債務引受による代位弁済も、債権者である被害者の同意が必要だという見解を述べた。民官協議会に参加したパク弁護士のこのような主張は、被害者の同意なしに代位弁済を施行しようとする政府案に反する。懇談会で政府間合意自体を否定できる論理と名分が提示されたと見ることができる。
現在の韓国の政治状況は、共に民主党の李在明(イ・ジェミョン)代表を巡る与野党間の司法戦争、梨泰院(イテウォン)事故の処理を巡る政権退陣デモなど、陣営間の対立が激化している。もし、ここに徴用問題が陣営間の歴史戦争に飛び火すれば、その爆発力は莫大だろう。
私はこの時点で尹政府に性急に可視的な成果を出そうとする誘惑に陥ってはならないと助言したい。下手に敷居を越えるよりは、急いでいた足取りをしばらく止めて深く呼吸を整えて考えてみてもらいたい。韓国は日本に十分誠意を尽くした。韓国側の立場と誠意ある呼応要請を多様なチャンネルを介して持続的に伝えた。低姿勢という非難を甘受しつつも、ニューヨークで岸田首相と略式会談を行い、旭日旗への敬礼が屈辱的だという物議を乗り越えつつ、日本で開かれた国際観艦式にも参加した。
◇国民全体に対する説明過程が必須
しかし、いざ国内構成員に向けてどれほど誠意を傾けたかを振り返ってみる必要がある。真正性を持って最善を尽くして被害者を説得したのか。野党に協力を要請したのか。国民に説明したのか。今は日本を説得して問題を一気に解決するという誘惑からしばらく距離を置き、方向を国内に戻し、次のように説明して説得し、訴えてみることを勧める。
「親愛なる被害者の皆様、野党議員、そして国民の皆様、政府発足後、徴用問題の解決のために死力を尽くした結果、ついに首脳会談まで行いました。しかし、残念ながら、未だ日本からは誠意ある呼応がありません。依然として日本の呼応を期待しつつも、一方では韓国政府が自らできることをしてみようと思います。 過去に、韓国政府が至らず、微々たる力で、被害者の恨(ハン)を十分に晴らすことができませんでした。今、胸に残っているその恨を韓国政府が真心を込めて晴らすために『ポスコ歴史記念儀式』を構想しました。請求権資金と日本企業の技術支援により建設されたポスコの現場は、克日の誇らしい場です。ポスコの偉大さが被害者の方々の汗と血と涙の代価で成り立ったことを宣言したいと思います。ポスコ内に追慕空間を作り、宣言文と被害者の名前を刻んだ記念碑を建て、被害者の皆様をお迎えして全国民が慶祝しようと思います。政治交渉を通じて総額決定方式で受け取った請求権資金には強制動員被害補償問題を解決するための資金が包括されています。無償資金のうち相当な金額を被害者の救済に用いる道義的責任により1975年に朴正熙(パク・ジョンヒ)政府で初めて被害者補償を行い、盧武鉉(ノ・ムヒョン)政府は長い間苦痛を受けてきた強制動員被害者の痛みを治癒するために道義的・援護的次元と国民統合の側面で2次補償を行いました。今後、尹政府は歴代政府の方針を継承して3次補償を行おうと思います。3次補償が施行されれば、被害者の方々は大法院(最高裁)の判決で獲得した債権を政府に譲渡してください。政府は日本と協議しながら、正義と堂々と処理し、決して被害者の方々に恨を残さないように致します」
◇文在寅政府の「ツートラック」成果なし
2017年に文在寅(ムン・ジェイン)政府が発足すると、文喜相(ムン・ヒサン)元国会副議長を日本特使として派遣した。当時、文特使は岸田外相に韓国国民の大多数が情緒的に慰安婦合意を受け入れることはできないが、戦略的利益を共有する韓日が未来指向的な関係を結んでいくことを希望すると伝え、ツートラックで韓日関係に臨むという方針を伝えた。しかし、文在寅政府の間、終始ツートラックは作動しなかった。
プノンペン首脳会談で経済・安保・人的交流という車輪の一方が回っていることを確認した。これを通じてホワイトリストとGSOMIA問題を終結させ、全分野にわたる協力を拡大していこう。同時に、国内の説得を土台に歴史和解というもう一方の車輪も徐々に転がしてみよう。
2025年は韓日国交正常化60周年を迎える年だ。金大中(キム・デジュン)-小渕パートナーシップ宣言があった1998年からも一世代が過ぎた。中長期ロードマップを持って新たな韓日時代を切り開いていこう。そのために、大統領または首相の傘下に「韓日和解委員会」を設置し、日本と緊密に協議し、歴史和解を推進していこう。被害者の願いを深く肝に銘じ、必ず与野党の合意を基盤にして両国の未来の世代に道を開く方向で歴史問題を処理しよう。あれほど高く見えるばかりだった敷居の前で躊躇し葛藤していた両国が、その敷居を大きく越えて東アジア地域の協力と世界平和と繁栄のために協力する成熟した姿を見ることを願う。
朴鴻圭(パク・ホンギュ)/高麗(コリョ)大学政治外交学科教授
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