◆漂流する教育政策
米国の伝説的投資家レイ・ダリオ氏は繁栄の必須要件として教育を挙げた。500年間、膨大な統計資料をもとに先進国の発展原理を研究した結果だ。ダリオ氏は「教育水準が高ければ、技術革新を導き生産性と軍事力を育てて強大国になる」と述べた〔『変化する世界秩序』(原題)〕。当然のことのように見えるが、これを実現した国は数カ国しかない。
◆繁栄の第一歩は教育
1581年、スペインから独立したオランダは、多様な人材を受け入れ、新文物を迅速に吸収した。教育投資を大幅に増やし、オランダの大学数は欧州全体に対し、1600年1%台から1700年6%台に増加した。出版物の割合も同期間1%台から8%台に急増した。教育の発展で知識水準が高まり、国富が増大した。
経済史学者アンガス・マディソン氏はオランダの1人当たりGDPが1600~1700年の1381ドルから2130ドルに増加したと説明している(『マディソン・プロジェクト』)。1700年、オランダの経済力は英国(1250ドル)、ドイツ・フランス(910ドル)を圧倒した。ダリオ氏は「オランダは世界貿易の3分の1を占め、ギルダーは最初の基軸通貨だった」と述べた。
後に続く英国・米国も同様の原理で繁栄の道に上がった。教育水準が高まり、技術革新が起き、国富が拡大した。アジアでは、日本が近代教育に力を入れ、大国に飛躍した。しかし、この20年間、日本は衰退の道を歩んでいる。日本内部では、その原因の一つが衰退した教育力のためだという診断が出ている。
元東京大学教授の野口悠紀雄氏は低迷の原因としてアベノミクスと技術革新の失敗、教育の衰退などを挙げている。同氏が開発した高等教育力指数で、日本(1.6)は英国(16.4)、米国(11.5)にはるかに及ばない。同氏は「1970年代の英米のように教育力の強い国は低迷に陥ってもすぐに回復する」と述べた(『日本が先進国から脱落する日 “円安という麻薬"が日本を貧しくした!!』)。
問題は、韓国も日本の二の舞を踏んでいるという点だ。この10年間、教育政策が漂流している。代表的なのが基礎学力未達学生の急増と教育・職業の不一致現象の深化だ。慶熙(キョンヒ)大学社会学科のキム・ジュンベク教授は「優秀な人材の供給に支障をきたし、産業と雇用の不均衡を増加させるという点で国家的浪費」と指摘した。
◆失われた教育の10年
韓国は教育を通じて成功した国として知られていた。解放直後、文盲率が78%に及んだが、1949年の教育法制定後、人的投資に力を入れた。1967年に職業訓練法を制定し、産業従事者を育てることに焦点を合わせ、1970~80年代の学校と大学は高度成長の動力だった。
1995年、金泳三(キム・ヨンサム)政府は5・31教育改革で創意・人格を育てる先進国型教育制度の根幹を築いた。金大中(キム・デジュン)、盧武鉉(ノ・ムヒョン)政権は暗記中心の教育から脱皮し、学生の適性を啓発する多様な入試方案を提示した。李明博(イ・ミョンバク)政府は特性化高校・マイスター高校など学校多様化政策で生徒の選択権を高めた。
しかし、朴槿恵(パク・クネ)・文在寅(ムン・ジェイン)政府は教育政策の成果が明確ではない。むしろ2012~2021年の基礎学力未達の中学生の割合が国語1%→6%、数学3.5%→11.6%、英語2.1%→5.9に急増した。国語は6倍、数学は3.3倍、英語は2.8倍に増えた。高校生も同期間、国語2.1%→7.1%、数学4.3%→14.2%、英語2.6%→9.8%と増加した。
ミリム女子高校のチュ・ソクフン校長は「低学年から学力欠損が累積した結果」とし、「政策的に学力を重視しない雰囲気だった」と話した。「中学校の時は席次等級を提供せず、自由学期制などで学業に集中できなかった」ためだ。チュ校長は「2018年修学能力試験(大学入試)の絶対評価白紙化のように『政務的判断』により教育政策を振り回した」と述べた。
学力低下は大学につながった。国民の力の金炳旭(キム・ビョンウク)議員によると、今年、ソウル大学の新入生の26.3%(英語)は学力水準が落ち、基礎英語の授業を受けた。2012年(12.9%)に比べて2倍以上に増えた。金議員は「学力未達の学生が増えたのは国家競争力を下げる深刻な問題」と指摘した。
◆専攻・職業の不一致が深刻化
さらに大きな問題は、学生が学んだ内容を活用することがますます難しくなっているという点だ。「文系で申し訳ない」と感じる学生が増えているからだ。ネットマーブルの金炳規(キム・ビョンギュ)経営企画担当(COO)は「毎年60人ほど新入社員を採用しているが、理系出身が70%」と述べた。サムスン電子・ヒョンデ(現代自動車)などの大企業も2018~2020年の新入社員の80%ほどが理工系だった。
金COOは「IT産業の高度化で理工系の需要は高いが、大学は依然として文系中心」と指摘した。今年上半期の企業500社の採用計画によると、61%が理工系だったが、昨年の4年制大学の卒業生は人文系(43.5%)が理工系(37.7%)より多い。高校ではすでに十数年前から理系選択の割合が高いが、大学は追いついていない。
【コラム】韓国、基礎学力未達の生徒10年間で6倍…専攻・職業不一致はOECD1位(2)
米国の伝説的投資家レイ・ダリオ氏は繁栄の必須要件として教育を挙げた。500年間、膨大な統計資料をもとに先進国の発展原理を研究した結果だ。ダリオ氏は「教育水準が高ければ、技術革新を導き生産性と軍事力を育てて強大国になる」と述べた〔『変化する世界秩序』(原題)〕。当然のことのように見えるが、これを実現した国は数カ国しかない。
◆繁栄の第一歩は教育
1581年、スペインから独立したオランダは、多様な人材を受け入れ、新文物を迅速に吸収した。教育投資を大幅に増やし、オランダの大学数は欧州全体に対し、1600年1%台から1700年6%台に増加した。出版物の割合も同期間1%台から8%台に急増した。教育の発展で知識水準が高まり、国富が増大した。
経済史学者アンガス・マディソン氏はオランダの1人当たりGDPが1600~1700年の1381ドルから2130ドルに増加したと説明している(『マディソン・プロジェクト』)。1700年、オランダの経済力は英国(1250ドル)、ドイツ・フランス(910ドル)を圧倒した。ダリオ氏は「オランダは世界貿易の3分の1を占め、ギルダーは最初の基軸通貨だった」と述べた。
後に続く英国・米国も同様の原理で繁栄の道に上がった。教育水準が高まり、技術革新が起き、国富が拡大した。アジアでは、日本が近代教育に力を入れ、大国に飛躍した。しかし、この20年間、日本は衰退の道を歩んでいる。日本内部では、その原因の一つが衰退した教育力のためだという診断が出ている。
元東京大学教授の野口悠紀雄氏は低迷の原因としてアベノミクスと技術革新の失敗、教育の衰退などを挙げている。同氏が開発した高等教育力指数で、日本(1.6)は英国(16.4)、米国(11.5)にはるかに及ばない。同氏は「1970年代の英米のように教育力の強い国は低迷に陥ってもすぐに回復する」と述べた(『日本が先進国から脱落する日 “円安という麻薬"が日本を貧しくした!!』)。
問題は、韓国も日本の二の舞を踏んでいるという点だ。この10年間、教育政策が漂流している。代表的なのが基礎学力未達学生の急増と教育・職業の不一致現象の深化だ。慶熙(キョンヒ)大学社会学科のキム・ジュンベク教授は「優秀な人材の供給に支障をきたし、産業と雇用の不均衡を増加させるという点で国家的浪費」と指摘した。
◆失われた教育の10年
韓国は教育を通じて成功した国として知られていた。解放直後、文盲率が78%に及んだが、1949年の教育法制定後、人的投資に力を入れた。1967年に職業訓練法を制定し、産業従事者を育てることに焦点を合わせ、1970~80年代の学校と大学は高度成長の動力だった。
1995年、金泳三(キム・ヨンサム)政府は5・31教育改革で創意・人格を育てる先進国型教育制度の根幹を築いた。金大中(キム・デジュン)、盧武鉉(ノ・ムヒョン)政権は暗記中心の教育から脱皮し、学生の適性を啓発する多様な入試方案を提示した。李明博(イ・ミョンバク)政府は特性化高校・マイスター高校など学校多様化政策で生徒の選択権を高めた。
しかし、朴槿恵(パク・クネ)・文在寅(ムン・ジェイン)政府は教育政策の成果が明確ではない。むしろ2012~2021年の基礎学力未達の中学生の割合が国語1%→6%、数学3.5%→11.6%、英語2.1%→5.9に急増した。国語は6倍、数学は3.3倍、英語は2.8倍に増えた。高校生も同期間、国語2.1%→7.1%、数学4.3%→14.2%、英語2.6%→9.8%と増加した。
ミリム女子高校のチュ・ソクフン校長は「低学年から学力欠損が累積した結果」とし、「政策的に学力を重視しない雰囲気だった」と話した。「中学校の時は席次等級を提供せず、自由学期制などで学業に集中できなかった」ためだ。チュ校長は「2018年修学能力試験(大学入試)の絶対評価白紙化のように『政務的判断』により教育政策を振り回した」と述べた。
学力低下は大学につながった。国民の力の金炳旭(キム・ビョンウク)議員によると、今年、ソウル大学の新入生の26.3%(英語)は学力水準が落ち、基礎英語の授業を受けた。2012年(12.9%)に比べて2倍以上に増えた。金議員は「学力未達の学生が増えたのは国家競争力を下げる深刻な問題」と指摘した。
◆専攻・職業の不一致が深刻化
さらに大きな問題は、学生が学んだ内容を活用することがますます難しくなっているという点だ。「文系で申し訳ない」と感じる学生が増えているからだ。ネットマーブルの金炳規(キム・ビョンギュ)経営企画担当(COO)は「毎年60人ほど新入社員を採用しているが、理系出身が70%」と述べた。サムスン電子・ヒョンデ(現代自動車)などの大企業も2018~2020年の新入社員の80%ほどが理工系だった。
金COOは「IT産業の高度化で理工系の需要は高いが、大学は依然として文系中心」と指摘した。今年上半期の企業500社の採用計画によると、61%が理工系だったが、昨年の4年制大学の卒業生は人文系(43.5%)が理工系(37.7%)より多い。高校ではすでに十数年前から理系選択の割合が高いが、大学は追いついていない。
【コラム】韓国、基礎学力未達の生徒10年間で6倍…専攻・職業不一致はOECD1位(2)
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